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7.就業制限の落とし穴

健診結果をみていると、予想以上に数値が悪い方が多くてびっくりすることもあります。臨床的な感覚からすると、入院レベルの方や、すぐにでも薬を処方したくなるような方もいますし、こんな働かせ方して大丈夫!?という方もよく遭遇します。そんなときに陥るのが就業制限の落とし穴です。あの人も制限、この人も制限と産業医の意見を乱発してしまっては企業の事業活動に大きな支障をきたしてしまいます。また、企業ー労働者間の本来の働き方や、労働者のキャリア形成を阻害してしまったり、疾病利得をうむ懸念もあります。せっかく出した意見がほとんど守られず、形骸化してしまうのも困りもので、産業医活動はどんどん実効性を失ってしまうでしょう。どのくらい数値が悪ければ就業上の措置を検討すればよいのでしょうか?そこで参考にするべきなのが、「健康診断の有所見者に対して、健康管理を行う事を目的とした、産業医による就業上の意見に関する実態調査、およびコンセンサス調査」です。調査結果の下表が、産業医が就業上の措置に関する意見を検討する目安となります。(決定ではなく、あくまで検討するための目安です。また、就業上の措置は主語が事業者であり、産業医が出しているのは、「就業上の措置に関する意見」や、「就業上の措置に係る意見」ですので、間違わないようにしてください。)

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健康診断の有所見者に対して、健康管理を行う事を目的とした、産業医による就業上の意見に関する実態調査、およびコンセンサス調査

産業医の意見(就業上の措置に関する意見)を不必要に乱発しないように、また個人としても、企業内の産業医間でも判断がぶれにくくするために、このような目安を設定することはとても有効です。また、企業内の仕組みに落とし込んで運用したり、従業員に周知することは公平性を保つことや、従業員側にとっても持病のコントロールの目安になります。なお、それぞれの項目で対象となる業務や疾病も異なります。それぞれについてどこかで記事を作成しますが、まずはこちらの資料をご参照ください。

就業上の措置を検討する際には、事業所や従業員の状況だけではなく、産業保健職側のリソース(産業医や産業看護職の数や、配置など)も大事な要素です。そのための仕組みを構築できるかというのも産業保健活動の戦略ですし、醍醐味とも言えるかもしれません。

数値の基準については明確なものはなく、企業ごとに委ねられるものになります。しかし、健康診断の事後措置においては、疾病性に着目するのではなく事例性に着目し、その異常所見が就労に支障をきたすのかどうか、就労によって著しい悪化をきたしているのか、という観点が非常に重要です。また、これは安全配慮義務という概念を考えることが理解に役立ちますので、「安全配慮義務の落とし穴」もご参照下さい。

事例紹介

一つの事例をご紹介します。産業衛生学会の良好実践例(GPS)を掲載しているサイトの中に、「常勤産業保健スタッフのいない分散型事業所における定期健康診断事後措置の試み」という事例があります。ここでは、図1のようなハイリスク者を抽出したうえで、産業医面談を実施し就業上の措置に関する意見を検討するというフロー(図2)になっています。図3の産業医意見書は所属長宛てとし、所属長の押印欄があるというやり方も、前回の「産業医が決定してしまう落とし穴」でもご説明した通りです。

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山本誠先生の「常勤産業保健スタッフのいない分散型事業所における定期健康診断事後措置の試み」についての事例リンクです。

こちらのサイトには良好実践事例が多く載っていますのでご参照ください。

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また、こちらのサイトには就業上の措置に関する多くの資料が掲載されていますので、ぜひご覧ください。 

就業上の措置支援ナビ

参考資料

Seiichiro Tateishi, Mariko Watase, Yoshihisa Fujino, Koji Mori. (2016). The Opinions of Occupational Physicians About Maintaining Healthy Workers by Means of Medical Examinations in Japan Using the Delphi Method. J Occup Health.58(1):72-80
健康診断の有所見者に対して、健康管理を行う事を目的とした、産業医による就業上の意見に関する実態調査、およびコンセンサス調査」

こちらの記事でもご紹介しているうちの1つです。



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