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怖かったと言えるのは、怖くない時だけ

本を読みました。平日の雨の日の午前中にゆったりするのが自分には限りなく有意な時間だと感じます。

何度も言いますが本の感想関係の記事はネタバレ注意です・・・。

本棚

憐憫 島本理生

私よりも年齢の高い役者の女性が主人公です。彼女が柏木さんという男性との出会いで、自分の考え方や暗かった過去との向き合い方に一線を引いて自分を緩やかに変えていくような話です。でも主人公がしているのは不倫で、決して世間的に綺麗なものでもないし、倫理的に許されるものでもないと思います。それでもこの人たちの出会いは大きな意味をもたらすものだったような気もするし、複雑。

島本さんの景色が幾分も美しく見えるような表現が好きです。本を読んだあとに特有の安堵がある感じ。お気に入りの文章を紹介します。

・こわいことを思い出すことができて、こわいと言えるのは、こわくないときだけなのに。
・正しいからといって、人は後悔してはいけないわけではないのだから。
・誰も知らない私をわかってくれる人がいる。それだけで私を壊すものなんて全て捨てていいのだと気づいた。
・窓越しに見た夕暮れは、青すぎて吸い込まれるようだった。

夕暮れを青さで表現したのはこの小説の温度感、なんていうか、燃えるような恋愛ではなくだんだんと自己成長の果てに関係の終わりも見えるような寂しさがあったからかなと思いました。それでも最後にバッドなテンションではなくどこかスッキリしていたのも、澄んだ空気感と合っていてなんとなく気持ちのいい感覚になりました。

決して褒められた関係ではないし、そこに関しても肯定する気はないけど、こういう不倫や浮気だけじゃなく道を逸れた先にある逸脱した自分みたいなものを書くのが上手なので見入ってしまいます。

お互いに詳しい素性も明かしていないのに、一番ありのままをさらけ出せる不思議な関係にそこにしかないものを感じました。島本さんの書く恋愛相手、めっちゃ素敵に見える。落ち着いているのにアクティブな側面もある緩急が人間的にもいいな〜って思う。

これを借りるときに恋愛小説をそこまで好まなかった昔を思い出しました。島本さんの作品は恋愛っていいものなんだと自分に言い聞かせるような時に読むことが、振り返ってみると多いような気がします。人生に恋愛が必須だなんて思ったことはないけれど、存在した時に何かのきっかけになりうるパーツなのではないかとも思います。

あと三冊借りてきたので、台風引きこもりニート期間に読み進めていこうと思います。


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