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留年バックパッカー06
バンコクに着いた。
ペナン島から対岸のバタワースまでフェリーで渡り、そこからマレー鉄道の寝台列車に乗って約1,000km。東南アジアの熱帯雨林を走る「深夜特急」で、かの沢木耕太郎は何を思っていたのか。
多くの旅人がそうであるように、僕もこの本に影響を受けている。大学の図書館に「卒業生の著書コーナー」があり、その中に「深夜特急」があったのだ。次の講義が始まるまでの暇つぶしに、と読みはじめたつもり
留年バックパッカー05
ペナン島へ行くことにした。
いまだ旅らしい旅ができてない。そんな夜に「異邦人」を読んで「太陽のせい」にしたくなったわけではない。東洋の真珠と呼ばれ、古くから東西貿易の拠点であったペナン島。そのビーチはマレーシア随一の観光地だという。赤シャツに行き方を聞いてみると、クアラルンプールから長距離バスが絶え間なく発車しているとのことだったので、その足でバス停に向かうことにした。
バスに揺られること5時
留年バックパッカー04
初めての国境の町「ジョホールバル」。
足を踏み入れた瞬間、ピリピリと不穏な空気を感知した。国境独特のカオス感。国と国の間、合法と非合法の間で、絶え間なく行き来する人たち。その歩みが巻き起こす砂埃の中に、いくつかの悪意が紛れ込んでいる。
こんな町は早く離れてしまいたいところだが、まずは両替である。レートは前もって調べておいた。両替商の言い値が違っていないか確かめた上で、余ったシンガポール・ドルを
留年バックパッカー03
もう何度目の寝返りか分からない。
なかなか寝付けずに姿勢を変えると、朝の光がまぶたの裏の眼球を照らした気がした。腕時計を見ると午前七時を指していた。空港のベンチに座ってあたりをぼんやり眺めてみると、だんだんと人の往来が増え、食堂からの匂いが濃くなってきた。おなかが鳴ったが、空港での食事は高いので、ひとまず繁華街まで動くことにする。慣れない英語標識を追って地下鉄の駅へと向かったものの、券売機も勝手
留年バックパッカー01
朝、がらんどうの部屋で目が覚めた。
夢と現実の焦点を合わせられないまま、孤独による不安だけが確かな形を帯びていく。それに抗うように身体を起こすと、背中がカチリと鳴った。そこで現実に焦点が合った。とたんに、さっきまで確かにあったはずの夢は消失する。目覚めはいつだってONとOFF。カチリとすべてが入れ替わる。
―削除シマス―
そして、夢は二度と戻らない。あらためて辺りを見回すと、部屋の片隅に見慣
留年バックパッカー02
そして深夜、シンガポール空港に到着した。
それにしても飛行機の中ほどつまらない場所はない。カプセルホテルみたいに潔癖で閉鎖的だし、『目的地に着きました』と言われても、僕がいるこの空間自体は何も変わっちゃいない。ただ目を閉じて開いただけ、そんな気がしてくる。ただひとつ変化があるとしたら、スチュワーデスぐらいだろうか。彼女たちのほんの少し乱れた髪型や、幾分か疲労が混じって見える笑顔だけが、時の経過を