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決断させる言葉を渡す

顧客とのやり取りの中で、背中をそっと押すような言葉を投げかけることで気持ちに変化が起き、決断に至る、という話

2月にお見積りしていた案件について間に入る形で対応していたビル管理会社の担当者から色々と質問を受けた。

経年劣化から発生した改修工事の案である為、修理や調整などでなるべく安く済ませたいオーナー側と、現場調査の結果、全面的に新しいものに交換することが最善、と判断した弊社の間でどうしたらうまく立ち回れるかと相談の連絡をいただいたのだ。

この際に、一番まずいのは現場の状況を無視して立場の強いオーナーの言い分のみを考慮して「何とかしてほしい」と注文してくるパターンだ。

発生した事案に対してどうすれば解消するか、ということを提案することで価値が生まれると思うのだが、こちら側の見解を軽視して、それでも安い方法はないか?と問うのは根本的な問題から論点をずらしてしまっている。

こういった際に担当者の心の中を支配しているのは「オーナーに怒られたくない」または「穏便に済ませたい」といったところだろう。

だが、こちらもコストをかけずに処置できるのなら、はじめからその様な提案している。経年劣化による不具合の度合いや問題箇所の腐食の進行などが応急処置ではどうにもならないと判断した為、全面的な改修工事という案を出したに過ぎなかった。

おそらく2月に見積りを提出してから約2ヶ月のタイムラグがあったのは、オーナーの意向で、安く処理できる他の業者を探せと命ぜられたか、他の方法で対応できないものか、と宿題を与えられたか、いずれにせよ金額面で折り合いがついていないことは確かなようであった。

私からすれば、そのような先延ばしグセによる管理不足から問題箇所の悪化を招いたと思っている。管理の行き届いた物件は問題が小さな段階で潰すクセがついている為、その場でのコストは抑えられている。

そうしてムダなコストをかけず、浮いた利益はしっかりとストックされ、いざというときの大掛かりな修繕に回されるので、長期的に不動産収益が入る構造を維持し、建物を長く活用することができるのだ。

現段階で私ができることといえば、今までの経験をもとに、管理会社の担当者へ、どうしたらオーナーを説得できるか、事例や言葉の言い回しなども含めてレクチャーして差し上げることに尽きるのだろう。

まずはオーナーにとって何よりも大事な物件、ひいてはそこに入るテナントからの賃料への影響を、費用対効果も交えて話ができるように、話の道筋を立ててあげるのだ。

ここで注意したいのは、決してこちら側の都合や利益の為ではなく、オーナー側の利益の為に、今できる最善策を提案し、それによって獲得できるメリットと必要なコストの内訳を明示しなければならない。

病気が悪化している段階で、根本的な治療を拒み、小手先の応急処置のみを施した結果、近い将来に起こりうる症状を想像できる人は多いだろう。建物も同じで、発生した問題を間に合わせの処置でやり過ごすのは長期的な視点で得策ではない。

具体的な事例を交えて担当者にレクチャーしたこともあり、「もう少しオーナーと話してみます」とのことで一旦電話を切った。

管理する物件に愛着があるのなら、お渡しした言葉で気持ちを改めてくれると思うのだが、あとはもうしばらく様子を見るとしよう。

問題の解決に必要な言葉がある。何が事案のポイントになるか、本質的な視点で見定めよう


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