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Snow Drop
「雪が降るかもしれない」と天気予報で聞くとワクワクしてしまう。
雪が降っている景色を見ると嬉しくなってしまう。
ほとんど雪が降らない土地で育った私には、雪は新鮮なもので、かつ、非日常的なものである。社会人になった今では、雪が降ると駅に向かうまでに靴やスーツが濡れてしまう、通勤電車に支障が出る、自宅前の道路の雪かきをしなければならない、など煩わしさがつい先に口をついてしまうこともあるが、それでもやはり雪が降ると気分がいい。雪景色はいつまでも飽きることなく見続けることができる、というのは言い過ぎだろうが、何気ない外の景色も「白い色」が加われば私にとっては特別な景色に変わっていく。だから、冬は好きな季節である。
雪の降る様子を見たり、寒さ厳しい冬が来るといつも思い出す曲が2曲ある。
それは十数年前、大学受験を控えた年末のことだった。その頃、自宅ではなかなか集中できない私は、近くの市立図書館で閉館時間まで学習していた。朝から夕方まで図書館で過ごし、夜は自宅で学習という生活を送っていたのだ。しかし、年末はその図書館の自習室が開放されていないため、やむなく私は近くにある、黄色いMのアルファベットと赤色の背景が眩しいファーストフード店で学習することにした。
年末の夕方ということもありお客の数もまばらで、今思えばお店には申し訳ないと思うが、長い時間学習スペースを確保することができた。
問題集に向き合っている時に、見たことのある顔が数名席に着こうとしていた。その人たちは中学時代の同級生であり、久々の再会でもあったので懐かしさのあまり、お互いの話をすることになった。その同級生たちは地元での就職が決まり、食事に来ていたという。一通り近況報告をし終わった後、こちらに気を使ったのか、同級生たちは次の予定の場所へ移動していった。
そんな同級生たちの背中を見て「羨ましい」「早くこの状況から解放されたい」と弱気になった時、店内に流れてきたのがL'Arc〜en〜Cielの「Snow Drop」と鈴木亜美の「white key」の2曲である。
この2曲はもともと知っていた曲で、特別、歌詞に共感したというわけではなかったが、その時に耳に入ったことで、今でも強烈に印象に残っている。
今思えば、何かに一生懸命取り組んでいたからこそ、普段何気なく聞いている時よりも、特別な思いや環境が加わり印象に残ったのではないか、と振り返ることができる。思い出の大きさというのは、その瞬間、瞬間をどれだけひたすらに過ごすことができたかに比例するものであろう。
無事に大学受験を乗り切り今の自分があるからこそ、懐かしく思い出すこともできる。そう、あのファーストフード店で大学受験に向け学習していた時も、窓の外には、私の好きな雪がひらひらと舞い、雪景色が広がっていた。
と、なれば美談で終わるのだが、私の住んでいた土地はめったに雪が降ることはなく、外は雪景色、という塩梅にはならなかった。
(社会科教諭)