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【短編小説】19人の小人(後編)

〈前編はこちら〉

ドラえもんののび太であれば、将来しずかちゃんと結婚できる未来が見える。
凄く幸せな事だと思う。
きっと毎日が楽しくなるだろう。
だって、将来結婚することが分かっていれば、わざわざ透明人間になって、毎日しずかちゃんちのお風呂を覗きにいかなくても良くなる。

だけど、ハジメは僅か3分しか未来に移動できない。

屁をこいたその刹那、ハジメはその場に倒れていた。全身に痛みが走る。
光線銃も浴びたようだが、3分未来に移動することによって確実に生き延びることをハジメは知っていた。自分のスマホを取り出し救急車を呼ぶ。
生き延びただけでもこの特殊能力に感謝するべきなのだろうか。全身が血だらけで痛い。

◇◇◇

過去に戻ったトリスは悩む。あの角を曲がれば家に着くけど、そこには19人の小人達が待ち構えている。
そうだ。一つ手前の角を曲がろう。

「きゃーっ!」

一つ手前の角を曲がったのにそこには19人の小人が待ち構えていた。これがパラレルワールドなのか!

小人A「キーッ!」

「君たち家に帰りなさい」

トリスの背後から静かに透き通った声が聞こえた。
振り返ると、そこには有野戸 渡が立っていた。

小人達はズルズルと、黒い影の塊となって退散していく。

「渡さん、いつもありがとう!」
トリスは既に涙ぐんでいる。

「トリスさん、もう大丈夫!
 それよりハジメ君が入院したようだ。これから一緒にお見舞いに行こう」
ワタルが微笑む。

結局、ワタルの特殊能力であるボイズが最強かよっ、なんてトリスは思いつつ渡と一緒に病院に向かった。

◇◇◇

首相官邸には立派な総理用の執務室がある。
執務室では我須首相が電話をしていた。
「国民を家に閉じ込め、国民の体力を徐々に奪っていく事が君たちの真の任務だ。それなのに失敗したのか!我々に失敗は許されない。
 19人とも消えてもらうぞ」

小人A「キキーッ」

「うるさい!我々、ガースー星人は一回の失敗でも許さないのだ。
 現在、全世界の150カ国の大統領や首相は我々、ガースー星人が成りすましている。
この地球はガースー星人が制覇するのだ」

我須首相はそれだけ言うと、ガチャンと電話を切った。
黒電話かっ!


(つづく)


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