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隣人ガチャで大ハズレを引いた話2

活発な交流は良きコミュニティを形成する


はじめに

 私と父はコロナ禍まっただ中でリモートワークが続くため、戸建ての新築を購入しようと一大決心をした。長きに及ぶ購入手続きを経て念願の家を手に入れ、仕事をしやすい環境を整えたものの、周りでは「活発なコミュニケーション」が行われていた。彼らはコロナの脅威などどこ吹く風で、世間で失われつつある模範的な近所付き合いを重ね、密接な人間関係を形成する。新興住宅地ならではの微笑ましい光景に我が家は頭を痛めることになる。

頻発する路上駐車

 角地に購入した新築の住宅のそばでは、月一ペースでバーベキューが開催されている一方で、別の問題も発生していた。ある朝、外の様子を見ると自宅前の路上に大きな車が止められていた。それはファミリー向けのかなり大きな車両で、道路の半分を塞ぐように佇んでいたため、他の車両は通りかかるときに速度を落として慎重に進んでいた。私たちは公道に大型車両を停めるという常識の無さに呆れ、どこの誰がこんなことをしたのか確認をした。
 路上駐車の犯人はすぐにわかった。我が家の裏手に住んでいる一家が新築祝いに友人を呼んでいるようで、それらが乗り付けた車を自宅の周辺の道路に停めさせるという暴挙に出ていたのである。彼らの判断には私たちの住む家の横にも停めて良いというものも含まれており、迷惑極まりないものだった。道路を見ていると当該家屋から楽し気に談笑する声と、小さなお子様の「キーーーーー!!!」という喚き声が響き渡り、まだこういうのがいるのかと頭を抱えた。

警察と迷惑な一家の訪れ

 いつまでも移動させられることのない路上の車の処遇を判断しかねているとインターホンが鳴った。応対すると近所の駐在所からやってきた警官だった。近隣住民から路上に不審車両が停められていると通報があったらしく、近くの家に確認を取っているとのことだった。わざわざ警官を呼んだ人がいることに驚いたのと、我々が不審車両に関与していると思われたことを不快に感じながら、警官に促されて車を移動させる路駐の犯人を見送った。
 翌日、また客人が我が家を訪れる。応対をすると裏手に住む迷惑な一家だった。相手は私たちが路上駐車のことを警察に通報をしたと思い込んでいるらしく、その件もあって謝罪しに来たようだった。つまり、警察沙汰にならなければ公道に車両を停めることを悪いとも思っていなかったようで、その無神経さと図太さに大いに呆れた。関わってはいけない一家が、また一世帯増えたところだった。 

週末の路上遊び

 新築を手に入れたものの、周囲に厄介者が何人もいることが発覚し、ハズレを引いてしまったと感じていた。引っ越しを終えて初めての週末にのんびりしていると、近隣住民の子どもが旗竿地に集まって大騒ぎをしている声が聞こえた。凄まじい金切声やボール遊びをして騒ぐ声が響き、とても賑やかで理想的な住宅地である。騒がしさに耐えかねて外に出ると、別の近隣住民から子供に奇声をあげさせないよう窘められている親の姿を見かけた。
 個人的にはボール遊びにしろ、自転車を乗り回すにしろ、近くにサッカーコートくらいの広さのグラウンドのある公園があるので、そちらでやってほしいとは感じていた。親は自分たちの目が届きやすいため自宅前の路上で遊ばせているのだろうが、いくら何でも騒がせすぎである。子どもらは何かにつけて人間とは思えない声をあげるため、ボスの座を争っている最中のサル山に迷い込んだかのような錯覚をしてしまうほどだった。

バーベキューパーティー再び

 サル山のような賑やかな休みの翌日、私は表に出ると非常に嫌な予感のするものが目に入った。例の旗竿地に住む家の前で父親がバーベキューグリルのセッティングをしていたのである。昨日の大騒ぎに加えて、今日もまた騒がしくなるのかとうんざりしながら家に戻り、換気で開けていた窓を閉めた。昼前になると自宅前の丁字路に次々と自転車が停められ、徐々に賑やかな声が聞こえてくるようになった。サル山の再来である。
 昼過ぎになると親たちに連れられてきた子どもらが道路で野球を始め、私たちの家の前でバッティングをしていた。左にはバーベキューで騒ぐ声、右には子どもたちの野球で騒ぐ声、騒ぎのサラウンドである。私は耐えかねて近隣の散歩をすることにした。しばらくして戻ると丁字路に停められていたたくさんの電動アシスト付き自転車と、子どもたちは無くなっていた。何事か確認すると、母が騒ぎに耐えかねて子どもらを𠮟りつけたらしい。すると、路駐されていた自転車も同時にいなくなったとのことだ。

無神経の極み

 私は今回のことで周りが何かを言ってこない限りは大丈夫だろうと意識する無神経な大人が多いことを実感した。周りは自身が想像している以上にバーベキューパーティーをしている方々を疎ましく思っているし、迷惑に感じていることを理解して欲しいと思った。しかし、当人からすると楽しくやっているのを妨げる厄介者として我々を認識しているようだった。事実、母の件以降はバーベキューの開催者とすれ違っても挨拶をされなくなったのだ。
 それ以降は件の家庭でのバーベキューの規模は小さくなり、大騒ぎをする頻度も減ってきたが、子どもたちは我が家の前で道路遊びをすることを止めなかった。その都度、母は自分たちの家の前で遊ぶよう子どもらを追い返した。その甲斐あってか、ようやく我が家にも静寂が訪れるようになる。一つの問題が片付いたため一安心していたが、まだ問題は残っていた。次は裏手の家庭で奇声をあげるお子様である。

「子どもだから」

 その日は夏真っ盛りでとても暑い日だった。裏手の家庭ではプールを準備し、子どもたちに遊ばせていた。字面だけ見るととても微笑ましい光景なのだが、実際はそれとは程遠い。子どもたちは水遊びをしながら非常に大きな金切声を上げており、窓を閉めていても声が丸聞こえの状態であった。私はノイズキャンセリング機能の搭載されたヘッドセットを使用して音楽を聴いていたため、あまり気にはならなかった。しかし、母は違ったようだ。
 騒音に耐えかねた母は、「子どもを少し静かにさせてくれませんか?」と裏手の親にお願いをしに行った。それで帰ってきたのは「子供だから仕方ない」という返事だったらしい。母はその答えに呆れ果て、親が躾をする気が無いことにうんざりしていた。それからも子どもたちの金切り声は続いていた。彼の親は自身の子がキ〇〇イのような声をあげることに違和感を覚えることは無かったようだ。

道路族マップへの掲載

 あくる日、興味本位で道路族マップで自宅の周辺を確認すると、新規の投稿があることに気が付いた。我が家のある角地の目の前の丁字路に以下のように記載されていたのである。

この区域全体。狭い道路で大声でボードなどを乗り回りボールで遊び、道路に寝そべったり、道具を真ん中に放置していたり、とても危険で騒がしい。

親も近所迷惑になっている事を気にしていない様子で談笑している。

時々夜でも大声で叫んでいることあり。

道路族マップに投稿された書き込み

 どうやら、一連の団欒を騒音として認識している住民は他にもいるらしい。繰り返される騒音に耐えかねて道路族マップに書き込みをしたと想定される。これは、件のバーベキュー一家に直接的に言わないだけで、彼らを疎ましく思っている人が複数いることの証明であった。彼らのおかげで我が家は曰く付きの物件になった。

おわりに

 それからというものの、我が家の周辺では意識的に相互の関わり合いを避け始めた。我々も周辺の住民とは関わらず、今まで以上に静かに過ごしている。どの家庭も問題を起こすグループと関わりたくないし、それらと同じ人種と認識されることを防ぐために、目立たないように振舞っているのかもしれない。当の迷惑な一家は未だ懲りずにバーベキューを開催し、奇声を上げる猿たちの姿も見ることができる。道路族マップには我が家の周辺に3か所も書き込みが増え、すっかり問題のあるエリアになってしまった。とんだとばっちりである。他にも犬の糞を放置するバ飼い主や、懲りずに路上駐車をする愚か者が発生するが、地道に片づけていくしかないと諦観気味である。この土地に住み始めてまだほんの数年、これからも問題に対応しなければならない。

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