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DX の心技体【9】変革・変化に対応するものを巻き込むこと(抵抗勢力に対するチェンジマネジメントも必要)

変革におけるチェンジマネジメントの意味?


今回着目すべきは、DXロードを進める過程で出現する「抵抗勢力」にも対応しながら変革を推進するにはどうすればよいのか、というテーマになります。そこで必要となる考え方やマネジメント手法についての話です。

Change Management」は、言葉としては誰もが聞いたことがあると思いますが、実のところ何をするものなのか?よくわからない!という方が多いのではないでしょうか。

これまで企業変革コンサルタントとして、チェンジマネジメントを伴うプロジェクトは多く経験してきましたが、その必要性や具体的な内容について理解を得ることが難しかった記憶があります。「プロジェクトマネジメント」と違って、確固たる方法論がない印象があることもそう思えてしまう要因になっているように思います。

チェンジマネジメントとは、変革を成功させるためのマネジメントのことを指し、変革を効率的に進めることや従業員の賛同を得ることなど、様々な観点からのマネジメントを行うことになります。

そもそもBPR(Business Process Re-engineering)がこれの基礎になっていると言われており、ERP(Enterprise Resources Planning)の導入、M&AにおけるPMI(Post Merger Integration)、業務・システムの最適化など、組織の変革手法として多く活用されています。テクノロジーの急速な進化に伴い、組織やビジネスプロセスの変革を行う際には欠かせないマネジメント領域だと言えるでしょう。

プロジェクトマネジメント + チェンジマネジメントを!

令和3年版の情報通信白書(総務省)には、「デジタル・トランスフォーメーションを進める上での課題」があげられています。この中には、「業務の変革等に対する社員等の抵抗」という課題も当然ながら上位に存在しています。

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/n1200000.pdf

具体的には、変革に対する抵抗勢力への対応(チェンジマネジメント)がうまくできず変革プロジェクトが失速してしまう。新しいことにチャレンジする企業風土・文化が醸成されていないなどの課題がありそうです。

オープングループが提供するDPBoK(Digital Practitioner Body of Knowledge)ではデジタルトランスフォー メーション成功の鍵として組織文化、ビジネスプロセス、製品/サービスなど7つの要素を挙げています。すべての要素において 同時に変革を進めていく重要性が述べられており、どの要素も欠かすことはできないとされています。


このようにDXの成功には、「X」(トランスフォーメーション)の部分に重きが置かれるため、変革推進のリーダーシップや意思決定の質とスピード、組織全体が同じ目標に向かって突き進む企業文化などがやはり重要になります。それに反して、これまでのやり方に慣れ親しんだ経営陣やその他の利害関係者が抵抗勢力となることが多々あるため、そうした人々を巻き込み、意識改革をどのように迫れるかが成功の鍵になるのです。

抵抗勢力の存在とその対応

こんなところでも、モンスター退治が必要!

DXを進めていく中で、こうした壁にぶつかる時があります。変革に抵抗する人やその意識をどう変えて行けばよいのでしょうか。

ボストンコンサルティンググループのコンサルタントであったジーニー・ダック氏は著書で、変革を妨げる要因のことを「チェンジモンスター」と名付けています。「チェンジモンスターとは、改革を妨害したり、かき回したりする人間的・心理的な要因の総称です。人間関係のもつれ、変わることへの怖れ・反発、喜怒哀楽・嫉妬・興奮など改革に伴うもろもろの感情を指します。」とされています。

チェンジモンスターには、いくつか種類があるとされており、「タコツボドン」や「ウチムキング」、「ノラクラ」、「マンテン」など、その名前からして想像できる解説もされています。まさにモンスターとは言い得て妙ですね。
それぞれのモンスターに応じた退治の具体的な対応をゲーム感覚で考えてみるのもまた面白そうです。感情的でなく戦略的・合理的なアクションが求められるのでしょう。

チェンジマネジメントの考え方

どうアプローチするか?

チェンジマネジメントとは、組織や人への働きかけにより、変革によるビジネスベネフィットを最大化する体系化された手法とも言えます。そのための方法論を理解し、状況に適した手順で進めていきたいところです。

変革におけるチェンジマネジメントの進め方!


チェンジマネジメントを実行する際には、あるべき姿や導入アプローチといったハード面の取り組みも大事ですが、それと同様に、人に働きかけるソフト面についても取り組むことが重要になります。全員が同じ方向を目指して進んでいけるように、個人の意識、行動様式、組織カルチャーといった人的側面にも焦点を当てたマネジメントを行う必要があるのです。

関係者を巻き込んで変革を進められるか?

具体的には、トップ・マネジメントのスポンサーシップ、ミドル・マネジメントへの権限委譲、組織のあらゆる階層で変革を促進する全体的な企業文化が重要になります。

チェンジマネジメントの展開方法

変革をマネジメントしよう!

チェンジマネジメントを体系的にみると、いくつかの要素に分解して取り組むことができます。変革価値の実現に係る戦略と評価、チェンジリーダ―シップ、組織デザイン・カルチャー変革、ステーホルダーマネジメント&コミュニケーション戦略などが主なテーマになります。

これらを体系的・戦略的に考えて進めていくことが肝要です。戦略的という意味は、選択と集中・メリハリをつけて対応するという意味もあります。どこに注力するかについてはプロジェクトの目的や課題を踏まえてそれぞれ考えておく必要があるでしょう。

チェンジマネジメントの要素!

多くのプロジェクトで共通的に有効な施策としては、ステークホルダーマネジメント&コミュニケーション戦略が見られます。

変革の利害関係者を理解・管理し、変革をコミュニケーションすることなのですが、各ステークホルダーの立ち位置や思考の状況を、意思決定等における影響度、変革に対する受容性の観点で把握し、ポジショニング分析をする(可視化)ことが非常に有効になります。

ステークホルダーマネジメント!

ポジションの異なるステークホルダーに対して、それぞれ適したコミュニケーション対策を図ることで、ステーホルダーの考えや行動に影響をあたえ、戦略的にポジション変動を促すことができます。ここに意味があります。


変革において対立する正義とは?

正義 vs 正義?

改めて、どうしていつも抵抗や抗争が生じてしまうのか?
多様化が進む世界の中で、そもそもの人の考え方の違いは当然ながら存在します。変化を好む人、安定を求めて変化を嫌う人、リスク愛好家。保守的な考え方を大事にしている人、革新的なアプローチを得意とする人など。同じ組織の中においても、立場の違いや背負うものの違いもあります。人生やビジネスにおいて歩んできた歴史がそれぞれにあり、時代背景や経験値の違いもあり、関係する人それぞれの考え方はそもそも一致する訳ではないでしょう。

多様な人間が集まり、異能の集団として強味を発揮することは歓迎すべきことです。それでもチームや組織として明確な方向性を持ち同じベクトルで進むことは、ロスが少なく効率的になります。個々の局面や具体的なアクションにおいては多様な考え方やアプローチがあったとしても、それについて議論を重ねた後で最適なものを実行することが求められます。

それでもなお、考え方や取り組み姿勢において方向性が違ってぶつかってしまう事態が多々発生します。そうした意見が対立する景色を客観的に捉えて見ると、根底にあるそれぞれが持つ「正義」の違いがあるように思われます。それもあってか相手の話をしっかり聞くこともなく、自分の主張に固執してしまう傾向もあるように思えます。

過去からの成り立ちや経緯、そもそもの価値観、各々の立場による視座・視点の違いから、それぞれが持つ(大切にしている)「それぞれの正義」があるということです。
勧善懲悪の世界観でみればどちらが正しいかを説明することは簡単ですが、どちら側から見たストーリなのか、誰を主人公と見立てた物語なのかによっては、違った風景・ストーリーが見えてくることもあるでしょう。

それぞれの正義と正義が存在しぶつかり合います。「right and wrong」の問題を解決することは難しくはありませんが、これはまさに「Right versus Right」なのです。そういうことが存在することを前提として、それぞれの立場の違いを理解しあい、ベースとなる前提や優先される価値観を相互に確認し合うことが、解決の第一歩になります。客観的に状況を見える化して、双方の意見の違いを整理した上で、進むべき方向や今とるべき方策について議論し、説得し合い、調整を図る必要があります。

変革・変化への対応についてのまとめ

日はまた昇る、夢をあきらめない!

現代社会はVUCAの時代の複雑で不確実な世界にあり、状況に応じて臨機応変な対応が求められます。ゼロトラストではないですが、内にも外にも敵もいれば味方もいます。今日の敵は明日の友になるかもしれませんし、その逆もあるでしょう。変革を流されずに進めるためには、進路を阻害する要素を避けたり、取り除いたり、逆にうまく味方に取り込んだしながら推進していく必要があります。具体的には、ステークホルダーに対するコミュニケーションをうまくとっていくこと、それによる変革を阻害する要素を少なくし、目の前の壁をうまく避けたり、壊すなり、逆にうまく取り込んで活用していくことがとっても重要なのです。

繰り返しになりますが、大きな変革には必ずと言っていいほど障害が発生します。それに対する対応次第で成否が大きく変わってしまうことを忘れてはいけません。

アニメ「クレヨンしんちゃん」のオープニングテーマ曲でもあった『希望山脈』(渡り廊下走り隊7)の歌詞でも力強く謳われています。
「生きてゆくことは 山を越えること」
「次から次へと 山々は続く」
「つまずいてしまったり 悩み苦しんだり」
「もがいて抜け出す それが人生さ」
人生坂ばかりだとしても、それが山脈の如くどこまでも続いていくものであったとしても、夢をあきらめなければ「希望の光」が見えて来ることを信じて前へ進んでいきましょう!


この先は、最終回となるNo.10の「組織力を上げること(横断組織、俊敏性、爆速、Agile)」と組織力向上の話へと繋がっていきます。


DXの心技体【10】は次の投稿で!

【再掲】DX推進の心技体(10選)

DXを進めるための心技体!
  1. まずは自分なりのDXを語ること(自身の言葉で定義してみよう)

  2. 未来ビジョンに向けたJourneyとすること(ありたい形、なりたい姿を追求する)

  3. 顧客志向で提供価値を表明すること(「ならではの価値」を提供しよう)

  4. 手っ取り早くデジタル武装すること(低コスト・短期間で効果を実感できるものがあります)

  5. Small Start で始めて、失敗と成果を積み上げて進めること(勇気を出して1歩踏みだそう)

  6. 最新技術・ソリューションをうまく活用し、新しいビジネスを作ること(デジタル技術の活用で経営課題の解決へ)

  7. 戦略的に考えてみること(シナリオ、プランを練って先を見据えて動こう)

  8. 気力・体力を維持し、流されないこと(絶えずゴールを見据える)

  9. 変革・変化に対応するものを巻き込むこと(抵抗勢力に対するチェンジマネジメントも必要)

  10. 組織力を上げること(横断組織、俊敏性、爆速、Agile)