【短編】最強の敵
姫野 一は病院のベッドで目を覚ました。
コンコン♪誰かがドアをノックする。
「はーい」
渡とトリスがお見舞いに来たのだ。
「ハジメさん、大丈夫?」とお見舞いの花束を渡しながらトリスが尋ねる。
「俺ならこの通り、ピンピンしてます。もう大丈夫です!それよりあの小人達はどうなりましたか?」
「小人達はあの後、姿を消したまま全く出て来なくなったよ」と渡が答える。
「それは良かった」そう言いながらハジメは受け取った花束をベッドの横のテーブルに置いた。
「あれ?財布がない」
「どうしたの?」とトリスが尋ねる。
「ここに置いていた財布がないんだ。さっきまで確かにあった。俺の全財産なんだ」
「いくら入ってたの?」
「3500円」
「ん?...まあいいわ。さっきまであったのなら私が調べてあげるわ」
そういうとトリスは鼻を摘み、息を吹き、目からピーっと音を出した。
一瞬、姿を消したかと思うと、コンコン♪とドアからまたトリスが入ってきた。
そう、3分過去に移動したトリスだが、時空の歪みにより全く同じ場所には戻れないのだ。
「ハジメさん、分かったわ。犯人はまだこの部屋にいる。そこのカーテンの後ろよ!」
とトリスは窓際のカーテンを指差す。
カーテンの裏から人が出てきた。
巨漢の男だ。
「ちっ、バレたようだな。私は鳥野白湯(トリノパイタン)と申す。この財布は貰っていくぜ」
「俺の財布を返せ!」そういうとハジメは手に持った花瓶を投げつけた。
「ケッカイ!」と鳥野白湯は叫びながら、まるでグリコの看板のように両手を上げる。
その分かり安さは仮面ライダーの『変身』を超えてきた。
花瓶は白湯には当たらず、白湯の目の前で直角に床に落ち、ガチャンと割れた。
目に見えないバリアがあるのか。どうやら白湯は結界の術を使うようだ。
「ここは俺に任せてくれ」
渡が静かに囁く。
さあ、財布を返すんだ。
「ケッカイ!」と白湯はまた叫ぶ。
「私にボイズは通用しない。私の結界の術はピストルの玉をも通さない。次は特殊能力選手権で会おう。さらばじゃ!」そういうと白湯は颯爽と病室から立ち去った。
トリスが追いかけようと廊下に出たが、既に白湯の姿はなかった。
「1/fの揺らぎを利用したボイズも効かないというのか。こんな事は初めてだ」渡が肩を落とす。
ハジメがテーブルの上に置いてあるチラシに気づいた。
「渡さん、トリスさん、このチラシを見てください」
特殊能力選手権
主催:ほんわか商店街
日時:○月○日午後三時
場所:ほんわか公園
ゲスト:我須首相(開会の挨拶)
参加資格:特殊能力を有する者
対戦方式:トーナメント
「三人でこの大会に出て仕返ししましょうよ!」
(つづく)
BGM
いよいよ始まる特殊能力選手権。
渡のボイズを封じる鳥野白湯とは何者なのか。
そして、全財産を奪われたハジメは果たして退院できるのだろうか。
乞うご期待!
えっ!ホントに😲 ありがとうございます!🤗