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途上国における自国通貨と日本の未来

クズザンポーラ。ブータンに住んでるがぶです。

日本では感じない自国通貨を持つことの難しさ、そして日本の未来について書きました!ちなみにブータンの通貨ではニュルタムで、1ニュルタム=1インドルピーのペグ通貨になっています。


ブータン、インド、そしてブータン通貨ニュルタム

ブータンは、中国とインドの2大国に挟まれています。中国との国境はヒマラヤ山脈の峰になっており、貿易はほぼ行われていません。街を歩いていても中国人に会うことはありません。これは世界的にも珍しいと思います。一方で、インドとの結びつきは非常に強く、ほとんどのものがインドから輸入されています。インド人労働者も多くいます。また、ブータン人はインドに簡単に入国でき、国境でブータンの市民カードを見せるだけで入出国できます。このようにブータンとインドは経済的に結びつきが非常に強いので、ブータンニュルタムとインドルピーの価格を固定しています。

インド側のか国境ゲート。もはや建物さえ無い。奥に見えるのは建物はブータン側。

小話:どうやって同じ価値にしてる?

結論から言うと「1ニュルタムを銀行に持ってきたら、1インドルピーと交換します。」という仕組みによって実現していると思います。(実際銀行で交換できますが、1ヶ月に交換できる量は制限されています。)つまり、1ニュルタムは1インドルピー交換券です。
ちなみに昔の日本円は、銀行で同価の金(Gold)と交換できました(金本位制)。今は交換できないため、日本円の実質的な保証は無いはずですが、集団催眠のような状態で、"福澤諭吉の顔が印刷された紙"(日本円)に価値があると世界皆で共通認識をもっているわけです。とても不思議に感じます。

同じ価値ならインドルピーでいいのでは?(政府目線)

同じ価値にしているのであれば、インドルピーをそのまま自国通貨すればいいじゃん!と思いますが、そうはならない事情があります。私の考えは"インドルピーがとにかく足りない"です。
ブータンは輸出よりも輸入が多い貿易赤字国です。輸出として、主に電気、野菜、石材等を輸出しています。しかし、その金額以上に工場製品全般(プラスティック製品、金属製品、衣類等)を輸入しています。車や家電はもちろん、歯ブラシ、スナック、紙、洗剤等の生活用品をほぼ全て輸入に頼っています。つまり、貰うルピー(物を売り、ルピーを受け取る)より、使うルピー(物を買い、ルピーを渡す)のほうが圧倒的に多いです。そうすると国家レベルでルピー札がないので、国民皆でルピーを使うことはできません。そもそも無いのだから。

自国通貨ニュルタムのメリット

そこで1ルピー交換券1ニュルタムを発行することにします。「交換券なら結局同じだけのルピーが必要じゃん!」と思うかもしれませんが、違います。
何をするかと言うと、銀行は実は100ルピーしか持っていないのに、1,000ニュルタムを発行します。しかし、多くのブータン国民はブータン人同士で売買するので、その時はお互いにニュルタムのやりとりで成立します。日本人も普段の生活で日本円しか使わないのと同じです。つまり、ほとんどの人は銀行に交換しに来ないわけです。なので銀行は持っているルピー以上にニュルタムを発行できるわけです。このトリックにより、通貨枚数をかさ増しして国内の通貨・経済を回していると思われます。

同じ価値ならインドルピーでいいのでは?(国民目線)

全てのニュルタムをインドルピーには変えられない(政府が十分なインドルピーを持っていない。)という事が想像できるうえ、ニュルタムは他国では全く使えない通貨でもあるため、ニュルタムはインドルピーの下位互換通貨です。ルピーのほうが良いものなわけですが、なぜ国民はニュルタムを使っているのか。
1つは物理的にインドルピーが手に入らないことが大きいと思います。生活の中でインドルピーがお釣りでくる事もありますが、インドで買い物する友達(国境を超えたインドで買い物するほうが国内で買うより安い。)がインドでの買い物に使って消えていきます。
2つ目は、先述のとおりブータン人同士の売買では問題が起きないことが理由だと思います。
しかし、銀行(政府)がインドルピー以上のニュルタム発行を進めるほど潜在的なリスクは高まるため、いつか崩壊のリスクもあります。しかし現時点でブータン人からニュルタムに対する危機感は感じないので、しばらくは大丈夫なように見えます。

お金のないブータン、なぜ崩壊していない?

現在のブータンが貿易赤字なのに存続できている理由は、他国からの支援があるからです。これは完全に個人の意見ですが、インドから見たブータンは、土地は山岳部ばかりで経済的価値が少ないうえ、中国との緩衝地域になっていることから、他国として支援を続けるほうが都合が良いという状況なのではと妄想しています。

他国通貨と価値を固定しない自国通貨を作るのはどうなの?

ところで、初めから他通貨と価値固定していない通貨を作るという案も当然あります。しかしこれも修羅の道です。途上国は基本的に貿易赤字の事が多く、輸入が多い状態です。つまり、輸入するために相手国の通貨をマーケットで買わないといけません。買う時に相手に渡すのは自国通貨になるわけですが、輸出がない≒その国の通貨をほしい外国人はいない という状況になるため、マーケットでどんどん自国通貨の価値(金額)が下がっていきます。そうすると国民もその通貨を持っていると価値が目減りしていくので、国民も自国通貨を信用できなくなり、ほかの通貨(USDとか、BTCとか)を集めるようになり、ますます通貨の信頼がなくなっていきます。そうして通貨の価値が不安定になり経済も不安定になっていくリスクがあります。

貿易赤字国日本の未来

最後に日本の未来についてですが、個人的に日本の未来は超不安です。ここまでに述べたとおり、私は貿易赤字が続く国に未来は無いと考えています(通貨システムが機能しないのは経済的にかなり不利です。)。
日本は1980年~2010年はずっと貿易黒字でしたが、2011年~2022年は概ね貿易赤字です。実際海外で暮らしていて、車とカメラは日本製品が多いですが、家電、スマホ、コンピュータ等は中国や韓国の物が多いです。また、アニメやゲームはとても有名ですが、ほぼ海賊版です。
多くの外国人が日本製品はクオリティが高いと認識していますが、金額やコスパで考えると劣る事が多く、輸出できるものが減ってきているのだと思います。円安なのに輸出が伸び悩むの、やばすぎです。

日本社会、変わらねばならぬ時が来ているのでは

日本は良いところもいっぱいありますが、悪いところも多いと思います。

  • 個人の能力が評価されにくい年功序列。世界に強い若者にも権利が与えられない。

  • 発明家であるエンジニアの給与が低い。新しいものを開発できるエンジニアが海外企業に取られれば、日本に新たな技術はない。(海外ではエンジニアの給与がもっと高いことが多いらしい)

  • 中小企業への支援が厚く新陳代謝がなされていない。効率的なビジネスができている企業の儲けを税金介して弱い中小企業に分配することは国全体の利益率を下げるし、成功している企業の研究費用を奪っている。

  • 国民が感情として個人への支援ばかり望まれて企業に投資が望まれない

などなど。。。 優秀な人材が日本に留まって仕事をしたいと思える環境整備が進むことを切に願います🙏


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