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10.割烹着 キャンド・ヒート
学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。
いつものように「社長いてはりますか?」と店番の女性に聞くと「今、仕入れに行ってはりますわ。もうすぐ帰って来るとは思いますけど。」と言われた。仕入れとは、晩ごはんの買い物のことやなと思った。
この店は女社長がきりもりしている10坪ほどの書店だ。
「ほな、しばらく棚を見さしてもらって、その間に帰って来られないなら帰ります。」としばらく棚を見ていると社長が帰ってきた。「今日は、昨今の外商ってどうなっているのか教えてもらおうと思いまして。」という質問に、昔のように会社で自由に本が買える状況ではなく、必要な本をその都度買うというのがスタイルになっているというようなことを教えてくれた。
以前のように書店お薦めの商品を持って行っても門前払いになることが多いそうである。「あなたが思っている昔の外商イメージは全くないので記憶を消去したほうがいいですよ。」とのこと。
お客さんと親密に付き合うことで商売を成立させているこの書店の社長から学ぶことは多い。夕方の遅い時間に訪ねた時などは夕食の準備の手を止めて、割烹着のまま僕の話を聞いてくれる。版元と書店さんのダラッとした時間と空間は今や探してもなかなか見つからない。
HALLELUJAH/CANNED HEAT(1969)
8月の夕方6時過ぎ。西日と凪いでしまった風を恨みつつ、これから喉元を過ぎていくであろうビールの泡の感触に思いを馳せる時間帯。キャンド・ヒートの音楽はこの時間が相応しい。時間の流れを幸せに変換するのはこのアルバム「ハレルヤ」。
先ほどの女性社長は場の雰囲気を醸し出している。そしてこのアルバムも場の雰囲気を醸し出す貴重な音源である。
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