西表島を夢見て#3

【第三話】初めてのジャングル

前回お話した、「幻の湖調査(1980)」をきっかけに、私は西表島での活動を志すことに決めた。そしてこの春、私は念願の西表島へと旅立つことができた。

西表島での活動計画は、以下の通り。

地図西表島

一週間かけて、舟浮➜ウダラ川➜鹿川湾、そして最終地点である南風見田キャンプ場へ進むという、近年レジャー化してしまった駒大探検部にとって、最大の挑戦だった。

しかし、実をいうと、この活動は行っていない。
それは読図もできない、知識も経験もない我々が、急に本格的な探検活動をするのは無理があると判断した為。加えて参加するメンバーが4人から3人、そして2人へと減ってしまい、さすがに心細くなったのもあり、この計画はあきらめることにした。

考えてほしい、100人もいるサークルで、たったの4人しか参加意欲がないとは、探検部としてどうだろうか。

しかし、なんとしても西表島の自然を味わいたかった私は、5泊6日の、西表島でのキャンプ活動に変更した。ジャングル探検をどうしてもやりたかった私は、ネットで調べて我々二人でも行けそうな、「ユツンの滝」を目指すことにした。6日間の西表島の滞在予定もしっかり考え、そしてユツンの滝への行き方も事前にしっかり調べ、装備もそろえて準備は完壁だった。

ユチン川

ユツンの滝は、ユチン川沿いを進んだ先にある。本来は、滝の先にある古見岳まで進む予定だったが、二人とも読図ができないので、直前であきらめた。下にあるのが、ユツンの滝の画像である(参照)。滝が3段に分かれており、落差も30mはあるという。

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ユチン川に入るには、ユチン橋まで行く必要がある。宿泊地である「星の砂キャンプ場」からバスで3~40分、ユチン橋の前にバス停はないので、橋から一番近いバス停で下車し、そこからさらに30分ほど歩いて向かった。

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こちらが、ユチン橋の上から撮ったユチン川である。時刻は、AM9時30分ごろ、見事に満潮だった。

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最初これを見た時は、こんなところをどうやって歩くのか、と頭を抱えた。川への入り口が見つからず、意味不明な場所から強行突破を試みたが断念。あきらめずに探すと、ガードレール付近にあるユチン川への正式な入り口を発見。10時ごろにやっと川のある方へ進むことができた。ここはやはり、西表島でも有名なスポットなのだろうか、安全のため、何人ジャングルに入ったかをカウントする機械が置いてあった。最初は人が歩いた跡の道もあったが、川に近づくにつれ消えていった。

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ジャングル内はとにかく怖い。なにせ、登山用に整備された道など一切ない。そして、今にもハブが出てきそうな雰囲気を醸し出していた。とにかくジャングルを進みたくなかった私は、とりあえず川沿いを進んだ。

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しかし、川沿いには、緑色の苔がついた石がめちゃくちゃあり、とにかく滑る。他大学の探検部の方に教えてもらった、フェルト製の沢足袋を、ちゃんと買っとけばよかったと後悔した。川沿いを進むのに登山靴を履いてきた、アホな我々二人は、靴を濡らしたくないので、上の写真のように足場が水の中にある場合は、ジャンプして乗り越えた。

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ジャングル内はこういったウネウネした枝が多くみられた。ぱっと見、蛇が巻き付いてるように見えるので、びっくりするからやめてほしい。しかし、以外に虫がいないことに驚いた。ジャングルに入る前は、虫がいたらどうしようと、探検部らしからぬ不安でいっぱいだった。ジャングル内はとにかく不気味。まるでディズニーランドのジャングル・クルーズにいる気分だった。

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「人が立ち入らない場所とは、こんなにも神秘的なのか」と、目の前に広がる、何とも不気味な緑色に濁った川や、無造作に生える木々を見て思った。

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過去の先輩たちが探検したジャングルを、ルートは違えど、自分も今足を踏み入れていると思うと、とても興奮した。

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水に浸かった石や岩は苔のせいでとにかく滑る。最初は、これくらいの石ばっかりだったが、進むにつれ、段々ゴツゴツした岩に変わっていった。

私は昔からアスレチックが得意で、こういった道を見るとワクワクする(実際は怖かった)、サイヤ人のような血が流れているので、その鍛えられたフィジカルで、岩の上をぴょんぴょん飛び跳ねて進んだ。

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体力には自信があった私と反して、相方は真逆だった。最初は何とか進めていたが、いままで味わったことのない自然と、帰れるか不安なジャングルの魔力、そして険しい岩の多さに戦意喪失していた。私が何回も岩の登り方をレクチャーしても全く進めない。そんなことお構いなしに、私はドンドン先に進でいたが、とうとう相方の姿すら見えなくなったので、さすがに足を止めた。「生きてるかぁあ??!」と叫ぶ、謎の安否確認を行うと、「生きてます!」という返事があったので、再び、おかまいなしに先を急いだ。

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進み始めて1時間、この連なる岩の大群を、一向に進めそうにない相方は、もうすでに限界が来ていた。このままでは帰る時間までには日が暮れると判断し、残念だったが途中であきらめた。完全に我々の経験不足だった。こんな岩が連なっているとは知らなかったので、一切、こういった道を想定した練習もやらなかった。同時に、この企画のリーダーである私の責任も痛感した。例え自分が行けても、仲間を引っ張れないようでは意味がない、そう心から感じた。現実はそう甘くなく、なめてかかると痛い目にあうと後悔した。

以上で私がしたかったジャングル探検の夢は、1時間ほどで幕を閉じた。帰り道私は悔しさでブツブツ独り言を言いながら、そこら辺の枝をぶん投げたりと、怒りをあらわにしていた。そしてその道中、小さな赤いゴキブリを見た。この日一番の恐怖を覚えた。

次回は、後日滞在する「南風見田キャンプ場」で出会った若いイタリア人女性の話と、西表島活動全体を通した、私の所感を書いて締めくくろうと思う。

文責:吉田 勇也(駒澤大学探検部)


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