【短編】肉汁屋のケンちゃん
クリーニング屋でもなく八百屋でもない、そう、ここは肉汁屋。
なんの店かって?
肉汁物ならなんでも置いている。
肉汁うどんに肉汁蕎麦、肉汁ラーメンに肉汁つけ麺、肉汁豆腐に肉汁納豆なんてのも置いてるんだ。
一人の客が暖簾をくぐる。
「邪魔するでぃ!」
おっ、この声はもしや。
「いらっしゃい!」店主である宮脇 健太郎こと、ケンちゃんが答える。
「あんた六助さんだよね。頭の鉢巻を見れば分かるよ。空いてる席ならどこでも良いから座って」
御手洗 六助はテーブルに着くとさっそくメニューを見る。
「肉汁カレーライスに肉汁パスタも美味そうだけど、肉汁ステーキで」
「あいよ!」お冷を持ってきたケンちゃんが注文を伺うと踵を返して厨房に入る。
朝だパン、パンパパン♪
厨房から歌声が聞こえてくる。ちなみに今は昼時だ。
やはりベースは和食屋なのだろう。カランコロンと下駄履きのケンちゃんが、出来上がった料理を運んできた。
下駄からは大きな足の指がはみ出て見える。足指フェチの六助も、じっくり丁寧にしゃぶってみたいとは思わなかった。
肉汁ステーキは肉汁が餡かけになっていて、ステーキの全面にトロリとかかっている。
美味そうだ。
ケンちゃんはテーブルに置いたそのステーキを指で押す。ジュウっとステーキの肉汁が溢れ出す。
ケンちゃんは嬉しそうに、何度も何度もステーキを指で押しだした。
ジュウ、ジュウ、ジュウ!
これではステーキの旨味が全部流れ出してしまうではないか。
我慢しきれず六助が怒鳴った。
「あんた、いったい何をしてるんだ!」
「肉汁だけに、肉いじる」
店内が静まり返った。
六助も無言でケンちゃんを見つめる。
「全面的にごめんなさい!」
と、一言だけ云うと、ケンちゃんは深々と頭を下げた。
(ぱひゅん)
BGM
思い切ってオッサン二人を小説に投入してみたが、何の化学反応も起こさないまま終わってしまった。
私のキャスティングミスなのか。
全米が号泣するような作品は、もう少し先の話になる。
今週もいただきました!皆さまに感謝です♪
また今度!
えっ!ホントに😲 ありがとうございます!🤗