見出し画像

サイレントチェロを買った

チェロを習いはじめて1年と4ヶ月ほどが経った。今年の3月から5月の3ヶ月は外出自粛でレッスンが開講されなかったが、それでも1年以上も通い続けていることになる。

はじめたころはちゃんと続くのか自分でも不安だったが、楽器を弾くのは楽しいし、上達していくのは嬉しい。即物的な話だが、お金を払い、ちゃんと先生について習うのは、モチベーションの維持によく効くなあとあらためて思う。幸い、先生とも人間的に合わない、みたいなこともない。

とはいえ、月3回だと物足りないし、レッスン以外でも楽器を触りたくなる。そろそろ(いいかげん)マイチェロを買ってもいいんじゃないかと思って、サイレントチェロを買った。ようやくである。

*****

ごくごくふつうの一般人がチェロを買おうとなったときに、アコースティックにするかサイレントにするかは、めちゃめちゃ悩む選択だと思う。実際自分もめちゃめちゃ悩んだ。レッスンではアコースティックのチェロを使っているし、先生も「できるならアコースティック」と言っていた。この「できるなら」には無限の含蓄があって、値段のことだけではなく(もちろん値段もそれなりにいたします)、ご近所迷惑的に弾ける環境があるのかという話なのだが、これはふつうの集合住宅に住んでいる自分のような人間にはかなりむずかしい。アコースティックは音も振動(チェロは床に接地して弾くので、階下への影響を気にしなければならない)もかなりでかい。

サイレントチェロはその心配が、皆無とは言わないがだいぶ少ない。ボディがないので共鳴することがなく、振動も少ない。弾くとそれなりのボリュームで鳴るので、練習は問題ないし、ヘッドフォンも使える。しかし、一応電子楽器なので壊れもする。値段はチェロと比べると安い(と思うけど、あくまで練習用と考えると高いと思う人はいると思う)。

アコースティックかサイレントかという選択において大事なのは、「チェロを弾いてる感」だと思う。この「弾いてる感」が、サイレントはアコースティックに比べると薄れる、気がする。ヤマハの音楽教室では、以前はサイレントチェロでやっていたらしいのだが、やはりアコースティックの方が良いということでいまはアコースティックになっている。これも「チェロを弾いてる感」が重要なポイントなのだと思う。自分も、せっかくレッスンに通っているならアコースティックで弾きたい。

買う前に、ヤマハの銀座店に行ってアコースティックとサイレントを試奏させてもらった。連続して弾くと、けっこう違うことに驚いた。アコースティックは普段レッスンで弾いてるやつだという感じだったが、サイレントはだいぶ静かで身体への振動も少ない。それでもしっかりチェロの音が鳴るし、これなら家で練習できそうと思って、だいぶサイレントに心が動いた。店員さんも、レッスンでアコースティックを弾いているなら、サイレントでもいいのでは、と言っていた。ちなみにアコースティックに消音器をつけたのも試したのだが、それでもサイレントの音の小ささには敵わなかったし、消音器をずっとつけてると楽器自体が鳴らなくなってくるらしい。それはそれで困りものだ。

その後もウンウン悩んだが(これはそれなりのお値段がすることに対する躊躇)、エイヤで買いました。ヤマハのSVC110Sというモデル。フレームが付いていて、3モデルある中でもっともチェロっぽい形をしている。かっこよかろう。2CELLOSというチェロデュオはこの楽器で、時にはエフェクターも通してエレキギターのような使い方もしていて、かっこいいので聴きましょう。

これで自分も素敵なマイチェロライフを送れるのだとワクワクしていたのだが、実際に届いてセットアップし、調弦するところでつまづいた。A線(一番細い弦)を届いて30分ぐらいで切ってしまった。チューナーとにらめっこしながら「Aにならんなー」とペグを回しまくっていたら、ブツっといってしまったのである。絶望した。即A線を追加で買いに行き(チェロの弦は高い……)、再チャレンジするも、うまくいかずまた絶望。

これ以上はまた切ってしまうのではという恐怖でいかんともしがたくなったので、ヤマハ銀座店に持ち込んでチューニングを教えてもらった(要予約)。コツを教えてもらって、自分でも何本かやってみて、なんとか正しいチューニングになった。ありがたいことに工賃もかからず、死ぬほど申し訳なかったので、クロスを買って帰った。ありがとうヤマハ銀座店……。

*****

というわけで、整ったサイレントチェロで弾いてみた。最初はレッスンで使っているアコースティックと感覚が違うのでけっこう違和感があったが、音程を微調整したり、エンドピンの長さを調節したり、弓に松脂を足してみたり(これの塩梅もむずかしい)すると、だいぶいつもの感覚になってきた。さらに、ヘッドフォンをつけてみると、かなりアコースティックの音に近くなってすごく良いなと思った。音が近づいてくると、振動もくるような錯覚があって(悪い意味ではない)、よりアコースティックを弾いているときの感覚が再現される。ヘッドフォンをつけなくても練習できるなと思っていたが、これはこれでよくできていると思う。

チェロや弦楽器に限らず、ピアノもそうだと思うが、ヤマハの電子楽器に対する情熱には頭が下がる。いろんな人の、いろんな弾きたいに対して、最大限楽しめるような楽器を用意している。楽器メーカーなのだから当たり前だけど、音楽文化、支えたるで~という気概を感じる。

月3回、せいぜい1時間半から2時間しか触れなかったチェロに、これからは毎日触れるのだと思うと嬉しい。苦手なところやレッスンでできなかったところを、1週間、長くて2週間後にリトライする恐怖も、それ自体を忘れる(!)こともなくなるといい。高いインテリア買っちゃったなあということにならないように、毎日少しずつでも弾いていきたいと思う。やっていきます。

追記:サイレントチェロ本体以外にも必要なものいろいろ買ったので、そちらもまとめました。