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ジェンダー問題は避けては通れない

この記事は「女性労働者支援の落とし穴」のスピンアウト記事です。まだお読みではない方は、ぜひお読みください。

産業保健では、女性支援はよく話にあがる話題ですが、ジェンダーの問題についてほとんど語られることはないように思います。とてもセンシティブな問題ではありますので、避けられがちなことも仕方のないことではあると思います。しかし、ジェンダーの問題は、極めて重要な問題だと思っています。そこで、ガチ産業医ブログとして、この問題を取り上げていきたいと思います。

ジェンダーの用語

ジェンダーに関わる用語を簡単に説明します。

●ジェンダー:生物学的な性であるセックスに対し、「社会的・文化的に形成された性別」のこと
●ジェンダー問題:ジェンダーに基づく偏見や不平等のこと。具体的には、識字率の低さや所得の低さ、人権侵害の被害者の多さなど。
●ジェンダー主流化:政策決定過程やあらゆるレベルの政策及びシステムをジェンダー平等にするための政策理念
●ジェンダー平等:ひとりひとりの人間が、性別にかかわらず、平等に責任や権利や機会を分かちあい、あらゆる物事を一緒に決めることができること
●ジェンダーロール:社会生活において、性別によって固定的な役割を期待されること。 また、その役割。 例えば、「男は外で仕事をするべき」など。 性的役割
●ジェンダーバイアス:「男らしさ」「女らしさ」などの男女の役割に関する固定的な観念や、それに基づく差別・偏見・行動などのこと
●ジェンダー規範:男性と女性がどのようにあるべきで、どう行動し、どのような外見をすべきか、という考え。 規範(ノーム)とは、ある特定の時代の一点における、ある特定の社会やコミュニティが容認しているジェンダーの属性や特徴のこと
●ジェンダーギャップ:男女の違いにより生じる格差のこと。ジェンダーギャップ指数とは、世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)が毎年公表しているもので、経済活動や政治への参画度、教育水準、出生率や健康寿命などから算出される男女格差を示す指標。日本は「政治」・「経済」の分野の格差が大きく116位/146国(健康と教育はトップレベル)

男女共同参画局「共同参画」2022年8月号

ジェンダー問題は労働者の健康問題そのものだ

ジェンダー問題によって多くの男女が傷つき、苦しんでいます。それは、意識的にも無意識的にもです。ジェンダーは、社会で形成されるものですが、日本のように同調圧力が強いと言われる社会では、なおさら、そのジェンダー規範による影響は大きいように思います。男女に分けて、その問題について考えていきます。まずは、以下に性別役割に対する考え方を示します。

男女共同参画局 令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究

男性

男性のジェンダー規範としては、家族の大黒柱として収入を得ることが当然、稼がなければならない、泣き言を言ってはいけない、黙って耐える、といったものがあります。また、「有害な男らしさ」( Toxic masculinity)という概念では ①感情の抑圧または苦悩の隠蔽 ②たくましさの維持 ③力の指標としての暴力が挙げられるそうです。
 労働現場では、これらの規範によって、男性労働者が助けを呼べない、相談できない、弱みを見せられない、感情を表に出せない、稼げない自分を過度に卑下してしまう、休業した(働けない)自分を責める、といった状況に陥ってしまう懸念があります。つまり、男性労働者ほど仕事を抱え込んでしまう、支援にたどり着けない、成功していないことによる劣等感を感じやすい、といった状況に陥る傾向にあると言えるでしょう。そして、これは男性の自殺者数が相対的に高いこととも関係しているとも考えられます(確定事項ではない)。産業保健職として、支援体制を検討する際にも、男性の特性というものも考慮しておく必要があると思います。

参考記事
女は「ガラスの天井」、男は「ガラスの地下室」男性の「生きにくさ」は性差別ゆえかもしれない
現代日本社会における「男性問題」

女性

女性のジェンダー規範として、家事や育児は女性、家庭を守るもの、主張しない、おしとやか、といったことが挙げられます。これらは、評価する側の意識にも、女性自身の意識にも刷り込まれ、女性のキャリアアップを阻害し、いわゆるガラスの天井と呼ばれる現象につながっています。企業内で発言権が得られにくいことや、重要な仕事を任せられず雑務(コピー取りやお茶出しなど)を振られること、仕事のチャンスが与えられないこと、昇進機会から遠ざけられること、セクハラの被害を受けやすいこともあるでしょう。社会全体でみれば、非正規雇用労働者2150万人のうち65%が女性であり、賃金給与格差として平均給与は男性の75%にとどまっています。
 女性労働者のジェンダーの問題は、キャリアや雇用、給与、昇進に大きく関連していることから、産業保健職として支援できること(産業保健マター)とは少し乖離していると言えるかもしれません。しかし、相談を受けたり、人事や上司と連携する際にも、ジェンダーの問題が背景にありうることを知っているかいないかでは対応に差が出てくるでしょう。

補足

男女の差が、医学的な差なのか(先天的か)、社会的な役割や規範、教育機会による差なのか(後天的か)を区別することは非常に困難です。例えば、細やかな配慮・気遣いができる、共感能力が高い、コミュニケーション能力が高い、地図が読める、数学が得意、運転が得意といったことです。あくまで全体としてみれば、男女差にはそういう特性が違う傾向があるが、その差よりも個人差の方が大きいということだと思います。そのため、個人に当てはめすぎず(レッテルを貼らない)、とは言え、全体としては社会的に差があることは事実ですので、その差を踏まえた支援が必要なのだと思っています。
参照:
日本経済新聞社・日経BP社. 「男性脳」「女性脳」に根拠はあるか 性差より個人差|キャリア|nikkei style. NIKKEI STYLE.

「無意識の偏見」への気づきは当たり前

女性労働者支援の落とし穴」でも言及しましたが、無意識の偏見は非常に大切な概念です。2018年のスターバックスでの事件を契機に注目を浴び、今では多くの企業で「無意識の偏見」に関する研修を行なっているようです。海外では、人種や国籍、宗教、地域などの様々な要素がありますが、日本ではジェンダーに関する「無意識の偏見」が大きなウェイトを占めることになります。産業保健職としても、自分自身が持っているジェンダーに関する「無意識の偏見」を気づこうとする姿勢は、もはや当たり前だと考えます。産業保健職はジェンダーバイアスを自覚した上で、バランスのとれた支援を行う必要があると思います。

参照記事:
メルカリ、「無意識(アンコンシャス)バイアス ワークショップ」の社内研修資料を無償公開(←おすすめです!)

特権に気が付こう

自分たちがどのような特権を持っているか、考えたことはありますか?
えてして特権を持っている側は、そのことに気が付かずに生活を送っています。特権を持たざるマイノリティ側はいつもその不自由さがあります。特権側にしか開かない自動ドアは社会に多くあります。私たち産業保健職は、マイノリティとして周縁化*された労働者も支援する立場にあります。だからこそ、自分がどのような特権を有しているのか、そうじゃない方はどのような不自由さがあるのか、ということにも想像を巡らせなければいけないのではないかと思います。

*marginalized:「社会の主流から取り残された、社会的に無視された」

こちらの動画もおすすめです。

マジョリティ支援とマイノリティ支援

労働現場は常に働けるくらい元気なマジョリティ(大多数)の労働者と、そうではないマイノリティ(ごく少数)の労働者がいます。マイノリティ側には、この記事で取り扱うジェンダー問題で苦しむ労働者以外にも、障がい者、(就業能力の落ちた)高齢者、LGBTQ、精神疾患、がん、血管疾患発症後、難病などの状態があります。産業保健サービスとは、そのようなマイノリティの労働者への支援も使命の一つだと言えます。そして、そのような労働者から相談を受けられるかどうか(相談しやすい相手と思ってもらえるか)は、支援できるかどうかの分水嶺です。比較的、事例性をきたしやすいものや健診などで検出しやすい障がい者、精神疾患や血管疾患、難病などと違い、潜在下・埋没下しやすいマイノリティ特性もあります。私たち産業保健職は潜在下・埋没下しやすい労働者に対しても想像力を働かせ、理解と共感を積極的に示していく必要があるのではないかと思っています。

共感の時代だからこそ

従来から、産業保健職には「共感」の能力が求められていますが、それに加えて、多様性と包括(ダイバーシティ&インクルージョン)が求められる現代は、一人ひとりが違うことや、個人個人が尊重される時代になり、「共感の時代」とも呼ばれます。「他者に共感すること」は、「他者の靴を履くこと(put yourself in someone's shoes)」とも表現されます。他人に共感を寄せるためには、自分自身がどのような考え方の偏りがあるのかを知らなければなりません(自分の履いている靴を知る)。共感本(エンパシー本)とも評される「他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ」には以下のようなことが書かれています。他者に共感するためには、自分の靴を脱ぐこと、自分に刷り込まれた考えの偏りに気付く必要があるのだと思います。

誰かの靴を履くためには自分の靴を脱がなければならない (36p)

他者の靴を履くことができる人たちの社会を作るには、自分たちが自分たちにかけられた呪いを解く必要がある。他者から勝手に押し入れられるカテゴリー分けの箱に入って、箱としての呼称のラベルを貼られ(中略)原料リストをびっしり書き込まれることを拒否しなければ、自分が自分であることを守ろのは難しい。(135p)

ブレイディみかこ. 他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ. 文藝春秋; 2021.

無意識に人を傷つけないようにする

産業保健職は、無意識の偏見による言動で、対象者を無意識に傷つけてしまうことがないように注意しなければいけないと思います(一方で、ゼロにはできないとも考えます)。

分かりやすい例としては、以下のような言動です。
 「早く結婚しないとダメですよ」
 「子供を持たないと女性として幸せになれないよ」
 「男性なんだから我慢してがんばらないと」
 「女性は3歩下がって歩くものです」

対象者に対して共感の姿勢を示すためにも、まずは自分自身のことを知る必要があり、そこにジェンダーの概念は不可欠だと言えます。誰もが、何かしらのジェンダーバイアスを持っています。ロボットでもない限り、完全にフラットであることはありえないでしょう*。そして、ジェンダーバイアスが社会、地域、集団、時代(世代)などの様々な条件で変わりうることも知っておき、常にアップデートする必要があると思います。

*AIもまた学習の過程で差別をはらんでしまうことが露呈しています。本当にフラットなものなど、存在しないのかもしれません。
参照:
焦点:アマゾンがAI採用打ち切り、「女性差別」の欠陥露呈で
マイクロソフトのAI、「差別発言」で即停止ツイート開始直後に問題が発生

Z世代

産業保健の対象は全ての「働く世代」です。働ける高齢者から、若年世代まで幅広い労働者が対象であり、世代ごとに価値観は大なり小なり変わるでしょう。働き方も大きく様変わりしつつあります。もちろん「〜世代だから、〜なんでしょう」と安易にレッテルを貼るような言動は控えるべきだと思いますが、世代ごとに多少の傾向はあるのだと思います。
 日本型の働き方としては、終身雇用・年功序列・企業別労働組合が三種の神器と言われますが、その働き方がすでに限界を迎えていると言われています。その中で、最近では在宅勤務・テレワークの普及や、転職が一般化したり、副業・複業といった働き方、「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への移行といった議論が盛んにされています。特に、「メンバーシップ型」と呼ばれる働き方は男性が仕事で女性は家庭というジェンダーロールを前提に構築された仕組みと言えます(詳細は「働く女子の運命」を参照←超絶おすすめです)。Z世代のような若い世代の働き方の価値観が変わり、ジェンダーの捉え方も変わっていくことに、産業保健職は常にキャッチアップしていく必要があると思います。労働者側から「相談しても分かってもらえない」と思われたら、産業保健職としての存在意義は半減してしまいます。時代錯誤の人間にならなように気をつけましょう(自分自身もキャッチアップするのに必死です。自戒を込めて・・・)。

こちらは、around20(15~24歳)のZ世代に特化するマーケティング調査企業のページです。世代によって、ジェンダーに対する意識も大きく違うことが理解できると思います。


出典元:SHIBUYA109 lab.

出典元:SHIBUYA109 lab.
出典元:SHIBUYA109 lab.

SDGs

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。

このSDGsの5番目は、ジェンダー平等です。

ジェンダー平等を実現しよう
・すべての女性や女子が能力を
 最大限に発揮できる社会をつくる
・すべての人が性別に関わらず
 平等に機会が与えられる社会をつくる

SDGsがどれほどの影響力を持つかは未知数ですし、流行が去る可能性もありますが、なんとなく今の日本では社会にSDGsの大号令がかかっているので、それぞれの項目に対して目標を掲げている企業・組織も多いのではないでしょうか?そして、教育現場でも概念として取り上げられているようです。17の目標の1つではあるものの、概念として浸透していけば、それが当たり前になっていく可能性もあるでしょう。間違いなく環境問題や(世界の)人権問題も当たり前になっていくものだと思います。SDGsが浸透した世代とコミュニケーションを図る上では、ジェンダー問題もまた必須の知識となるでしょう。

炎上防止

産業保健職としての言動が、企業内で問題にならないように(SNSで言えば炎上しないように)リスク管理を行うことは、これからますます求められていくと思っています。乱暴に言えば、これまでは、昭和世代の価値観に合わせておけばよかったと言えるかもしれませんし、従業員に対しても上から目線の指導的な・パターナリスティックな関わり方でもよかったのかもしれません。しかし、現在はハラスメントの概念が当たり前化し、ハラスメント防止法が成立し、産業保健職も訴訟の対象となり、面談が録音・録画されていてもおかしくないですし、個人がSNS上でいくらでも発信できる時代です。そして、企業の広告・CMは、ジェンダーが絡むと途端に炎上する時代です。森喜朗氏が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」といった発言で炎上した件も記憶に新しいですよね。産業保健職としてリスク管理を行う上で、ジェンダーに関する知識は不可欠と言えるでしょう。

参照:
アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)への気づきが学びとリスク回避になる
ジェンダーの炎上CMまとめ

未来に向けて予め関心をもっていこう

社会はほぼ間違いなく、緩徐にでも、ジェンダー平等に進んでいくと個人的には思っています。男女別姓の問題や、女性の緊急避妊薬の問題、LGBTQの問題、同性婚の問題などについても、それが今後ずっと実現しないということはないでしょう。個人的には、十数年後には(もっと早く?)当たり前になっていく価値観にシフトしていく必要があると思っています。産業保健は予防医学であり、将来の労働者の健康障害予防に適確に対応するためには、働き方の変化やビジネスの盛衰といった将来を予想することが必要だと考えています。予防医学こそ予言・予想していくことが必要です。そして、その中の「人々の価値観」というものは、非常に重要な要素です。このようなことも踏まえて、私は、予め早い段階で、ジェンダーに関心を持っていくことが重要なのではないかと考えています。

SHOW YOUR FLAG

私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない」という書籍の中で、立場を明確にする、ということが書かれています。曰く、あなたは「性別による不平等はあるし、なくなるべきだ」という立場なのか、「性別による不平等はあるけれど、なくなってはいけない またはどうでもいい」という立場なのかを明確にせよ、という問いです。ジェンダーの問題は、まだ多くの方は無関心なのだと思います。というよりも、ジェンダーの問題は面倒なことだから首を突っ込みたくないということが本音なのだと思います(特に男性は)。しかし、もう時代は、ジェンダー問題を避けては通れません。無関心ではいられなくなりつつあると思うのです。無関心で触れないようにしている人ほど、無意識に誰かを傷つけてしまう恐れもありますしね。であれば、早い段階で、自分の立場を明確に示しておいた方がいいのでは、というのが私の考えです(やや打算的かもしれませんが)。もう新しい価値観のZ世代が働き世代に(産業保健サービスの対象として)入ってきています。自分がジェンダーの問題に対して、どのような考えを持っているのか、旗を示していきましょう(SHOW YOUR FLAG!)。

ALLY(アライ)を表明する

アライという言葉をご存知でしょうか?LGBTのアライは以下のようなものです。

ストレート・アライ(英語: Straight ally)とは、人権の平等化や男女同権およびLGBTの社会運動の支援や、ホモフォビア (同性愛者や同性愛に対して否定的な価値観)への異議を投げかける異性愛者を指す言葉である。アライ(ally)とは「味方」という意味の英単語

wikipedia ストレート・アライ

アライは、ジェンダーの文脈ではなく、LGBTの文脈で使われることが多いのですが、人権の平等や男女の同権(フェミニズム)といった文脈でも用いられます。個人的には、社会的公正さを目指すアライでありたいと考えています。

アライとは、マジョリティ集団の一員でありながら、マイノリティ集団への差別や不公正に対して異議を唱え、行動を起こす人々のことで、例えば、白人が人種差別に反対する、男性が性差別(セクシズム)に反対する、日本人が在日コリアン差別に反対するといったことが挙げられる。
すべての人をアライにすることは不可能だが、アライの数が増えることで、誰もが声を上げやすくなる社会が実現できる。

出口 真紀子:マジョリティの特権を可視化する~差別を自分ごととしてとらえるために~)

私は、産業保健を通じて、誰もが安全に健康に働きやすい社会を形成したいと考えていますし、そのためにはジェンダー平等が前提になってくると思っています。また、産業医としてだけでなく、一個人としても社会的な公正さを実現していくべきだと思っている立場です。まだまだ勉強中であり、無意識の偏見も多くあり、時に誤った言動、誰かを傷つけてしまう言動もあるかもしれません。しかし、姿勢としては、ジェンダーの問題の是正のために取り組んでいきたいと考えています。

参照(読み応えがあってとても勉強になります。おススメです!)
グッドマンダイアン・J, Goodman DJ. 真のダイバーシティをめざして―特権に無自覚なマジョリティのための社会的公正教育. 上智大学出版; 2017.

産業保健職としてできるアクション

ジェンダーの問題は社会全体の話になりますので、産業保健職としてできることには限りがあります。しかし、わずかなアクションでも少しずつ社会・集団を変えていくことはできるのだと思います。私が考えるアクションは以下の通りです。

●ジェンダー規範を他者に押し付けない
 (例:男性なんだから〜〜べき)
●自身のジェンダーバイアスを自覚するように努める
●ジェンダーバイアスを促進しうる用語の使用を控える
 家事を手伝う、女子力
●衛生委員会参加者のジェンダーバランスを働きかける。マイノリティの意見を拾うよう働きかける
 (参照:クオータ制
●ジェンダーに配慮したトイレや更衣室の設置を働きかける
 (参照:オールジェンダートイレ
●プレゼン資料の表現を工夫する
 (参照:「男女共同参画の視点から考える表現ガイド」)
●アライを表明する
 (参照:出口 真紀子:マジョリティの特権を可視化する~差別を自分ごととしてとらえるために~

K先生@ktobitateのnoteもとても勉強になるのでおすすめです!

産業保健が対応するべき生物学的性差

ジェンダーに対して、積極的に女性だけを支援するべきというのは誤りだと思っています。一方で、産業保健職としては、生物学的な性差(例:筋肉量、身長差、がんなどの婦人科疾患、化学物質への感受性、妊産婦)に対しては適切に支援する必要があると思っています。働く女性の支援に関する知識日本産業衛生学会の政策法制度委員会が「働く女性の健康確保を支援するために」という提言を2018年に出していますのでご参照ください。

1.長時間労働、不規則およびシフト勤務
2.メンタルヘルス対策
3.作業関連性運動器障害予防
4.VDT 作業の健康障害予防
5.エルゴノミクス
6.化学物質による健康障害予防について
7.労働と関係して母性に配慮を要する諸疾病の予防と対策勝手な過剰な配慮の落とし穴

日本産業衛生学会 政策法制度委員会「働く女性の健康確保を支援するために

働き方のデフォルトを頑強な男性にしない

女性労働者支援の落とし穴」でも言及していますが、働き方のデフォルトを頑強な男性にしないことが必要だと思っています。上述の提言の序文の最後に以下のような文章があります。

性別を問わず、全ての労働者が健康で働きやすい雇用労働環境の実現につながることを期待しています

日本産業衛生学会 政策法制度委員会が「働く女性の健康確保を支援するために

産業保健職としては、全ての労働者が、性別に関わらず、健康で働きやすい環境を実現することを支援する、というのが使命なのだと思います。その前提として、生物学的性差と、社会学的性差(ジェンダー)を理解していく必要があるのだと思います。

最後に

「ジェンダー問題は避けては通れない」と言葉荒げに煽り気味に題名をつくってしまいましたが、このような問題は、多くの人が無関心でいることが、その是正を遠ざけてしまうと思っています。少しでも皆さんが、この問題について興味関心を持ち、その是正のために行動していただくことで、社会全体のジェンダー平等の実現できるのではないかと思います。そして、単にジェンダーの問題に限らず、LGBTなどのマイノリティに対する抑圧が是正され、公正な社会が形成されることを願っています。

(この記事の題名はどこかで変更するかもです)


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