実際に企画を立ててみよう#3
ノンプログラマーのための爆速ゲーム開発
がくちょうです。
さて、今日も実際に新作ゲームの企画を立ててみましょう。
下記で紹介したBMAの考え方に沿って、企画書を作ります。
https://note.com/gakuchougames/n/n4a5bcb04f3fc
①「BMA」を埋めていく
Bから埋める(UEFNではこれがおすすめ)
まずはBからです。
今回は、私が面白そうと思って選んだ「gacha PVP」というゲームをやってみました。
このゲームをプレイしてみて、自分なりにイマイチだと思う部分を改善して、自分たちのゲームとして出すのが基本ワークフローとなります。
要素を抽出するために、gacha PVPのゲームがどういうものだったかを箇条書きしていきます。
最初に400G持っている
敵を倒すと100Gもらえる
全武器を使用可能だがガチャで入手する仕組み
武器は、武器種ごと、シーズンごと、レア度ごと、の3パターンでガチャが作られていて、値段などが違う
建築あり
空中から闘技場に降りる形で戦闘スタートする
デスするとガチャ待機場に戻る
キルすると体力とシールドが回復する
闘技場は最初は何もない、プレイヤーが建築して建築物が増えていく、一定時間ですべて爆破され平地に戻る、という繰り返し
条件不明だが、変なタイミングでラウンド終了して、全員がガチャ待機場に戻された、だいたいトップのプレイヤーが20キルくらいだった気がする
MODやおみくじなど、武器ガチャ以外の仕掛けもちょっとだけ置いてある
移動手段はほぼ強化できない
アイテムガチャや爆破物ガチャなど、内容がよくわからないけど、武器以外のガチャがいくつかだけ存在している
こんな感じで要素を抽出しました。
ここに対して、自分がプレイして感じたフラストレーションなどを書き出すことで、Bの要素を抽出し、新作ゲーム企画の起点にします。
私が感じたフラストレーションは、
そもそも建築要素が必要ない、正直に言って自分の周りをすぐに壁で囲えるのは強すぎて建築する側に有利すぎるし、最終的に適当に積みながら接近して壁破壊してショットガンで倒すしかなくなるから、シューティングゲーム感を味わえなくて不満
⇒個人的には、建築無しのゼロビルド形式でよい。ただ、平地だと面白くないから、代わりに建築物が下から上がってくるとかで、何かしら既存の建築物があるような状態で戦う感じが良い。
敵が音もなく上から降ってくるのはクソだと思った。基本的に高い位置が有利なわけで、なのに高い位置を取っていると上から敵が音もなく降ってくるから、意味不明だった
⇒個人的には、降ってくる形式は問題なくても、それならせめてパラシュート音が出るようにして、警戒できるようにするべき
同時接続の人数は不明だったが、1回のファイトで許容できる人数を超えすぎていて、どこからどう撃たれるか予想するのが不可能だし、漁夫が多すぎる状態になってしまっていて、ちょっとなぁという感じ
⇒個人的には、顔が見える人数までで良いと思っていて、友達が集まって遊んでいるとしても、最大8名くらいになりそうなイメージだから、同時接続は8名までにして、8名でちょうどよいか、ちょっと広いくらいのサイズのフィールドにしつつ、連戦回避のための移動手段や回復アイテムも自由に選択して保持できるようにしたい。そう考えると、名前付きのフィールド1つ分くらいたちょうどよさそう。
全部のアイテムで遊びたいか、と言われると微妙な気もする。でも、最新シーズンだけだと、シーズンに飽きたときとか嫌気がさしたときに遊びたくなくなっちゃう。
⇒個人的には、最大4シーズンくらいまでで良くて、本シーズンを含めた直近4シーズンの武器を全部そろえて、ガチャできるようにすれば、頑張って好きなシーズンの武器でそろえて戦うというスタンダードな選択もあるし、色物系も混ぜて自分だけの変な編成を作る楽しみもできて、面白そう。
武器ガチャ、せっかくガチャを押し出すなら、もっとガチャっぽくしたい
⇒個人的には、ガチャは適当にガンガン回す感じじゃなくて、引くときに祈る感じが欲しい。貯めて、引いて、目当てのやつがあって、祈る!みたいなガチャっぽさ。それを演出とか、なんだったらミニゲームでもいいかも。
という感じになります。
Mを埋める
これで大きな方向性は決まったので、上記を実装できそうなメカニクスについて大雑把で良いのでまとめておきます。
ジャンルは「リブートPVP」「ローグライクハクスラ(武器ガチャ)」「ゼロビルドゾーンウォーズ」に整理。
リブートありでひたすら戦闘し続けられるという「リブートPVP」要素(バトロワだと戦闘するシーンがなんだかんだ少ないため、もっと撃ち合いたい。でも漁ったり強化したりするのは省きたいからロストもアイテムピックも無しで、本当に純粋な撃ち合いだけ味わい続けられる感じで)
特定のエリアから出られない構造にし、決められた範囲内だけで戦うという意味でベースはゾーンウォーズだが、ゼロビルドのため建築物はラウンドごとに違うものが自動で制作されるという、フィールド変更要素のある新しい「ゼロビルドゾーンウォーズ」スタイル
ある程度の実力が結果に反映されつつも、色物系の武器も含めて選択肢が多いため、編成の変更によるメタも可能だし、フィールドに合わせた武器編成の強さ弱さなどもあり、武器ガチャによって何が手に入るかわからないから好きなタイミングで理想の武器になってもいないという、ランダム性が高い「ハクスラ」スタイル
ゲーム性をパターンBに変更するために、ランダムに発生するモブを倒すとゴールドを稼げる形にする(これにより、マッチングしていなくてもモブを倒すというゲームとして楽しめる余地が発生する)
上記の3つのメカニクスを中心にファンクションを設計していくことに決めます。
Aを埋める
最後に、A要素として、このゲームを体験している時の気持ちについて描写しておきます。
とにかくひたすら撃ち合いができる!漁ったりストーム見たりする立ち回り的な要素が無い分、バトロワで満たされない「撃ち合いたい!シューティングを楽しみたい!」という気持ちが満たされる!
武器は基本的にシーズンで選ぶ感じで、ガチャの上に出現する武器も全部書いてあるから、「あ、このシーズン楽しかったよな~」「このシーズンの武器構成好きだったな」などを思い出しながら、ガチャを選んで引くだけでも楽しい!
お金が無いとガチャは引けないので、ある程度強化したら戦いに行くしかない!敵を倒してお金を貯めて、より理想的な編成にしようというモチベーションが湧く!「欲しいのあるから、とりあえずこの構成で無理やりキル獲るしかないわ!いくで!」
ガチャはちょっと渋い!でもハズレが多い分、当たると嬉しい!狙っている構成にできた時に友達や周りにちょっとドやれる!「はい、俺●●持ってます~」「はぁ~!?さっきからミニポしかでやんのやけど!」
いい感じの武器構成にできたら、MODでさらに好きにカスタムできる!だからバトロワやってる時の「自分なりの一番いい感じの構成」でずっと撃ち合いができて、ストレスフリー!
ガチ目に撃ち合いたい気分の時はガン系を中心の基本構成にする、ハチャメチャやりたい時はアイアンマンやオートタレットで揃える、自分の好きなスタイルにしたい時はスナメインで、今回は友達と合わせて変な構成に揃えて、など記憶に残っている実況者の構成なども思い出しながら、構成の使用感をたっぷり楽しめる感じが良い!「やっぱりこれやろ!」「今はこれが強いんやで!」「俺は●●専門やから」「●●で揃えようぜ」
ゼロビルダーでも、最初から建築物があるから全然楽しめる!建築もできるから、建築勢も一緒に楽しめる!
フィールドがちょうど名前付きのエリア1個分くらいで、過去にあったフィールドとほぼ同じものになっているので、実践の雰囲気を味わいながら楽しめて実力アップにもつながる感じがする!「懐かし!ここよく降りてたわ」「このポジ強いわ~」「普通に上手くなりそう」
ラウンドごとに違うフィールド構造になっているので、飽きずに何度でも楽しめる!しかも構造によって強いブキや動きも変わるので、武器を合わせたり動きを合わせたりで、駆け引きや工夫が生まれて楽しい!
モブを倒すだけで、10匹で1回分のガチャが引けるので、プレイヤーを倒せない雑魚状態でもモブだけ倒してガチャを引くという楽しみ方ができる!弱くてもやりようがあるし、1人でインしてもマッチングまで待てるだけのプレイ幅がある!
②「病みつき行為」について定義する
今回は、病みつき行為を
【ガチャで狙った武器が出た瞬間】
という風に定義します。
この「病みつき行為」が、そもそも体験として感覚的に「気持ちよい」ものでないと、ゲーム体験の全体が気持ち良いものになりません。
つまり、このゲームでは、ガチャで狙った武器が出た瞬間を「気持ちいい~!!」と感覚的に感じるように作らないといけない、という事になります。
③「AHA体験」について定義する
さて、次にAHA体験を定義します。
今回の企画では、
「狙った構成になるまで、頑張ってモブや敵を倒しつつお金を貯めて、ガチャでようやくそろった強めの構成で、敵を予定通りに圧殺した時」
という風に定義しました。
この定義によって、このゲームの本質が「ローグライクハクスラ要素」という部分だと決まりました。
そして、このAHA体験をできるだけプレイの初期に味わえるようにユースケースを設計することで、このゲームの面白さが何なのか、どう楽しむものなのか、についてプレイヤーにも正しく伝えることができるようになります。
④AHA体験までの詳細でリアルな体験描写
次に、上記のAHA体験までのユーザーの動きや体験と、それに伴う心理的な描写をリアルにイメージしながら言語化しておきます。
先にゲームを頭の中で創って妄想で体験しながら、感想を作っていくようなイメージです。
これを行っておくと、最後の企画工程である「ユースケースの作成」にスムーズに繋げることができ、そのまま爆速で制作フェーズに移ることができます。
今回のゲームでは、下記のように描写しました。
マッチメイク。最初は5回だけガチャれる、つまり5スロット分は武器は入手できるようだ。目の前に4つのガチャ自販機。ガチャは全部で4つしかないシンプルな感じで、チャプターとシーズンで整理されている。1つ前のシーズンが好きだったから、そのシーズンでガチャ引いて武器揃えたいかな。とりあえず1回引いてみる。ガチャは結構こった仕様で、引くたびにアニメーションが流れる感じだ。
ガチャの内容は、上に書いてあるから全部わかるけど、何せ数が多いから狙ったものが出るかは運しだいっぽい。スナイパーが欲しかったけどあんまり使ってないアサルトが出た。うーん微妙・・・。
ポーションは最低でも欲しいから、ポーションが出るまで引きたいけどお金がない・・・とりあえず100Gだけ残してあと3回引くか。ミニポかよ!!まぁないよりいいか。あとショットガン欲しいけど・・・うわーサブマシンガンか・・。最後1回!スナ出ろ!それかショックウェーブ!お!羽出た!まぁ移動系だからいいわ!
よーし、アサルトとサブマ、ミニポと羽、4つでとりあえず戦えるから行っちゃおう!戦闘に降りると降下&パラシュートで好きな位置に降りれるっぽい。箱庭になってるけど、なんか建築物があるな・・・ってかこれ、レックレスっぽいな!なるほど、ネームドエリアで戦う感じか。
とりあえず強ポジに降りたいけど、高台取られてる・・・感じか。ちょっとはじっこに降りて、様子見て・・・。中距離メインになってるから、ちょっと広めの場所を歩き回って、いい感じの距離なら撃ち合って、接近されそうなら早めに羽で飛ぶ感じで戦おう。
よし!ちょうどいい感じの距離にいたやつを1キル!100G入った。これで1ガチャ引ける!あれ?なんかモブも出てきたぞ?戦ってるっぽい?モブも倒してみるか!あ、モブを倒すと20Gもらえるのね。でも無限に出るわけじゃないから、奪い合いになる感じか!よし、モブもできるだけ狩ろう。
しばらくして、1000G貯まった!ガチャを引き直す!同じシーズンガチャで5回引くぞ!あ、かぶった・・・。お!デカポ!ついにきた!そしてスナ!やったーあたりだ!これでスナとアサルト編成にして、デカポと羽、あとはショックウェーブ出ないかな・・・出るまで引くか!また倒しに行って1000G貯めよう!
と、ここでラウンド終了か。友達よりも多くキル取ったわ!次に降りたら、エリアも変わっている!また別のエリアで撃ち合いが楽しめる!アイアンマンのやつ多いな~・・・。でも今回はスナがあるからな!好きな構成でしばらく楽しむぞ!ショックウェーブ出たら羽はチェーンソーに変えたいかな・・・
こんな感じで、病みつき行為を中心にした体験が、そのまま繰り返せばAHA体験に接続するようにします。
言い換えれば、「感覚的な気持ちよさを繰り返しているうちに、論理的な気持ちよさに到達してしまった」というユーザー体験を設計する感じになります。
⑤MVPに必要なユースケースの記述
次に、ここまで書いてきた企画書をイメージしながら、新作ゲームの面白さをユーザーが味わっていくために必要なユースケースを列挙していきます。
MVPというのは、「ミニマムバイアブルプロダクト」(Minimum Viable Product, MVP)の略で、プロダクト開発の初期段階で、最低限の機能や価値を備えた製品を指す、ビジネスやスタートアップの界隈で使用されている言葉です。
めっちゃ平たく言えば、「超最低限でいいから、大事な体験だけできるようにしたものを創っちゃって、出しちゃいましょう」みたいな考え方ですね。
そのあとは、実際に使ってみてもらって、感想もらったり、改善していけばいいじゃん、という感じです。
なので、必要最低限のラインがどこか?を見極めながら、ユースケース(プレイヤーが体験する行動設計みたいなもの)を書いていきます。
ロビーで30秒待機
メンバーを待って、集まらなくても開始
空の上にあるシンプルなガチャ広場
4つのシーズンのガチャ
ガチャの上には内容物の表示
MOD
シーケンスで制御したネームドエリアになぞった建築物
モブの出現と報酬20G
プレイヤーを倒すと100G(ガチャ1回分)
15分1ラウンド
ラウンド切り替えでシーケンス切り替え
すごくザクっとですが、ユースケースとして最低限のものをかきだしてみました。
この時点で書いたものは、全て実装する必要はありません。
むしろ、制作フェーズでいかに必要なユースケースを残し、不必要なものはカットできるか?が重要とも言えます。
⑥プレイヤー数の調整
最後に、プレイヤー数を検討します。UEFN独特の考え方ですが、プラットフォーム的に「1人でもマルチでも遊べる」というゲーム性が最も都合が良いからです。
今回は完全にPVPなのでマルチゲームですが、バトルフィールドにモブを設置し、少しだけですがPvE要素を導入することで、数分ですがシングルゲームとして遊べるように調整しました。
さぁ、ここまでで企画フェーズは終了です。
慣れれば、ゲームを遊ぶ⇒企画書を作る、という全体工程を合わせても、2時間くらいで終わるようになるはずです。
逆に、1本の新作ゲームの企画書を作るのに、3時間以上もかけているようでは、「爆速ゲーム開発」とは呼べません。
そして、そういった(結果として無駄な)時間の積み重ねを、クリエイティブだと思ってしまうから、何年もかけて1本しかゲームを作れなくて、出してみたら評価されなかった、、、ということが起こります。
これは、ビジネスでも同じことが起こっていて、そういう馬鹿な事故を防ぐための技術が「リーンスタートアップ」や「顧客創造」というもので、このビジネスの現場で成果を出している開発モデルを、ゲーム開発に応用したのが私が提案している「爆速ゲーム開発」というモデルになります。
是非、上記の考え方や企画書フォーマットを活かして、あなたも爆速ゲーム開発に挑戦してみてください。
実際に制作したゲーム
ちなみに、この企画書から実際に制作したゲームは下記になります。
https://www.fortnite.com/@gakuchou/7385-5200-5873?lang=ja