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台本「千切れてちょうだい⑦」

泉田「神田社長と密接な関係になったのも、正直当初はそんな営業活動の一環でした。私の手帳には、社長と初デートの日は「初デート」とは記載されてはおりません「初枕」と書かれてありました」
隆「……どうしてしまったんだ泉田君!」
泉田「美千代でお願いします。でも、神田社長とお会いして真実の愛に目覚めたんです。社長の包容力と優しさに両のまなこの曇りは晴れました。そして思ったのです。あぁ不要な営業活動は止めよう、枕は止めよう、この人と共に愛に生きよう、と。……そう思っていたのになんですかさっきのアレは」
隆「いや、それは、あの、」
泉田「奥様がそう思ってらっしゃるだけなんですよね? 社長は、思ってないですよね?」
隆「んー、まぁー、そう、ね」
泉田「嬉しい」

隆にピッタリとくっつく泉田

泉田「私は社長とこれからもご一緒したいと思っています」
隆「あー、え、これからも?」
泉田「はい」
隆「んー、そうか。うん、」

芳江が去った方のドアがゆーくり開き、芳江の顔がすーっとスライドして出てくる。
それに気づき、目が合う隆と芳江。
泉田だけが芳江の視線に気付いていない。

隆「……」
芳江「……(口パクで「やってんな。お前、やってんな」と言っている)」
隆「………泉田君、」
泉田「美千代でお願いします」
隆「……そろそろ……蓮見社長を、」
泉田「ハイ、お連れします」

泉田、退出。
泉田が完全にいなくなると、すーっと芳江が登場。

芳江「美千代って呼んであげなさいよ」
隆「違うんだ、話を聞いてくれ! 一方的に、彼女が一方的に!」
芳江「どすけべメイドも最悪だけどあんたも最悪ね! ゲスな男だわ!」
隆「チャンスを、話し合うチャンスを、」
芳江「(ピョコンと頭を下げ)お疲れした!!!」

間。

隆「え?」

芳江、猛ダッシュで窓に走りそのまま空中にダイブ! 
再び高層階から飛び降り、あっと言う間にいなくなる。

隆「え―――――――――――――――――――!!!!!!!!?
芳江―――――――――――――――――――!!」

窓に駆け寄る隆。
しかしやはり恐怖で下を覗き見る事が出来ない。
間。

隆「……せっかく……せっかく助かった命が、セカンドチャンスが……そんな、なんの躊躇もせずに、飛び降りるなんて……嘘だ……」

しばらくしてドアが開き、現れる泉田と蓮見。

泉田「社長、」
隆「……」
泉田「社長、」
隆「……(振り向く)」
泉田「蓮見社長をお連れしました」
隆「……(頷く)」
蓮見「先程のサプライズには本当に度肝を抜かされました。奥様がまさか窓の外から現れるなんて。……ん? 奥様は?」

間。

蓮見「神田社長?」
隆「……トイレです……」
蓮見「あぁそうですか冷えたのかな(笑う)。しかし実際腰が抜けましたよ私は。今まで色々なサプライズを見てきたけれど、神田社長、あなたのは別格だ!」
隆「(なんとか苦笑)」
蓮見「是非とも奥様にもお礼を言いたいですね。それでね私、あっちのね、部屋で考えましてね。先程は1050人と言いましたが、1500人まで何とかしましょう!」

続。

老若男女問わず笑顔で楽しむ事が出来る惨劇をモットーに、短編小説を書いています。