「来てくれてありがとう」の一言が、役に立っていると実感します。学生プロジェクトインタビューvol.4 成行由衣
学生人材バンクが提供する「学生プロジェクト」。ここに所属する大学生が、普段どのような活動をしているのか。その活動の中にどんな思い、苦悩が隠されているのか。
ーそういった「学生の挑戦」に光を当てた、インタビュー企画の第4弾です。
第4弾は、農村16きっぷに所属している成行由衣(なりちゃん)ちゃん。
彼女は地域に関わり続ける中で、地域の現状に目を向けるようになりました。
ー「このままだと、20年・30年もこの集落は続かないんじゃないか?」
地域に対して、このように感じることもあるそうです。
そんななりちゃんが考える、地域に学生が足を運ぶ「意味」とは?
活動の裏に隠された思いに、迫りました!
<農村16きっぷとは>
「農村16きっぷ」は、県内外の集落のイベントや農作業に、大学生を中心としたボランティアを派遣するプロジェクトです。年間述べ500人を超えるボランティアを派遣しています。
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【今回のインタビュー相手】
▼氏名:成行由衣(なりゆきゆい)
▼年齢:20歳
▼大学・学部:鳥取大学農学部生命環境農学科植物菌類生産科学コース
▼入学年度:平成29年
▼所属プロジェクト:農村16きっぷ
【この記事の目次】
1 農業に関わりたくて、プロジェクトに入りました。
2 私が行くと、地域の人に喜んでもらえる。地域への愛着が湧くようになりました。
3 地域に関わるにつれて、地域の将来を考えるようになりました。
4 自分で考える機会が増えた。できることが増えて、楽しくなった。
5 大人と接する機会が、圧倒的に多い。社会人との対応もできるようになりました。
6 アルバイトだと、活動は続いていなかったと思います。
7「来てくれてありがとう」の一言が、役に立っていると実感します。
8 学べるものは全て学ぶ気持ちで、積極的に動いてほしいです。
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(20181028イベント準備@伯耆町福永)
農業に関わりたくて、
プロジェクトに入りました。
ーー学生プロジェクトに入ろうと思った、きっかけについて教えてもらってもいい?
成行:これまでと違うことをやりたくて、農村16きっぷに入りました。私は陸上部に入ったんですけど、陸上とは違うことをやりたいなと思っていました。そんな時に、既に農村16きっぷに入っている友達に会議に連れて行ってもらいました。
その中で農業には興味があったし、がっつり農業に関わるなら農村16きっぷに入った方がいいと思い、入ることにしました。
ーーどういうところが良いなと思った?
成行:私がその時見た会議では、役割が決まっていて、時間を計って進めていました。そういった、スピーディーにやることがかっこいいなと思いました。
ーー具体的にプロジェクトでは、どんなことを行ってきたの?
成行:リーダーを任されていたので、リーダーの役割です。あとは、率先してボランティアに行っていました。
ーーリーダーって、具体的にどういう役割をしてたの?
成行:メンバー全員に目を配っていました。例えば、「この子最近ボランティア行ってないな」と思ったら、会議で人数決める時に「予定空いてない?」と聞くようにしてました。
ーーリーダーとして、どんなことを意識してた?
成行:30(平成30年度入学の学生)全員とボランティアに行って、仲良くなることを意識していました。欲を言うと、夏くらいに行ってしまいたかったんですけど、達成したのは、12月でした。あとはみんながボランティアに行った回数を把握する為に、それぞれが行ったボランティア回数を数えています。
(20181201ワイヤーメッシュ柵設置@日野町門谷)
私が行くと、地域の人に喜んでもらえる。
地域への愛着が湧くようになりました。
ーー集落にボランティアで行く中で、何か地域の変化を感じたことはある?
成行:分かりやすいのは、若い人がきて喜んでくれていますね。言われて嬉しかったのが、福永(鳥取県伯耆町福永集落)で、70歳ちょっとのおじいさんに、「2年生か?それなら、まだ2年生きておらんといかんな」と言ってもらえました。
ーーそれは嬉しいね。反対に、なりちゃんの社会への見方って何か変わった?
成行:私は、地域への愛着が出てきました。一年生の時は、作業が楽しくて付いていくだけだったんですけど、その中でも福永に一番行くようになりました。ボランティアがないときでも行きますし、「最近、福永行ってないな」と思うようになりました。
ーー何が決め手で、愛着がわくようになったんだろう?
成行:地域の人だと思います。福永の人たちは、初めてボランティアにいく学生に対しても、私たちと同じ対応をしてくれます。なので、ボランティアが初めての学生を連れていくのは、福永が楽です。システムを理解しているし、同じ調子で話してくれます。学生が動きやすいように、話してくれるのが大きいですね。
(20180217しいたけ植菌@智頭町芦津)
地域に関わるにつれて、
地域の将来を考えるようになりました。
ーープロジェクトを通して、自分自身変わったと思う部分はある?
成行:立場がリーダーになってからは、ちゃんと全員に目を配るようにしました。あとは、無意識のうちに将来をイメージするようになっています。例えば、集落の現状を突きつけられて、「20年・30年したらこの集落はなくなるんじゃないか」と思います。ほとんどの集落が山の中で、おじいちゃん・おばあちゃんしかいません。福永でも、作業に出てくる一番若い人が50歳だし、何十年もしたら誰も草刈りしないんじゃないかと思います。月に1回学生が行って、どうにかなるもんじゃない。「この先、どうなってしまうんだろう?」「このままでは、この人たちだけでは進まないな」と感じるところはあります。
ーー集落の大変な現状を、現場で見てきたもんね。他には何かある?
成行:大人と関わる機会が多いので、社会人との関わり方がうまくできるようになりました。例えば、「この人にはこういう話しかけ方をしよう」と意識したり、電話やメールもできるようになりました。
ーー社会との接点を持って活動することは、将来に繋がるよね。
成行:普通の大学生だと、大人の人に連絡する機会が少ないので、そこがいいなと思います。元々私は電話するのも苦手で、マニュアルやメモを持って話をしていました。でも最近は、数をこなしたこともあり「何を聞けばいいか」がわかるので、それを聞いています。その甲斐もあって、今となっては集落の人とやりとりできるようになりました。
(20180924草刈り@三朝町湯谷)
自分で考える機会が増えた。
できることが増えて、楽しくなった。
ーープロジェクトを行う中で、主体的に動くことは増えた?
成行:増えていますね。
ーー入る前にできなかった要因は何だと思う?
成行:考える機会が少なかったからだと思います。特に、学生プロジェクトに入らないと、考える機会が少ないです。いつも同じことの繰り返しだし、考えなくても生活できます。それが例えば、農村16きっぷに入ったら隊長の仕事があります。隊長になると、ボランティアの何日か前に連絡したり、レンタカーの予約や他のメンバーへの連絡などがあります。とにかく考えないと、組織が回らないようになっています。
ーー変わるきっかけはなんだった?
成行:リーダーになったことですね。リーダーの場合、しくじったら威厳がなくなるので、責任感があります。立場が変わったのが大きいですね。
ーー変わってからの気持ちはどうだった?
成行:できることが増えて、楽しくなりました。最初は隊長の仕事も「どうしよう?」と思っていたけど、それがなくなったのはいいことだと思います。できるようになったら、気持ちが楽になりました。
(20180623草刈り@日野町別所)
大人と接する機会が、圧倒的に多い。
社会人との関わり方もできるようになりました。
ーー学生プロジェクトの魅力ってなんだと思う?
成行:大人と接する機会が圧倒的に多いところと、学生が行くだけでも地域が元気になってくれるところです。あとは、作業自体が単純に楽しいですし、外で動きたいので没頭できます。せっかく鳥取にいて、地域と関わるチャンスがあるんだから、こういう活動はやった方がいいと思います。
ーー大人と話すことで、いいことはあった?
成行:社会人との関わり方も、ビビらずできるようになりましたね。他の普通の大学生であれば、ビビるんじゃないかと思います。でも場数を踏んで、社会人に自分のことを受け入れてくれるようになると、自信がつきます。あとは、いろんな経験談が聞けて知識が増えるし、違う世界の人と話せることはメリットだと思います。
(20181117ワイヤーメッシュ柵設置@日南町中野)
アルバイトだと、
活動は続いていなかったと思います。
ーー学生プロジェクトの活動を行なって、よかったことはある?
成行:農業をしたかったら、他の実習よりも身につくことですね。それに行ったことのないところへ行けるし、地域の人ともいろんな話ができます。例えば、学生の口から聞けないことや、その地域ならではのことなど。なのでバイトだったら、続いてないと思います。人のために何かをしたいし、休日は身体を動かしたい。美味しいご飯が食べられるのも、大きいですね。
ーー学生プロジェクトで培ってきたもので、これからに活かしたいことはある?
成行:大学卒業するまでには、目上の人との接し方を学びたいです。まだ足りないし、完璧ではないので、そこを学びたいです。
ーーどういうところが足りないと思う?
成行:例えば、メールの対応などです。今は、学生だから許されているところもあると思うので、そこを学びたいです。
ーーどうやったら学べると思う?
成行:ブックオフで敬語の本を買ったので、今はそれを読んでいます。でも、あんまり実践できることが書いていません。なので、まずは新しい集落に行った時に、最初の挨拶をきちんとしてみる。そして連絡をとる時にも、対応をちゃんとしてみようと思います。
(20180924草刈り@三朝町湯谷)
「来てくれてありがとう」の一言が、
役に立っていると実感します。
ーーこれまで経験してきたことを、将来に活かせれたらいいよね。
成行:私は、経験は何にでも繋げられると思います。その点、農村16きっぷは他の大学生よりかは、地域と接することができているのでいいと思います。社会人とも積極的に連絡を取るので、ビビったりおどおどすることが少ないです。このように、農村16きっぷでは、大人との対応を学べる機会がたくさんあるので、そこでもっと学んでほしいと思います。
ーー今後の目標とかはある?
成行:将来は農業に関わる仕事をしたいので、在学中はもっとボランティアに行きたいです。特定の地域や他の地域にも行って、他のご飯も食べたいです(笑)。何より、農村16きっぷの活動では、鳥取県内のいろんなところに行けます。「来てくれてありがとう」と集落の人に言ってもらえるので、役に立てている感じはすごくあります。学生がいないと成り立たないところもあるので、行った方がいいなと思います。
(20180818.19夏の村咲く@用瀬町屋住)
学べるものは全て学ぶ気持ちで、
積極的に動いてほしいです。
ーー最後に、後輩にメッセージをお願いします
成行:学生プロジェクトでは、自分から積極的に動くことが学べます。なので、入ったからには学べるものは全て学ぶ気持ちで、積極的に動いてくれたらいいなと思います。動いた方が得だと思うので、どんどん動いてほしいです。
ーーどういった得があると思う?
成行:自分よりも立場が上の人に可愛がってもらえるのは得だと思います。例えば「ボランティアいくよ、遊びにいくよ」と声かけてもらえます。なので、いろんな経験ができるチャンスは広がります。交友の輪も広がるし、良い人間関係を築けます。何より、生活も楽しくなる。こういった経験があるので、自分から動けなさそうな子に率先して声かけるようにしています。
ーー声かけしてきた子で、何か変化した子はいる?
成行:当初は、あまり話さないし笑わなかった子がいました。でも最近は、声かけたら来るし、表情がちょっと明るくなりましたね。作業してるのも楽しそうなので、ご飯食べる機会を増やして、今後も関わりを増やそうと思っています。
ーーここまで、長時間インタビューに答えてくれてありがとう。
関わった地域へ課題意識を持って、将来にまで考えを巡らしてるのは、すごく良いことだね。何事も自分ごとに捉えるくせ、つまりは当事者意識を持って取り組めている。これは、これから先どんな課題にでも、立ち向かっていける力が養われていると思います。
それに、リーダーになって責任感が増して、視野が少し広くなったんじゃないかな。
これから先どんな環境に行っても、学べるものは貪欲に学び取る姿勢を、続けていってほしいです。
職員一同、なりちゃんの活動を今後も応援しています!!
(20180429タケノコドロボー@八頭町志子部)
(インタビュアー・文責:原田昂拓)
取材日:2019年2月21日
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