人生について考える、「出会い」がありました。学生プロジェクトインタビューvol.2 佐伯春花
学生人材バンクが提供する「学生プロジェクト」。ここに所属する大学生が、普段どのような活動をしているのか。その活動の中にどんな思い、苦悩が隠されているのか。
ーそういった「学生の挑戦」に光を当てた、インタビュー企画の第二弾です。
第二弾は、pump+it(旧鳥取だっぴ)に所属していた佐伯春花(はるちゃん)さん。
彼女は、ものすごく周りへの配慮ができる子です。ただ周囲を気にするあまり、本当の「自分」を見失うことが多々ありました。
それでも「自分を変えたい」ーこの思いを胸に、殻を破り続けてきました。
そんなはるちゃんが、「自分の人生を考えるのに周りは関係ない」とまで考えれるようになった、活動の裏側についてお聞きしました。
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【今回のインタビュー相手】
▼氏名:佐伯春花(はるちゃん)
▼年齢:21歳
▼大学・学部:鳥取大学地域学部地域政策学科
▼入学年度:平成28年
▼所属プロジェクト:pump+it
【この記事の目次】
1 常に人の目を気にしていた私が、自分をさらけ出せるようになった。
2 自分の人生に、周りは関係ないんだ。自分のやりたいことをやろう。
3 いろんな生き方を知ると、自分にも他者にも寛容になれる。
4 今は一人じゃない。自分のやりたいことが、誰かの為になるんだ。
5 できなくて心折れそうな時ほど、「これを叶えたい!」と強く考えるようにしています。
6 「損得感情ではない、人間関係」を作ることを意識しました。
7 人生について考える「出会い」がありました。
(2018年4月26日 お試しだっぴ トーク中の様子)
常に人の目を気にしていた私が、
自分をさらけ出せるようになった。
ーー学生プロジェクトに入ろうと思ったきっかけについて教えてもらってもいい?
佐伯:大学1年までの私は、常に人の目を気にして、思っていることを素直に言葉にできない人間でした。周りの人に合わせてしまう癖があり、自分のことを褒められたとしても、「人に見せている自分と本当の自分は違うから」と、褒め言葉すら素直に受け止めることができませんでした。純粋に自信がなかったんです。だからこそそんな自分から「変わりたい」と思い、変わるきっかけを探し始めたことがはじまりです。
ーーその中でも、pump+itを選んだ理由について教えてもらってもいい?
佐伯:自分のことをさらけ出せる場だと感じたからです。新歓の場がすごくアットホームで、自分に共感してくれる場に惹かれました。また、司会をしていた先輩のトークスキルに圧倒されて、こんな人になりたい!と思ったこと、そして「社会人と出会う」という刺激の多い環境に身を置くことが一番の変わるきっかけになると思い、入ることを決めました。
ーープロジェクトではどんなことを意識して活動してきたの?
佐伯:「思ったことを言葉にする」「言葉にしたことを実行する」ーこの2つを意識して活動しました。例えば、会議に出たことをそのままにするのではなく、行動に起こすこと。思えば、2年生の時は会議で発言すらできませんでした。自分に自信がないというのもありましたが、思考自体が他者と議論できるまでのレベルに達していなかった。それが3年になってからは、議論できるまでになったんです。
(2018年7月28日 家族だっぴ 集合写真の様子)
ーーすごい前進だね!具体的に行ってきたことはある?
佐伯:具体的には、『家族だっぴ』というイベントを「やりたい!」と初めてメンバーに提案しました。そして何度も議論し、実現することができました。それから、これは個人的なことになってしまいますが、ブログを始めました。実は当初、私はSNSを扱うことが苦手でした。「何か思われたらどうしよう」と常に不安に思っていたので。
でもブログを始めて、誰が見てるか分からないインターネットへも自分の考えを載せられるようになりました。公表することで共感者を発見できますし、全員に賛同されなくても「それはそれでいいや」と割り切れるようになりました。
<家族だっぴ活動報告>
ーー自分の思いを伝えられるのは、すごく素敵!でもその原動力になったのは、何なんだろう?
佐伯:「変わりたい」という思いです。これが一番強いですね。また、さらけ出した自分を好きと言ってくれる人と出会えたことも大きな要因です。中でも、自分と正反対の位置にいると思っていた人に認めてもらえた時は特に嬉しかったです。それはpump+itのメンバーだったんですけど、これがきっかけで、「嫌われる怖さ」がなくなりました。
自分の人生に、周りは関係ないんだ。
自分のやりたいことをやろう。
ーー活動を通して、いろんな社会人と出会ってきたね。そういった出会いを通して、自分自身変わったことは何かある?
佐伯:「人生」に対する意識が変わりましたね。私の周りは続々と公務員を目指していたので、「私も早く就活しないといけない」という焦りがありました。順調に公務員を目指すことができたら良かったのですが、そうではなくて。「それは本当に自分のやりたいことか?」という疑問が生まれました。公務員という仕事も素敵だけど、「私にはもっとやりたいことがあるはず。私にしかできないことがあるはずなんだ」という使命感に迫られた時がありました。このことをきっかけに、「自分の人生を考えるのに周りは関係ない。自分のやりたいことをやろう」と思うようになりました。
ーーしっかり自分と向き合えられているね。そう思えるようになった、きっかけは何だろう?
佐伯:いろんな価値観に出会えたことが大きいです。私が出会った人は、周りに関係なく自分の中の違和感や感性を大事にしている人が多かった。やりたいと思ったらやる。こういう風に、「自分」を生きているのがいいな…と思い、少しずつ意識が変わるようになりました。
(2017年12月17日 だっぴ30×30 集合写真)
いろんな生き方を知ると、
自分にも他者にも寛容になれる。
ーー参加した学生はどういった学生が多かった?
佐伯:来る前は、堅い場所だと思っている学生が多かったようです。「すごいことをしてないと、イベントに参加してはいけない」というふうに思われているのかな。でも参加してみて、「これだけアットホームな場だと分かっていたら、もっと早く参加しとけばよかった」と言ってくれる子が結構いました。
ーーハードルが高く写ってしまっていたんだね。
佐伯:そうですね。あとは、そういう空間に対する考え方もあるのかな、と思います。普段の生活の中で私たち学生は大人と関わる機会がほとんどありません。限られた立場や似たような考えの人としか接しない。最近は個人主義が進んで他人への関心が薄れていることもあり、家族にさえも、自分のことを話さないという人は沢山います。pump+itのイベントで、初めて自分のことを話せた子もいました。
ーーそういった学生は、どういったことが障害になっているんだろう?
佐伯:環境が大きいんじゃないのかなと思います。大学ではいろんな人に出会ってきたけれど、明確な目的を持って大学に入る人のほうが少ないな、という印象です。これは自分も含めてですが、「大学に行くという選択をしたのは、そうではない他の選択肢が頭の中になかったから」という理由が1番大きいんじゃないかな。社会の流れに身を任せていて、気づいたら大学生になっていた。「大学に行く」という、本来は手段であるはずのものが目的化しているな、と思います。だから、「大学に行く」という目的を達成してしまって、大学に行った先の自分の未来に夢や希望を見出せない人が多いんだと思います。そうすると自然と、そういう空間(イベントの場)に出ていこうとする意識もなくなるのではないのかな、と思います。
ーーそういった学生は、出会いを通して何が変わったと思う?
佐伯:今まで見えなかったものが、見えるようになることが大きいと思います。いろんな生き方を知った上での人生と、知らないで生きる人生は違う。世界観が広がることで、自分にも他者にも寛容になれる。一つしか知らないと、固定観念に縛られて他を拒絶してしまうことがあると思います。
ーー器の大きい人は、意識していろんなものに触れて理解しようとしているよね。
佐伯:そうですね。なので「自分で未来を変えていける、やってみよう」と思うようにしています。自分で決めたから、それをやる。この「自分で決断する」ということが、非常に大きいと思います。自分で決断したことなら、誰かのせいや何かのせいにはできないから。
(2017年11月11日 教育だっぴ 集合写真)
今は一人じゃない。
自分のやりたいことが、誰かの為になるんだ。
ーー話は戻って、はるちゃん自身への質問です。以前と比べて、意識するようになったことはある?
佐伯:何事も、「とりあえずやってみよう」と思うようになりました。これを意識するようになってからは、「できないことより、やらないこと」の方が恥ずかしいなと思うようになりました。できないことに対する怖さに怯えて何もしないよりも、どうしたらできるかなって、できるようになるための方法を探す。そのための試行錯誤の際の失敗経験や努力をすることについての惜しさは全くありません。また、他のメンバーへの思いを意識するようにもなりました。学生プロジェクトでは、議論してメンバーと物事を進めることが必須。そこで自分一人で思いを持っていても、伝わらなければ組織としてやっていく意味がない。このことを分かり合えたことが大きいです。
ーー他には何かある?
佐伯:他の部分でいくと、自分とはモチベーションに差がある人とやっていく難しさを感じました。自分と同じ熱量ではないのでぶつかることも多く、イライラしてしまうこともありました。でも、「イライラするのも自分の仕事」という言葉を職員さんに教えてもらって、客観視できるようになりました。優先順位やその時の気持ちというのは人それぞれですし、「どれが良いとか悪いとかではない」と気づいた。だからこそ、人を変えようとするのではなく、その人に動いてもらう為に自分が変わる。その為に、自分が大事にしたい部分はきちんと言う。こういったことを、多様な人と接する中で勉強させてもらいました。
(2018年1月12,13日(金、土)鳥取だっぴ合宿 ワークショップの様子)
ーーこれまでと比べて、できるようになったことはある?
佐伯:すごく簡単なことのように聞こえてしまうかもしれませんが、「思ったことを言えるようになった」のが1番大きいです。私はこれまで、自分の生きてきた背景や考え方は、少数派だと思っていました。だから自信がなくて、言葉にして伝えることができなかった。でも今は、少数派だとしても一人じゃないと分かることができた。それに、自分の発言で元気になってくれたり、ありがとうと言ってくれたりする人がいる。自分のやりたいことが誰かの為になると思えるようになりました。
ーー何かきっかけはあったの?
佐伯:家族だっぴが大きなきっかけです。家族の形について考えるイベントだったんですけど、そこには自分の気持ちが一番にありました。企画についてメンバーに共有した時、初めて人に自分の家族について本音で話せたことがありました。そしたらその思いに共感してくれたメンバーが一緒にイベントをつくってくれ、そこで自分が理想としていた空気感が作られた。その結果、アンケートに「モヤモヤが晴れました」、「こういう活動がもっと広まってほしい」と書いてくれた参加者の方がいました。また、メンバーとも議論を深めたことで、メンバー自身にも「家族に対する考え方が変わった」と言われたことがありました。自分がやりたくてやったことが誰かの力になり、自分じゃない誰かにもプラスの影響を与えることができたのが、すごく嬉しかったです。
(2018年1月23日 城北高校だっぴ 集合写真)
できなくて心折れそうな時ほど、
「これを叶えたい!」と強く考えるようにしています。
ーープロジェクトを行う中で、他に変わったことはある?
佐伯:あります。どんな行動にも、目的を考えるようになりました。例えばプロジェクトを行う中で、「自分がやりたいこと」と「やらなきゃいけないこと」があります。その時に、やらなきゃいけないことばかりに追われてしまうと、「なんでやってるんだろう?」となる。そんな時ほど、「これは○○のために必要なこと。そしてこれをやると決めたのは、自分だよな」と目的を再確認するようにしてます。
ーー目的を見失うと、モチベーションも下がるしね。
佐伯:そうですね。あとは、できなくて心折れそうな時ほど「私はこれを叶えたい!」と強く考えるようにしてます。今では、「どの道も自分で決めたことだから、自分に言い訳をしたくない」と思うようになりました。
ーーそこまで覚悟を持てるようになったのは、今後絶対にはるちゃんの人生に活きてくるよ。でもそれはどんな要因が大きかったの?
佐伯:インタビューした人に教えてもらった本がきっかけですね。「神様とのおしゃべり」という本なんですけど、とにかくこれまでの固定観念を取り払ってくれる本でした。この本を読んでから、自分の「欲」について考えるようになりました。
ーー社会人との出会いがすごく影響してるね。
佐伯:すごく大きいですね。本と出会うまでにいろんな人と出会えたから、これまでだったら響かなかった言葉も、自分に響くようになった。変わることができたなと思います。いろんな人と話す中で、私は社会のことを全然知らない。知らないといけない。ーこう思うようになって、社会のことを自分で勉強したいと思うようになりました。新聞ひとつとっても、「読んだほうがいいから読む」のではなく、「読みたいから読む」。「どんなに小さいことでも、やりたいことをやるのが大事」だと気づけましたね。
(2018年1月12,13日(金、土)鳥取だっぴ合宿 集合写真の様子)
「損得感情ではない、人間関係」
を作ることを意識しました。
ーー活動する中で、「失敗したなー」という経験はあった?
佐伯:失敗もですし残念だったのは、辞めてしまう人が多かったことです。1人辞めてく度に、「何が悪かったんだろう」とかなり落ち込みました。原因の一つとして、「好き嫌いではなく、本当に団体がよくなる為にはどうしたらいいのか?」という議論がメンバー間で不足していた、というのがありました。お互いを理解しきれていませんでしたね。
ーーお互いの理解が深まらなかった原因はなんだったんだろう?
佐伯:「個人がどう変わったのか」というところに目を向けられませんでした。みんなそれぞれ思ってることはあるのに、伝えられない。できれば議論の対立はしたくないし、「友達」という存在が邪魔をして、「プロジェクトメンバー」としての線引きをすることができませんでした。
ーーはるちゃんは、それをどう乗り越えようとしたの?
佐伯:まず、自分を出すことを意識しました。「何を考えてるのか分からない」というのが最も人間関係の溝をつくると思ったので。コミュニケーションをとるのを諦めないようにしました。そしてその上で、人に変化を求めるのではなくて、自分が変わり続けること。全員をちゃんと見て、それぞれの関わりに目を向ける。すごく大変だし時間はかかりますが、メンバーとしてやっていくには、ぶつかっても壊れない関係性を築かなきゃいけない。ーこういう風に「損得感情ではない人間関係」を作ることを意識しました。
(2017年11月11日 教育だっぴ トーク中の様子)
人生について考える
「出会い」がありました。
ーー学生プロジェクトの魅力ってなんだと思う?
佐伯:自分の思いを原動力に活動して、思いを形にできるところですね。一人ではできないことでも、同じような思いを持った人たちが集まればできる。それから、苦手だと思ってたことが案外得意だと気づけたり、得意にするために試行錯誤を重ねたり。企画から運営まで本当にいろんなことを経験できるからこそ、どんなことも「やればできるんだ」と実感できる場所です。
ーーやってきたことが、自分の自信になる。これってすごくいいことだね。
佐伯:大きいですね。こういうコミュニティで会う人は、みんな人生についてよく考え悩んでいます。そういう人とは、そこに行かないと出会えない。この「出会い」が魅力です。みんな悩んでいるけど社会に希望を持っているし、そういう空間にいると、「やりたいことをやっていいんだ」と思える。もちろんプロジェクトの運営の中でいろんなことはあるけど、最後にはそれがプラスになる。ーそう思わせてくれる人が、そこにはいます。一緒にやっているからこそ分かり合えることも沢山ありますね。
ーーここまで素直な思いを話してくれてありがとう。最後に、後輩にメッセージをお願いしてもいい?
佐伯:自分で自分の可能性を閉ざしてしまわないで。やりたいという気持ちがあれば、自分次第でなんでもできるよ。
抗えない部分にしんどくなったら立ち止まってもいいし、やり方を変えることも考えみて。
あとは、どんな相手でも尊敬する気持ちを忘れないでほしいです。苦手な人もいるかもしれないけど、苦手な人からも学べることや気づけることがたくさんあります。苦手な人すらも、自分を磨いてくれる存在だと気づければ、チームとして一緒にやっていくことが楽しくなるよ。
ーー長時間、インタビューに協力してくれて、本当にありがとう!
当初、自分に自信がなかったところから、積極的に人に関わるようになった。そしてそれをきっかけに、他人に自分をさらけ出せるようになった。ーここは、はるちゃんにとっての、大きな成長の一つだと思います。
これからもはるちゃんの長所である、他の人への「思いやり」を大切にして欲しいです。
職員一同、引き続き今後もはるちゃんの挑戦を応援しています!
(2018年1月27日 岡山×鳥取だっぴ交流会 集合写真)
(インタビュアー・文責:原田昂拓)
取材日:2019年1月21日
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