【取材レポ】吹田市立教育センター様「多様性が感じられる」教育支援教室について
株式会社ガイアエデュケーション大阪支店の竹下です。
今回は、2024年4月に新しい教育支援施設を開設された吹田市立教育センター様に、その後について取材させていただいたインタビューをお届けします!
吹田市立教育センター様は、2024年4月に、不登校児童・生徒支援事業として「多様性が感じられる空間」をビジョンとした教育支援教室を開設。異なるテーマをもったそれぞれの教室には多種多様な色の製品が導入されています。新しい学びの空間での支援をスタートしてから9カ月が経過しての、子どもたちの様子や変化、効果などたっぷりお話をお伺いしました。
(かなりボリューミーです!最後まで読んでくださいね!)
教育支援教室スタッフお2人へのインタビュー
まずは「居心地がいい」場所に安心して通ってもらえるように。
竹下:今日、私は初めて実際の教室を見せていただいたのですが、どんな運用をされているのかがとっても気になります。
スタッフ:まずは環境を知ってもらうために、見学・体験に来てもらいます。実際にイスや机を使ってもらって、「居心地がいい」と感じる場所を見つけてもらうようにしています。最初は不安そうな顔をしていた子どもたちも、学校とは違うオープンであたたかみのあるスペースに安心した様子をみせてくれますね。
本並:まずは教育支援教室に来てもらうことを第一にされているんですね。
スタッフ:そうですね。「何か勉強をさせられるんじゃないか」という身構えて来る子も多くて。学習も大事ですが、まずは子どもの気持ちに寄り添って、不安な気持ちを取り除いて安心して通ってもらえることを大切にしています。
竹下:子どもによっていろんなニーズがあると思いますが、どのように限られたスタッフで対応されているのでしょうか?
スタッフ:はじめは個別対応をしています。そのあとは、その子の様子を見ながら小集団で活動したり、4~5人の集団で遊んだりと段階的に支援していくようにしています。スタッフだけでなく、相談員や心理士、フレンドさん(ボランティアスタッフ)などいろんな目で子どもたちを見てサポートしています。
教育支援教室スタッフやボランティアとの関わりで「やりたいこと」を見つけて新たな一歩を踏み出す子どもも。
本並:いろんな方でサポートしているのは、教育支援教室のビジョンでもある「多様性が感じられる空間」づくりの一環なのでしょうか。
スタッフ:フレンドさん(ボランティアスタッフ)の力は大きいです。年を重ねた方や子どもたちと年が近い学生さんなど、子どもたちはここにいていろんな人と関わることができます。
スタッフ:中には、フレンドさんの影響を受けて大学に入りたいと感じたり、ずっと先の楽しみを見つけて、そのために何をしたらいいのかを考えたりして、進学しようと学校に足を向けるようになる子もいます。異年齢集団でもあるので、モデルになるような卒業生の姿をみて希望を持つようです。
竹下:不登校の子どもたちが自分で「こうしたい」と考えて行動するようになるということですよね。すごいです!
スタッフ:学校に子どもを戻す、という不登校支援は少し昔の取り組みです。今は全体的に方向性が変わってきていて、社会に出たときにいきる力を養っていくことを目指す。それを応援するのが我々の役割だと思っています。
教育センター主幹お2人へのインタビュー
利用者増加。保護者間の口コミでも広がっています。
竹下:率直に、利用者数に変化はありましたか?
栗林さん:昨年までは2つの施設(「学びの森」「光の森」)で運営していて、その頃の在籍はだいたい80名ほど。こちらでの運営になってからは、在籍は170名を超える状況となりました。
本並:新しくなった今年の4月からまだ9カ月ほどですよね?
栗林さん:広報もしているし、学校の先生から案内してもらうこともありますが、保護者間で「ここではこんなことをやっている、新しいきれいな場所がある」と情報共有をされて問い合わせいただくこともあります。「ここに来たら子どもが一歩踏み出せるんじゃないか」という期待感をもってくださっています。
冨士谷さん:見学会に保護者の方と一緒に参加してもらい、活動内容を紹介して希望者が体験へ申し込む流れなのですが、見学にきた140名のうち120名が体験に来てくれています。
新たな一歩を踏み出せるのは、戻ってこられる安心できる場所があるから。
本並:ここには、各学校に在籍する子どもたちが集まってきていると思うのですが、学校との連携はどのようにしているんでしょうか。
栗林さん:学校の先生にも見学に来てもらい、どういう活動をしているのかを知ってもらいます。学校が主体となって不登校支援を進めている中で、その子どもに応じた支援の一つとして教育支援教室につないでいただき、学校と教育支援教室とが連携しながら子どもを支えていきます。子どもが通うようになれば、先生にも教育支援教室に足を運んでいただき、情報共有もしています。
竹下:これだけ居心地のよい環境を経験すると、ずっとここで過ごしたくなってしまいそうです。
冨士谷さん:中には行事や進級、進学をきっかけに学校に戻っていく子どももいます。子どもたちはそれぞれ、その子なりにここでステップアップしています。
栗林さん:もし学校に戻ってもうまくいかなければ、いつでもここに戻ってこられる。そんな場所があることへの安心感も大きいと思います。
教育センター 木谷所長へのインタビュー
子どもたちに合わせた柔軟なレイアウト変更
竹下:先ほど教室を見学させていただいたときに、当初とレイアウトを変えたと伺いました。きっかけは何かあったのでしょうか?
木谷所長:日頃から子どもたちとかかわっているスタッフより提案してもらいました。当初の予想よりもここに通う子どもたちの人数が増えたこともあり、動線や子どもたちの声などの観点から11月くらいから案を出して。先週(12月第2週)にスタッフみんなで配置変更をしました。
本並:かなり変わっていてびっくりしました。1年以内にまたレイアウトを変える可能性もあるということですよね。
木谷所長:はい、レイアウト変更が簡単にできる机や椅子を入れていただきましたので。子どもたちが、好きな場所で好きな机や椅子を選んで使っています。
空間はもちろん、社会的自立をゴールとしたことも良かったと思います。
本並:たくさんお話を伺ってきた中で、「多様性が感じられる空間」というビジョンは達成できたといえるのではないかと感じたのですが、いかがでしょうか。
木谷所長:そうですね。ただ、多様性そのものの幅も広がっているので、子どもたちが求めるものもますます多様化していきます。今はスタッフで色々な方法で最善を尽くす努力をしている状況です。
本並:これから、不登校対策に取り組む自治体や学校に対して何か一言メッセージをいただけますでしょうか。
木谷所長:これまで市では20年以上、不登校対策に取り組んできました。長年のスタッフや臨床心理士の方など、多くの方の知識や経験が結集され、今のこの形ができたと思っています。以前は、学校に戻すことをゴールにしていた時期がありました。学校は行かなければならないところではなく、学校で学んでも教育支援教室で学んでもいい、自分で選んでいいというスタンスが大事だと思います。社会的自立をゴールとしたことも良かったと思います。ここで学ぶ子が自分らしさを出して人と関わったり、好きなことに打ち込む体験をしたりする中で、自分らしく生きていく力を身につけてほしい。それが可能になる施設にしていきたいと思っています。
竹下:根本的な不登校対策の考えを変えられ、共通認識でスタッフ皆さんが携わっているんですね。子ども一人ひとりの長い人生の先を見据えた社会的自立を大切にされていることが伝わりました。
本並:空間も大事だけれど、空間だけでは足りない。在籍校で支援がどんなに手厚くても、「多様性」を大切にしていることが伝わらないし、そもそも「行きたい」と思えるきっかけがない。運営方法と空間がベストマッチしているんだと思います。
木谷所長:これからは、どこにも居場所がなく、社会と繋がれない子どもを0にすることが目標です。教育支援教室には人数のキャパもあるので、メタバースも活用しながらオンラインで相談できる環境も整えていきたいと考えています。すでに各学校にも校内教育支援教室があり、様々な工夫をして居心地の良い空間を目指して取り組んでいらっしゃいます。学校と連携して、ここと同じような居心地の良い空間を、これからもっと広げていけると良いなと思います。
弊社では、吹田市立教育センター様の事例以外にも、多数実績がございます。詳しいお話や情報共有などご希望の方は下記連絡先まで遠慮なくお問い合わせください。
お待ちしております!
編集後記
お忙しい中教室見学やインタビューに応じてくださいました、吹田市立教育センターの木谷所長はじめとする皆様、本当にありがとうございました!
不登校支援という見学などをしづらいカテゴリーについて、吹田市立教育センター様の取り組みが、今後不登校支援に取り組まれる自治体様、学校様のお役に立てますことを願っております。
今後とも引き続きよろしくお願いいたします!次回の配信もお楽しみに!