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AKG K371 退屈な音であるが良い音の基準となるヘッドホン
良い音の定義とはなにか
「良い音」と「好みの音」は別物
良い音とは何かと聞かれてその答えを明確に答えられる人は少ない。スマホが普及した現代、音楽を聞くという行為は我々の日常となった。街に出ればすぐにイヤホンをつけて歩いている人は見かけるだろう。
そうなるとどうせ音楽を聴くであれば「良い音」で聴きたいと考え、少し値段の張るイヤホン、ヘッドホンの購入を検討し、ネットで評判を見る人も多くない。有名なイヤホンのレビューをみると『迫力のある低音がでる』『繊細な高音である』など書かれており、いかにも「良い音」のように感じる。
しかしそれらは本当に「良い音」なのだろうか?これらは「好みの音」なのであって「良い音」ではない。ヘビメタが好きな人であれば当然『迫力のある低音』を良い音と言うし、えクラシックが好きであれば『繊細な高音』を良い音と言うであろう。これらは個人の主観的な良い音なのであって、誰しもが求めてる客観的な良い音ではない。
AmazonやYouTuberのレビューが参考になりそうで、参考にならないのはこれが原因である。そのイヤホン、ヘッドホンを評価するには何か基準がないと話にならない。
良い音の基準をどこに置くか
誰もが良い音と分かる音の基準を決める。最もわかりやすいのがその音源の忠実再現である。すなわちその音楽を作った制作者が良いと思った音を聞けば良いのである。その音楽の制作者が様々な調整をしてコレが最も良い音と考えて音楽を世に出したのだから、それに対してこっちの方が良いと言う人は少ないであろう。
では、制作者が作った音と同じ音を出す事は可能なのだろうか?結論から言えばその制作者と同じ機材で音楽を鳴らせば100%同じ音になる。しかし「この曲はこの様な機材で制作されました」と書かれているはずがない。また、制作者ごとに使っている機材はバラバラである。
しかし、これらの近似値は知る事はできる。音楽制作の場合は一般的にモニタースピーカーやモニターヘッドホンを使う事が多い。これらは無理に低音や高音を強調したりせず、色付けの無い音を鳴らす。ではこのモニタースピーカー等は何を基準に音を作られているのか?それはハーマン・カーブとも言われる周波数応答で、端的に言えば「多くの人がどんな曲を聞いてて良いと感じる音」である。すなわちこのハーマン・カーブに忠実な音が制作者が聴いていた音なのである。そしてこのAKG K371はハーマン・カーブに最も忠実なヘッドホンの一つと言われている。
ハーマンインターナショナルとAKG
このハーマン・カーブはハーマンインターナショナルと言われる企業が研究した、科学的な根拠に基づく音なのである。このハーマンインターナショナルは企業群の一つで、傘下にはJBLやマーク・レビンソンなど誰もが一度は聞いた事のある音響メーカーがある。そしてAKGもハーマンインターナショナルの傘下の企業の一つで、元はオーストリアの老舗音響メーカーである。ハーマン・カーブの生みの親の子会社がK371を「ハーマン・カーブに最も忠実な音」と自称するのだからそれは恐らく本当の事なのであろうし、十分良い音の基準になり得ると考える。
AKG K371はどの様な音なのか?
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まずはAKG K371のスペックを見てみよう
再生周波数帯域 (Hz) 5 - 40000
ドライバーサイズ(mm) 50
定格インピーダンス (Ω) 32
感度 (dB SPL/V @ 1 kHz) 114
では、このK371を聞いた筆者の主観を述べる。先述した通りK371は誰もが聞いても良い音と感じる音で、低音や高音が特別突出している訳ではない。しかし低音から高音まで弱い所も無くノイズもなく、ひたすらに解像感が高く、コンサートホールに居るような吹き抜けの良さ。どんな曲でも合うように確かに良い音が聞こえる。良く言えばバランスの良い音、悪く言えば退屈な音である。決してテンションが上がる音ではない。
ではK371は悪い音なのか?答えはNoである。このヘッドホンを音楽制作目的以外で買う人は恐らく「良い音を求めて」買うヘッドホンであると考える。では、最初の問の「良い音とは何か?」それに明確にコレだと言える人は居ない。K371は決して「好みの音」とは言えないが前述した通り「忠実な音」を流す事はできる。すなわちイコライザーも忠実に流せるのである。つまりこのヘッドホンは退屈だからこそ、調整次第でどの様な音でも出せるのである。ヘビメタを聴きたければ迫力のある低音も、popが聴きたければドンシャリにも、女性ボーカルが際立つ様な中高音域を伸ばすことも、あなたの好みの音に忠実に従ってくれる。
自分の好みの音を探すには
先述したように、「良い音」と「好みの音」は別ものであり、好みの音は100人居れば100通りの回答が返ってくる。この場合まずは基準となる良い音を聞いて、そこから好みの音を探すのが、オーディオ機材選びで失敗しない確実な方法と考える。その様なプロセスを踏まえてK371はあなた好みの音を絶対に見つけてくれるヘッドホンとなる。まずは原音そのままを聴いてほしい。その後から、自分好みのイコライザーを探すのも音楽を楽しむ事の一つであろう。
おまけ:SONY WH-1000XM4との比較
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ここまで、意味のわからない事を述べて来たが結局、「このヘッドホンの音は良いの?」って事が9割のユーザーの疑問だろう。1割のオタクの戯言などどうでもいいのだ。それで一般的なユーザーがたどり着くヘッドホンの最高峰とも言えるSONYのWH-1000XM4との比較をする。SONYは4万円、AKGは1万6千円と価格差は2倍以上だ。
結論から言うと、両者の差は少ない
SONYの方が若干色気を感じられ、解像感ではAKGが優っている。この両者間に大きな差はない。それもそのはずである。AKGはハーマン・カーブに基づく音、つまりは誰もが良いと思う音をベースに作られてるからである。一方SONYのWH-1000XM4も多くのユーザーに売ることを目的として開発されている為、両者の音が近くなるのは当然である。
高級ヘッドホンの価値とは?
WH-1000XM4はK371の2倍の価値はあるのか?もちろんあるからこの価格なのである。SONYにあってAKGに無いものそれは、ノイズキャンセリングやアプリのUI、そしてイコライザーの優秀さである。AKGはBluetoothこそ繋がるものの、アプリもノイズキャンセリングもない。そのためイコライザーは他のアプリなどから接続しなければならない。一方SONYはアプリの機能が豊富で、耳の形への最適化やイコライザー、ノイズキャンセリングなどどれも機能である。またつけ心地も良い。同じ音でもSONYの方が評価が高いのはコレが原因であろう。
長々と述べたまず良い音を見つけて、そこからイコライザーで好みを音を探すという考えはSONYのこの1台ですべて完結する。(しかもEQもANCもヘッドホンに最適化されている。)
「高い機器=良い音がでる機器」ではない
私はこの事に気がついて、ヘッドホン沼から脱出できた。youtube上ではよく良い音を求めて10万円も出すユーザーを散見される。10万円もだしたら、10万円分の期待してしまうが、もしそれが自分好みの音では無い場合のショックは大きいだろう。そこで私は自分は何が聴きたくて、高級オーディオを買うのか考えてほしい。恐らく99.9%のユーザーは先ほど紹介したSONYのヘッドホンで理想の音は見つけられる。
それでも高級オーディオを買うときは、自分の理想の音では無くメーカーのプライドの音、チューナーの求める音を買うつもりで、高級オーディオを買うつもりで買うと考えると面白いのかもしれない。
総括
以上、AKG K371を軸にオーディオについて思う事を長々と書いてしまいました。自分は前半述べたように、モニター用がオーディオのゴールと考えていますが、一部のオーディオマニアの間では「モニター用はリスニングに適さない」と言われており、自分で確かめるべくこのヘッドホンを購入しました。
実際聴いてみると、全くそんな事無く期待どおりでモニターヘッドホンならではの解像度の高さ、汎用性の高さを考えると非常にポテンシャルが高くコレが1万6千円で買えるなら非常にコストパフォーマンスに優れていると思います。
最近の日本で流行しているEDMやボーカロイド、J-POPなどは低音、高音を増すドンシャリ傾向があり、多くの人はそれを良い音とします。この記事はそれらに対してのアンチテーゼ的な内容となってしまいました。筆者もボカロなどはよく聴くのでドンシャリサウンドも好きな音だったりします。ただこのK371でそれらの音楽を聞いた時の解像度の高さ、制作者が伝えたい音やクラシックを聞いた時のまるでコンサート会場に居るような音は今のドンシャリサウンドには出せない虜になる音だと思います。筆者はこの音を全ての音の基準として、現在は主にPCと接続して万能に活躍してくれます。コレを読んで購入の参考になれば嬉しい限りです。
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/265809/?srsltid=AfmBOoqO_J_UEzEgkypuzPzi7yNk9zUBYFcFxX_l11iBlAdBJvjwCKlj