【夢ゼミ】自分らしいバランスを見つけるコツはあえてバランスを崩すこと?揺らぐように進む「バランスゼミ」の現在地。
隠岐國学習センターでは2021年度もバラエティに富んだ夢ゼミを開講しています。「バランスゼミ」もそのひとつ。質問の専門家であり、メンタルコーチである藤代圭一さんと一緒にこの夏から開講してきました。
「バランス」という、とらえどころのないものを7人の高校生と一緒に探究している本ゼミ。今回はこのゼミのふりかえりとして、いま感じていることや思っていることを二人で語ってみました。
バランスゼミをはじめたきっかけ
澤:バランスゼミの構想を二人で始めたのはいつ頃でしたか?
藤代:だいぶ経ちますよね。しつもんゼミが終わってからだから、この春からだと思います。
澤:ゼミとして開講したのは6月からでした。あらためてこのゼミの出発点というか、どうして「バランス」をトピックにしたのか、聞かせてもらえますか。
藤代:世の中にあるAかBか、例えば「都会か田舎か」や「便利か不便」など二項対立しているものに対して、ぼくたちはどちらかが正解だろうと考えがちだけど、そもそも人によって違うよね。違うんだから、自分のバランスを見つけられるようになっていこう。
澤さんが言ってくれたのが印象に残ってるんですけど、例えば「都会か田舎か」ひとつとっても、そもそも時期によって違うし、いまはこっちだけど10年後はあっちと変わっていくもの。バランスをあえて崩すことが自分の基点に気づくきっかけになるかもしれない。
こういったことをゼミをしながら探究していこうとしたのが、出発点だった気がします。
澤:バランスをあえて崩してみる。大事ですよね。
藤代:ぼくたち二人とも大切にしてるのは自分で決めること。そのためにはあっちに行ってみたり、こっちに行ってみたり。ときにはあえてバランスを崩してみることもむしろ大切だと思ってましたね。
手応えの薄い、試行錯誤の日々
澤:いまも試行錯誤を続けながらではありますが、最初の1回、2回って、あらためて思い返すと、手応えはありましたか?
藤代:手応えゼロでしたね(笑)。
大発見だったんですけど、いままで自分の知ってることばかりでやってきてたんだと気づいてしまったんです。バランスゼミをはじめてみたら知らないことだらけで「どうしよう...」って感じ(苦笑)。
澤:もちろんこれまでもチャレンジしてきたり、やりながら知らないことに出会ったりもしてきたけど、「バランスをトピックにゼミするって何することなの」って感じでしたよね?
藤代:できると思いこんでたんですけどね(笑)。手応えも感じてもらえると思ってたんですけど、「あれ、ちょっと違うぞ?」って感じになりましたね。
澤:それこそ出鼻からバランスを崩されるという(苦笑)。その中でいかにゼミとして成立させていくか。このゼミらしいバランス感覚をいかに見つけていくか。ぼくたちも試されながらでしたよね。
藤代:ぼくたちも日々の暮らしの中でバランス感覚を見つけながらやっているじゃないですか。どれが心地よいか。ちょっとチャレンジングな場所に行ってみよう。そうしながら、自分の重心のようなものが決まっていく。それを意識的に見つけるのって難しいんだな。
ゼミに参加してくれている高校生と共通のシーンを見つけるのも簡単じゃなかった。ぼくたちの例え話がきっかけで「そう言われてみれば私の場合...」と話が展開していかなかった。これも大変でしたね。
とても感情が揺さぶられるシーン。どきどきしたりとか、ほっとしたりとか、胸をなでおろしたりする感じ。共通項をもちづらかったから、どんなワークをしたらいいのかなかなかつかめなかったですね。
変化の兆し
澤:とはいえ変化を感じたりもしたんですか?
藤代:これはゼミ以外の時間がそうさせてくれたと思うんですけど、どこかのタイミングで高校生が物事に対して具体的に話せるようになった感じがしたんですよ。当たり障りのない、自分の言葉が出てない感じがしてたけど、体験談を伴う言葉が出てくるようになってきたんですよね。遠くまでいけそうな気がしてきたんです。
澤:バランスってなんだろう、アンバランスってなんだろう。時間軸や空間軸も伸縮させながら探究していくには、「これもしゃべってもいいんだ」っていう心理的安全性がやはり必要でしたね。
藤代:しつもんゼミのときの成功体験として、頭をつかう時間が長いからこそ、身体をともなったワークをはさむことでゼミの雰囲気がやわらいだんですよね。
澤:そうでした。1回、2回と終えたあと、二人で「このゼミ、ちょっと頭でやりすぎてるよね。バランスって「感」だから、感性を育むことが大切なのに。」って話をしましたね。
藤代:でしたね(笑)!思考をともなう活動だからこそ、身体をつかっていきたいと思うようになりました。
あえてオープンにすることで、ゼミが動き出した
澤:前回(10月22日)、ゲストの方が来てくれた回は良い時間でしたね。
藤代:そうなんですよ。偶然来てくれた方や地域の大人も加わってくれることによって、あえて予定調和ではない、混沌としたものにしてくれる。既定路線ではないからこそ生まれる何かがある。学習センターや海士町の学びの魅力ですよね。
澤:たまたま来島し、ゼミを見学したいとおっしゃってくれた方に参加してもらい、いま悩んでいることなんかも聞かせてもらったりしながら、生きた素材として使わせていただく。まさに一期一会の時間でした。
藤代:感謝しています。とても良い時間をつくっていただきました。先生としてお招きしたのとは違う、たまたま縁があり、同じ時間、同じ場所にいる。お互いに構えてない感じがいいんでしょうね。デザインされてないんですよね。
澤:ふらっと来られた方に話題を提供してもらい、そこからゼミが動き出す。特別ですよね。
藤代:予定していたことが崩れることもあるけれど、縁に委ねたほうがきっといいと信じてますね。これはしつもんゼミでも感じました。最終回もゲストにオープンにし、やっぱりいい時間になりました(笑)。
澤:「交流の島」ならではですよね。
ぎこちなさ、たどたどしさをおもしろがる
澤:ここまで二人で語ってきたわけですが、バランスゼミはどこに向かっていきそうですか?どこに向かっていきたいですか?
藤代:ぼくも現在進行形なんですけど、葛藤するって幸せだなって思います。揺れ動いているってことはどちらも大切にしたいってことじゃないですか。「えいや」と決めてしまうのもいいんですけど、「あ、自分はいまこれに葛藤してるんだ」と気づけるのは幸せですよね。人としての成長を感じます。上に行くというよりは根が下りていく感じ。
澤:ぼくの変化としてはAとBの「あいだ」に意識が向かうようになりましたね。「あいだ」には豊かさが眠っていると感じるようになりました。
まだ言葉にならない感情。なったとしてもたどたどしい、身体としてはそわそわとぎこちない感じ。まだ価値にならない、意味にならないものをお互いにほぐしあいながら大切にしていく。このプロセスの中でバランス感覚が育まれていくんだと思うようになりました。これは発見でしたね。
藤代:自分ももっと知りたいし、高校生にも知る喜びを感じてもらいたいですよね。自分らしいバランスを見つけるために。
澤:今日はありがとうございました!これからも探究を続けていきましょう!
(企画・編集:澤正輝/グラフィックレコーディング:水越日向子)
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