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【掌編小説】ナカモトとの出会い

今日もトリスは自宅の二階でノートPCを開き仮想通貨の取引をしていた。
最近は値動きの良いAYMという通貨にはまっている。
仮想通貨はそれぞれにテーマがあったりする。金融系であったり投げ銭系やエコがテーマになったコインもあるが、AYMは公衆トイレがテーマになってる。単位はアヤメと呼び、1アヤメで世界中の有料公衆トイレが一回使用できる。
公衆トイレ事情が悪い中国で爆発的に人気が出だしたコインだ。
なんでもAYMを製造しているポシタポカンパニーが中国中の有料公衆トイレを買い占めているらしい。

「おーい、トリスお客さんだぞ」

時計を見ると夜の9時。あらこんな時間に誰かしらと思いながら、
「はーい」とトリスは二階から返事する。

◇◇◇

一階に降りるとTVニュースが流れている。
画面からは我須首相が連日のように同じことを繰り返す。
「国民の皆さま、どうか今しばらく外出は控えてください」
テレビを観たまま振り向きもせず源治が伝える。
「トリス、玄関にお客さんが待ってるぞ」

◇◇◇

トリスが玄関に行くと男性用の白い割烹着を来た若者が立っていた。歳の頃は二十歳前後、男前だが見たこともない顔だ。

「ナカモトです」

「あなたが今、巷で噂のナカモトさん?」

その若者は黙ったまま手さげの紙袋から何やら取り出した。


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「きゃっ、中本の蒙古タンメン!これ、辛さが癖になるのよ。今、週一で食べてるの!」とトリスが微笑む。

「いや、俺はラーメン屋・中本の店員で、名前は一と書いてハジメです!姫野 一って言います」

ちょっ、ちょっと待て。仮にもタイトルには小説とあって、写真で落とすなんてのは邪道の極みではないか!
ふーん、それがどしたの。先に進むよ。

「トリスさんが好きだと聞いてたのでお持ちしました!」

「でも、私がこれを好きだって誰から聞いたの?」

「それだけは言えないっす。今日はこれで失礼します」

そういうとハジメはガラガラとドアを閉め、出て行った。帰り際、左の口角だけが上がりニヤリと笑ったかのように見えた。


繰り返しになるが、ビットコインの発明者サトシ・ナカモトとの出会いはまだまだ先の話になる。
果たしてハジメはワタルの恋のライバルになるのか。
そして我須首相の正体とは。
今後の展開に乞うご期待!

(つづく)


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