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現代版プロティアン・キャリア理論の重要性と人事としてできることは

みなさんはプロティアンという言葉を聞いたことはありますでしょうか?

プロテインではありません。
プロティアン。

初めて聞く方も多いかもしれません。
プロティアン・キャリアとは何かというと、現代の時代にマッチしたキャリア形成の考え方で、かつ、現代における最新のキャリア理論だと言われています。

今回はそんなプロティアン・キャリア理論を学ぶため、田中研之輔教授著『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』を読んで私が学んだことと、人事としてできそうだと考えていることをお話ししたいと思います。

最初の概要については本を要約することをメインにしますが、重要性やどう活かしていくかについては私なりの意見を書かせていただきますので是非お付き合いいただけると嬉しいです。


プロティアン・キャリアとは?

まずそもそもプロティアン・キャリアとはなんなのか?

この理論は1976年に組織心理学をベースに研究されていたダグラス・Tホール教授によって提唱された概念です。

元々ギリシャ神話に出てくる変幻自在の神プロテウスがプロティアンの語源になっています。

ギリシャ神話より変幻自在の神 プロテウス

プロテウスは変幻自在の神の名の通り、環境の変化に応じて姿形を自在に変えることができるのですが、その自分自身で自由に姿を変える様子をキャリア形成に当てはめ、社会や環境の変化に応じて柔軟にキャリアを構築していく考え方として、「プロティアン・キャリア」を提唱したことが始まりです。

そして、人生100年時代と呼ばれ、ものすごいスピードで変化をしている現代において重要であると目をつけたのが本著者である田中研之輔教授です。

田中教授はダグラス・Tホール教授の「プロティアン・キャリア」に「LIFE SHIFT(ライフシフト)」の考え方を掛け合わせて提唱したのが現代版プロティアン・キャリアになります。

これはホール教授が提唱した概念からキャリア戦略の立て方など、より実践的かつ効果的に構築された考え方になります。

従来のキャリア形成との違い

これまでのキャリアは「昇進・昇格」であったり「一つの会社の中だけで築くもの」という限られた考え方をされるのが一般的でした。

私自身も初めて転職をした時には友人や親戚から本当に大丈夫なのかと心配をされたり、「あーぁ終わったな」と馬鹿にされた経験もありました。

それだけ「一つの組織で昇進をする」、「一社で勤め上げる」という考え方が深く浸透していたのだと思います。

プロティアン・キャリアではその考えを大きく覆すものでした。

「プロティアン・キャリアは、組織の中よりもむしろ個人によって形成されるものであり、時代と共に個人の必要なものに見合うように変更されるものである」

――ダグラス・ホール著1976『プロティアン・キャリア』 

もう少しわかりやすくプロティアン・キャリアの特徴をまとめると3つの要素が挙げられます。

  • キャリアは組織に預けるものではなく、自分で育て、形成する  

  • キャリアは昇進などの結果ではなく、生涯と通じた全過程である  

  • キャリアは変化に応じて、自分で変えることができる

従来のキャリアとの比較は以下の通りです。


プロティアン・キャリア協会HPより

こちらをみていただくとわかると思いますが、大きな軸として従来のキャリアとの違いとして、キャリアの主導権が組織と自分のどちらにあるのかが重要になります。

組織の中で不本意な異動や昇進などに合わせるか、自分で何がやりたいかを軸に自分でキャリアを作り上げていくか。

倒産などの予想外な出来事に対しても変幻自在に対応しやすいのはどちらかというとやはり後者だと思います。

そして、もう一つ異なる点としてはキャリアが『結果』ではないという考え方です。

キャリアとは、個人が何らかの継続経験を通じて、能力を蓄積していく「過程」を意味します。そして、これまでの経験の「歴史」でありながら、これからの「未来」でもあるのです。

キャリアとは、これまで生きてきた足跡(結果)であり、生き方を客観的・相対的に分析すること(現在)でもあり、そして、これからの生き方を構想する羅針盤(未来)という考え方がプロティアン・キャリアです。 

なぜ必要なのか?

では、なぜこの考え方が重要になるのか。

私は世の中の変化の速さが影響していると考えています。

これまで、『この会社に入れば一生安泰』、『大企業絶対信仰』といった考えがありましたが、それも昨今では崩壊しかけていると思います。

大企業でも大幅な業績悪化のニュースや、それに伴う大規模早期退職など、暗いニュースが続いています。

某大手自動車メーカーが年功序列が困難であることを公に発表されていることは記憶に新しいです。

こういった終身雇用・年功序列の崩壊から一つの企業で勤め続けることが事実として難しくなっています。

今まで当たり前だと思っていたことが大きく変わる時代にきているのです。

これまではその企業で昇進をするといった一つのキャリアパスを目指し、会社にいることである程度は年功序列で自然と上がっていく。

昇進・昇格・異動と、ある程度シンプルな考え方で良かった世の中から変わり、今は転職や副業・兼業など、キャリアパスの構築がさらに複雑になっていきます。

また、本書の中ではミドル層に見られるキャリアの憂鬱としてキャリアプラトーという概念が語られています。

これは、組織で働く人があるときに直面する「停滞状態」のことで、その組織の中で、それ以上のキャリアアップが見込まれなずに頭打ちになった時、停滞を感じて働くモチベーションが低くなる状態を指します。

これは特にキャリアが企業内の昇格や昇進だけが軸になっている場合に見受けられやすいと言われています。

その憂鬱から抜け出すためにもプロティアン・キャリアの考え方が重要だと言います。

自分のキャリアを会社に委ねるのではなく、自分自身でオーナーシップ(所有権)を持って変幻自在にキャリアを築いていくプロティアン・キャリアの考え方が大事だと私は感じます。

大学を卒業して、最初に入社した会社から、違う会社に転職したというように、最近では、一つの企業の中での昇進や昇給によって上昇する直線的なキャリアに当てはまらない経路をたどる人が増えています。

人事としてできることはなにか


ここまででプロティアン・キャリアの重要性をお話ししてきましたが、その上で人事である私にこの考えを生かして何ができるのかを考えてみました。

まず、考え方自体を広げるためにはキャリアセッションなどワークショップを開催することはできそうだと思いました。

本書籍にはこの考え方の理解やキャリア自律を促すためのフレームワークがいくつも載っていますので、それを基に自分のキャリアについて考える時間を持つことはできそうです。

また、最近ではどの企業でも増えてきたキャリア採用者との交流を基にキャリア形成に関することの意識のアップデートを図ってもらうこともできるかもしれません。

転職がいいよ!というよりも自分でキャリアを作る感覚や意をもしかしたらキャリア採用者と交流することで醸成するきっかけになるかもしれません。

また、他社から自分の会社をみることは転職経験のない方には難しい話ですので、そういった話をすることで副産物的に自社の良い点が見えてくるかもしれないです。
これもまさに越境ですね。

ただ、そのためにはキャリア採用者の定着とインクルードは必要不可欠です。まずはキャリア採用者にもこの会社に入って良かった、ここでキャリアを築いていこう!と思ってもらえるような環境は必要ですね。

最後はやはり、まずは自分のキャリアから意識を変えていくことで姿勢で示すこともできそうです。

まずは自分自身でキャリアの目標を定め、戦略的、自律的にキャリアを構築していく姿を見せる。そして発信する。

これが一番手っ取り早くて効果もありそうだと思いました。

以上になります。
もこのお話を読んでいただき興味のある方は本書も一度手に取って読んでみてください!

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