連載企画ー夢ゼミ探究の旅ー【第三章】石川潤さん
隠岐國学習センターnoteの連載企画―夢ゼミ探究の旅―。
今回この連載を始めるきっかけとなったのは、現在夢ゼミの責任者を担当している澤正輝さんの「夢ゼミともう一度出会い直したい」という思いから。連載が始まった詳しい経緯や担当者の思いなどはこちらのnoteをぜひお読みください。
第三回のゲストは、石川潤さん。
それでは、学習センターで夢ゼミの責任者をしている澤さんと、夢ゼミ講師である石川さんとの対談をお届けします。
新しい夢ゼミのかたち
澤:「夢ゼミやりませんか?」という話を最初にしたのは、去年の冬くらいですかね。
石川:そうですね。去年の12月ごろに、環境省のプロジェクトについて模索している中で、高校生も入るといいなと思っていたところ、偶然澤さんと出会いました。当初は、日本国内のみならず海外にも開かれた夢ゼミを構想していました。特に日本海の話をしていて、日本と韓国の間の海はDead Seaと呼ばれていて、どんどん生物が死んでいっている。その問題について、日本からだけではなく韓国も協力して、それこそ両国の高校生が繋がれるといいなと思っていました。
澤:最初その話を聞いたときに、これまでの夢ゼミとはちょっと違う、でもそれこそ新しい可能性が開かれる、そんな夢ゼミができるんじゃないかなと感じていました。でも、その時にはまだ具体的な形までは描けなかったので、一旦寝かしたうえで、改めて話をしたという感じですよね。
石川:初めて話した時と2度目に話した時の間に、環境省のプロジェクトとしても大きな転換がありました。もともとは、調査をして現状を明らかにし、海士町や日本海の周りの人たちの問題意識を高めるための資料を作るというものでした。しかし、それをやって本当に変化に繋がるのか?という疑問が僕を含めプロジェクトチームの中に出てきて、調査をしてまとめるところから、未来を描いて具体化するアプローチに大きく変わりました。
調査ではなく、実践をする。学んで、ビジョンを描き、お試しでもいいから仕組みづくりをしてみる。そのことを澤さんにも話したところ、「やったらいいと思う」とおっしゃってくれてそこからこの夢ゼミが動き出しました。
澤:環境省のプロジェクトのビジョンは変わってないんだけど、それに対するアプローチが変わってきていて、それだったら一緒にやれそうだと感じ、じゃあやりましょうという話をさせてもらいましたね。
絵に描いた餅で終わらない、実践の場
澤:改めて、この夢ゼミで何をやっているか、聞かせてもらえますか?
石川:二つあります。一つは、「自分たちの手で未来をつくる」ということを実際にやってみる実践の場。それを大人たちだけで閉じるのではなく、未来を考える時に必要な若い世代の人たちも一緒にやっていく。もう一つは、「持続可能性や自然との共生」を学ぶ場です。学ぶという段階を踏まない限り、自分たちが知っていることの中で、ぐるぐる回っているだけになってしまう。また、学んだとしても、どういう未来を描くかによって、今するべきことは変わってきます。
自分自身は、実践や事業づくり、仕組みづくりを中心に行い、学びやビジョンづくりのパートはじわくらチームが関わってくれて筋の通ったものになりました。
澤:学習と実践の、両方を押さえているのがポイントなんですね。
石川:「未来をつくる」というと、ビジョンづくりだけだと思われがちなんですが、絵に描いた餅ではなく、実際につくって、自分たちだけで味わうのではなく、外部の人も使ってもらうサービスを生み出していく。そこが自分の中ではポイントかもしれません。
20点だって、0点よりは全然いい。
澤:結構、盛りだくさんという感じですよね。学びのパートだけでも、常識とはちょっと違うことを学ぶ機会、それをもとにビジョンを描く、さらに実践をしながらもう一回学びやビジョンに対してリフレクションしていくという、一つ一つがかなり重たいなと感じます。
石川:違う味のフルコースが3回出てくるという感じですかね。なので、全部食べようとしないでほしいです。ちょっとずつ自分の血肉になりそうなものをつまんでいきながら、全体の流れを味わってほしい。テストで100点とるのと違った戦い方というか、完璧にこなさなくていいからとりあえず最後までついて来てほしいと、そう思っています。
澤:その学び方はどこで身に付けたんですか?
石川:会社を自分で経営していた時に、「正解がない中で、踏み出さなかったら0点。踏み出してみた結果20点でも、0点よりは20点もいいじゃん」って考えるようになりました。でも意外とそう思える人って少なくて、それは合格点とれなかったら、受けないほうがいいというような学校教育の影響が大きいと思います。
澤:仕事を通して、学び方を変えていったという感じですね。
石川:昔は学ぶということにそんなに価値をおいていなかったつもりでした。何かをやって試して、それを自分なりにアレンジしてみるということは昔からやっていたんですけど、学びという言葉を当てはめてはいなかった。
澤:代わりにどんな言葉を使っていたんですか?
石川:習行合一です。習う、行動するというのは裏表の関係でそれを両方やってようやく学び、実践することができる。世の中の色んな人が試してくれている手法なり考え方があって、それを学んで試してみたら、この場に100%じゃないけど80%合うものって沢山あります。それを100%合わないから試さないというのはもったいない。今回も、そういったものを土台にしてより高みにいこうとしています。
澤:学校教育で学ぶ学び方とはちょっと違うかもしれない学び方を、高校生はこの夢ゼミを通して体験しているんですね。
様々な場所を繋ぐ、架け橋としての夢ゼミ
澤:実際に夢ゼミをやりながら、戸惑いもあれば、可能性を感じている部分もあると思うんですけど、そのへんはどうですか?
石川:思った以上に、高校生は大人だし、子どもなんだなと思いました。ルーティンが決まっているようで決まっていなかったり、流れに身を任せられる柔軟性もある。そこに大人たちが持っている考え方のベースが組み合わさったら、大人たちが子どもに戻れる媒介者にもなれるし、大人たちの経験を違ったふうに解釈してくれるという意味で高校生がいてよかった。高校生からみても、経験知を吸収する相手がたくさんいるのはすごくいい環境だと思います。
さらには、この夢ゼミが終わってからも、「持続可能な地域づくり」が趣味みたいになって、来年・再来年と受け継がれて、結果的に地域のクラブ活動みたいになって町全体にいい影響をもたらしていったらいいなと思っています。毎年、違うメンバーが追加されていって、今年学んだ高校生が、新しく入った大人の先輩になるみたいなのも面白い。
澤:夢ゼミを通した学びが、実践とつながっているから学びだけに閉じていない。さらに、高校生だけで閉じずに大人の人も一緒にやっているという意味でもそこに橋が架かっている感じがする。学ぶー実践する、大人ー子ども、と後もう一つ橋が架かっている感じがするんだけど、まだ言葉にできない。
石川:もう一ついうなら、高校生の島親さん(※島前高校の島留学生には地域と関わるきっかけとして「島親さん」を一人ひとりにつけています)も参加してほしいと思ってます。そういう意味では地域と学習センターの橋なのかもしれないですね。地域に開かれた学習センターにするためにも、島親さんをきっかけとして、普段は関わらないような人もこのプロジェクトに入ってくれるといいなと思います。
澤:最後に、あらためて夢ゼミはどんな場所であってほしいですか?
石川:リラックスしながらも、無理をする場所であってほしいです。自分はここまでという枠を必死に守るのではなく、その枠を理解しつつも、この場にいると、自分自身がもっと違った自分になれるかもしれないというふうに感じてほしい。そういう場所として活用してほしいです。普段の生活を全部横において、一旦この場所に100%投入する、そんな場所になったら素敵だなと思います。