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産業保健の金言集Part 2

産業保健は様々な形があり、捉え所がないとも言えます。そのため、様々な金言・至言から学ぶことも多いと思っています。諸先輩・先人のお言葉を紡いでいくことも産業保健職には求められると思い、この記事にまとめてみました。少しお遊びも入っていますがご笑読ください。適宜金言を追加していき、永遠に未完成の記事となりますので、たまに見返してください。

【解説】は、いずれも筆者の勝手な解釈です。また別の解釈もあると思いますので、みなさん自身で言葉を咀嚼し、解釈し直してみてください。


労働安全衛生法は先人たちの血で書かれた条文である

【解説】
読み人知らず

労働安全衛生法の世界に「安全規則は先人の血で書かれた文字である」という言葉があります。高度成長期の昭和30年代から40年代にかけて、労働災害による死亡者数は年間6,000人前後で推移していました。しかし、昭和47年の労働安全衛生法の制定を機に、死亡者数は激減します。このように、1つの法律が、大きく社会を変革する力があるということです。労働安全衛生法が無味乾燥で暗記ばかりの科目だとして苦手意識を持たれる受験生が少なくありませんが、労働安全衛生法も労働者の生命・身体を守る立派な労働法の1つです。労働安全衛生法に苦手意識を持たれている受験生は「安全規則は先人の血で書かれた文字である」という言葉を忘れないでください。(アガルートアカデミー 社会保険労務士試験 ▪ 総合講義より)

安全衛生のABC・(A)当たり前のことを (B)馬鹿にせず (C)ちゃんとやる

【解説】
読み人知らず
このABCは、経営のABC、品質のABCなどと多用されている言葉です。
人はヒューマンエラー(忘れる、怠る、さぼる、間違える、勘違いする、過信する、疲れる)を起こす生き物です。だからこそ、ひとりひとりが決められたこと、ルール、マニュアルを遵守すること、初心に戻る、基本に戻ることが重要です。安全衛生活動は、地味で地道なもので、ついつい特別なことや奇抜なことをやりたがるのですが、それをしないということも同じように大切だと言えるでしょう。

虫の目、鳥の目、魚の目

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【解説】
読み人知らず。ビジネス界では頻用される言葉です。
産業保健は、対個人ではなく、対組織であるという視点が必須です。さらには、社会、業界、地域、時代の流れの視点も持っておく必要があります。使い古された言葉かもしれませんが、端的に大事なことを突いている言葉なので取り上げました。

1メートルは一命とる

【解説】
読み人知らず
安全衛生の現場では「1メートルは一命取る」という標語があります。たった1メートルの高さからでも、転落・転倒すれば命に関わるという意味です。ただ、下記ツイートのように、「絶対に安全な高さ」などそもそも存在しないという点にも注意しなければなりません。労安法では2mの高さからを高所作業と定義してはおりますが、これはあくまでも「墜落」という視点で捉えるもの。「転倒」すれば0mの高さからでも死に至る事はございます、とのことです。

42ボルトは死にボルト

【解説】
読み人知らず
42Vでも体が濡れていれば感電死する危険が十分にあります。電気は低圧でも危険だ、という認識をしっかり持つことが大切です。危険な刃物などは、見れば危険とわかり気を付けます。電気は充電部の金属が見えるだけで電気自体は見えません。低圧でも触っただけで死ぬことがありますよ。いやガチで死にますよ。

三方よし

【解説】
近江商人の心得より
「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」。売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるということで、近江商人の心得をいったものです。企業活動とは利潤を追求するものですが、それは企業だけが儲かればいいというものではありません。顧客、地域(世間)に対する責任もあります。また、短期的な利益ではなく、長期的な利益を成り立たせるためにも大切なことでしょう。まさに、SDGsの観点だと言えると思います。また、労働者もまた企業の顧客であると言えますので、「三方よし」というのは、「働き手もよい」「企業もよい」「社会もよい」という意味にも捉えられるでしょう。

三現主義:現地・現物・現実

【解説】
読み人知らず(トヨタやホンダなどで取り入れられている概念として有名)
三現主義とは、「現場」「現物」「現実」の3つのを重視し、机上ではなく、実際に現場で現物を観察して、現実を認識した上で、問題の解決を図るという考え方です。産業保健職は、労働者が働く現場を実際に知っていることが非常に大切であり、現実的な実現可能性のある提案をする必要があります。現場を知らなければ適切な判断はできないとも言えるでしょう。これは臨床で言えば、診察をしないのに診断ができないことと同じです。三現主義は産業保健職に必ず持っておかなければいけない考え方だと思います。ちなみに、原理・原則を加えた「五現主義」というものもあります。

現場百遍・現場百回

【解説】
警察による事件の捜査などに際して使われる表現で、事件現場にこそ解決への糸口が隠されているのであり、100回訪ねてでも慎重に調査すべきであるということ。警察関連でない場合にも使われることはある、そうです。
Weblio 辞書より
産業保健職も、現場に100回行きましょう。

健診診察は第二の職場巡視だ!

morimori先生の師匠の言葉です。
労働者を診る産業医としては、健診による情報収集の機会を活かすことが重要なんだと思います。目的意識を持つと健診の診察も貴重な機会ですよね。

手続的理性

【解説】
近畿大学法学部 法律学科 三柴丈典氏の言葉より
手続的理性とは、合理的な手続を策定し、公正に運用すること、とのこと。あっちこっちに話がいきがちなメンタルヘルス問題ですが、手続的理性という言葉を聞いたとき、いろんなものがすとーんと腹落ちした気がしました。プロセス・手続きをいかに合理的に・理性的に・公正に粛々と進めるのか、ということは安全衛生活動全てに通じることだと思います。こちらの資料がまとまっていますので、ぜひどうぞ(メンタルヘルスと法 近畿大学法学部教授 三柴 丈典

この言葉はガチ産業医ブログでも取り上げて考察しました
ガチ産業医的「手続的理性」解釈

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正しく困らせる

【解説】
読み人知らず
産業保健の現場では何か問題が発生したときに、意外と多いのが「本人は困っていない」という状況です。上司や人事が困って手を焼いているのにもかかわらず、本人はあっけらかーんとしている事態は往々にしてあります。例えばアルコール依存症の従業員の場合では、本人は困っていないのに、職場の上司・同僚が困っている、ときには家族も困っているのに、本人はアルコールをやめようとせず飲酒行動を続けてしまっていることがあります。アルコール依存症は否認の病気と言われているくらいですから、産業保健職が直接本人に介入しても拒否反応・否認をされてしまって前に進みません。こんなときは、本人を正しく困らせる状況を作る、ということが一つの解決になります。つまり、飲酒を続けると解雇する、評価が下がる、特定の業務ができない、という状況です(もちろん不当なことは×)。他にも、受療行動をとってくれないといった場合においても、環境形成によって本人を正しく困らせることによって、適切な行動をとってもらうことは、産業保健職のアプローチとして有効なやり方だと思います。

記事も作っています、「周囲の人が困っているのに、本人だけが困ってない状況をどう打開すればよいのか

産業保健はロジスティックス

【解説】
産業医科大学 災害産業保健センターの立石清一郎氏の言葉
産業保健はそのものを提供する準備段階や、お金回り、交通、ネゴ、根回しといったもので超絶重要である、ということかな。ロジが九割らしいです。

面談は準備が九割

【解説】
面談は、する前から結論が決まっているのですよ。すべては準備。出たとこ勝負にしない。

産業医学は行動する医学

“「行動する産業医学」シンポジウム運営委員会”より
アトミズム(分析主義)からホーリズム(総体主義)への移行が本来的な産業医学だとする基調講演からはじまる、産業医学のシンポジウムを記録した本・・・とのこと

待っていてもダメで、とにかく行動しましょうってことじゃないかと(雑)
本当はもっと深い言葉だと思います。

XS活動

いくらでもあります。中身を確認しておきましょう。
「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seisou)」「清潔(Seiketsu)」「しつけ(Shitsuke)」「習慣(Shukan)」「作法(Saho)」「消毒(Shodoku)」「殺菌(Sakkin)」「洗浄(Sennjou)」「安全(Safety)」「安心(Smile)」「節約(Setsuyaku)」「創意工夫(Soikuhu)」「整備(Seibi)」「サービス( Servise)」「スピード(Speed)」「自意識(Self conscious)」

働けないのに働かせてること、働けるのに働かせないことが敗北

【解説】
pho先生の言葉
chatGPT先生に解説していただきました。
この言葉は、労働市場や社会の不均衡についての深い洞察を表しています。それは二つの異なるが関連する状況を指摘しています。

  1. 「働けないのに働かせてること」:これは、身体的、精神的、またはその他の理由で労働に適していない人々が、何らかの理由で働かされている状況を指します。これは、過剰な労働要求、不適切な労働条件、または社会的圧力などによって引き起こされる可能性があります。この状況は、個人の福祉に対する懸念を示しており、労働者の健康と安全に対する無視を暗示しています。

  2. 「働けるのに働かせないこと」:これは、仕事ができるにもかかわらず、仕事の機会にアクセスできない人々を指します。これは失業、スキルと職業の不一致、または差別的な採用慣行などによって発生する可能性があります。この状況は、人々が彼らの能力を最大限に活用できる機会を奪われていることを示し、労働市場の効率性や公平性の問題を提起しています。

この言葉は、労働市場の不均衡が個人と社会全体の両方にとって不利であることを強調しています。それは、労働市場のより公平で効率的な管理の必要性を示唆し、すべての人に適切な労働条件と公平な雇用の機会を提供することの重要性を強調しています。

(職場のメンタルヘルスは)愛と法律でできている

川上憲人先生のお言葉

chatGPT先生に解説していただきました。
「職場のメンタルヘルスは愛と法律でできている」という言葉は、職場の健康な労働環境を維持するために重要な要素が二つあることを指摘しています。

  1. 愛:職場において、相互の理解や支援、共感、コミュニケーションの質など、人間関係や心理的安全性を確保する要素を指します。従業員同士や上司と部下の間で、お互いを尊重し、理解し合うことが大切です。このような環境があると、ストレスや精神的な負担を軽減し、メンタルヘルスを保つのに役立ちます。

  2. 法律:労働法や健康安全法などの法的枠組みは、労働者の権利や職場の安全を保障するために設けられています。これには、適切な労働時間、休憩時間、有給休暇、適切な職場環境の確保などが含まれます。これらの法的規定は、従業員が安心して働ける環境を提供するために重要です。

この言葉は、職場のメンタルヘルスを維持するためには、愛情と支援の文化とともに、法的な基準を守ることが必要であるということを示唆しています。

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