発注者の良きブレーンになる
仕事を依頼された際、発注者の足りない知識を補いつつ、そのさらに上を行く提案をすることで価値が生まれる、という話
今年に入り、マンションの管理組合様からのお問い合わせが増えている。
去年はコロナ禍の影響で理事会を自粛していたが、今年に入り理事会の方法を模索しながら本来進めるべき議題、特にマンションの修繕や改修に関する話し合いが進んだ結果だと推測する。
お問い合わせをいただくのは理事会のメンバー、もしくは理事長様自らということになるが、その方々の仕事が建設業ではないかぎり、当然のことながら工事やマンションの構造体に関しては素人という立場になる。よって、工事の方法や手段など不明な点も多く、その分野をいかに専門家として、かつ、お問い合わせしていただいた方の立場にたって提案するという視点が必要になる。
マンションの管理組合の理事は数年単位の役回りというケースが多く、工事の金額が高額であればあるほど責任が重大になるので、ナーバスになるのは察することができる。しかも、後々残る実績になるゆえお問い合わせの内容をそのまま鵜呑みにするのではなく、専門家ならではのリスク回避や他の住民の方に納得していただけるような提案でなくてはならない。
平たく言えば、お問い合わせいただいた方のお手柄はこちらの提案次第ということになるのだ。「あなたがこう言ったからそのようにした」ということで工事後のクレームや不具合を擦り付けるようではトラブルは絶えない。誰がどの立場で、どのような心象で工事を発注しているかを想像しなければならない。
予算の有無や工事の必要性もあるが、そのマンションのことをどれだけ当事者意識をもって考えられるかがポイントになるのだ。
そしてよくある話だが、素人考えでお問い合わせしてきた管理組合に対して、知識がないのをいいことに法外な金額の工事を提案したり、リスクを知りながら工事を進めて問題が起きても知らん顔、という業者が稀にいるのだが、説明をめんどくさがるとか、工事を進める上での打ち合わせを端折って強引に進めるようならば、発注を一旦見送ることを検討した方がいい。
どの職種にでも言えることなのだが、その取引き自体がしっかりと顧客の方向を向いているか否か、顧客のことを考えるような姿勢であるか、本来商売とは顧客の問題解決に寄り添っていなければならない。自社の利益や都合にしか意識が向いていない会社は市場から退場するべきだと思うのだ。
顧客(発注者)が求める商品を提供するだけでなく、伴走しながらブレーンとなり目指すべく問題解決のさらに上の価値提供を施すことが信頼獲得の肝となる。
顧客の背景を考察することで見えてくる真のニーズがある。表面には当たり前のことしか見えない