フランケンシュタインを読んで※ネタバレあり

 散文で、しかもネタバレありです。すみません。


 私はこの物語についてあまり知らずに読み始めた。
 フランケンシュタイン=怪物ではないこと、作者が女性であることくらい。
 読む前に、この物語では怪物は言葉も持たず手当たり次第に暴れ出すのかと予想していた。怪物を作ったフランケンシュタインも、サイコパスで不気味な人間かと思っていた。理由としては、怪物を作ろうなどという怖い考えを持つ人は、雰囲気まで不気味なのだと私は断定づけてしまったから。

下記はキャラのまとめ
ウォルトン隊長
プロローグの語り手。遺産で探検をしている。フランケンシュタインとその怪物を発見する。
フランケンシュタインから怪物について聞くことになる。

マーガレット
ウォルトンの姉。

エリザベート
フランケンシュタイン家に引き取られた、良家の娘。内面も外見も美しく、純粋な人。主人公とは姪として育てられるが、将来はフランケンシュタインと結婚する予定。ウィリアムが殺され、ジュスティーヌが無実の罪で処刑されたことで悲観的になる。
ヴィクトルと結婚後、殺される。

ヴィクトル・フランケンシュタイン……怪物を作ったひと。裕福で、愛情深い両親に育てられた。博識。生死に興味を持ち、好奇心により取り憑かれたように怪物を創り上げた。ウィリアムを殺したのは自分が作った怪物だと確信している。
※ヴィクトルをヴィクターと訳す本もあるそうです。

ウィリアム
フランケンシュタイン家の主人公の弟幼い弟。ある日誰かに首を絞められ殺された。
ジュスティーヌ
フランケンシュタイン家で住み込みで働いていた女性。一家の母親を尊敬し、自身もその人に似た性格となる。人格者で、皆から慕われていた。ウィリアムを殺した冤罪を被せられ、絞首刑で死んだ。

怪物
フランケンシュタインが作った怪物。美しい肉体を寄せ集めて作ったはずが、醜く恐ろしい姿となる。『誕生』すると、フランケンシュタインの前から姿を消す。ウィリアムやエリザベートを殺した犯人とされる。作り手の博士から、愛されたいとねがっている。『失楽園』『ヴェルテルの悲しみ』『プルタルコス人物伝1巻』を読んで知識をつけ思考を広げた。

アンヌ
博士の友人。怪物を作ったあと、精神を病んだ主人公の療養を手伝った。

フィリクス
怪物が潜んだ家屋の住人。いつも憂鬱そう。アガータの兄

アガータ……怪物が住んだ家屋の住人。フィリクスの妹。

サフィー……トルコ人。フィリクスの家に住むことになった、商人の娘。もとはフィリクスの恋人



読んでいく中でヴィクトルは周りから愛され、自身も周りの人間を大切にしていることがわかった。家も裕福で、学もあり何不自由なく暮らしていた青年。

なのになぜ怪物を作ったのだろう。ありあまる好奇心と知識で、ヴィクトルは気をおかしくしながら怪物が出来てしまった。

満ち足りた生活を送っていると、失敗を予測できないのだろうか。ただ成功できる、自分が予想したとおりにうまくいくはずだと、ヴィクトルは判断してしまったのかもしれない。

怪物は見た目は醜いけれど、愛されたいと願っていた。けれども、怪物は醜いから、あいされることも、誰かと会話することもままならなかった。

愛されたいという、この怪物の願いは、人間らしいと思う。怪物がそういった願いを最初に持ったのは、ヴィクトルが作ったからだろうか。愛情を与えられ育ったヴィクトルから、愛情も何も与えられないまま育った怪物は、3冊の本で己の心を構成し他者とのコミュニケーションも図るも失敗。すべては彼の醜さによる。会話を試みる前に拒否されてしまう。

怪物は、とにかく壊したいだとか、何か恐ろしい考えを生まれながらに持っていたわけではなかった。怪物は誰かに受け入れられたくても拒否されて、純粋だった心がどんどんゆがんでしまった。そして凶行に及んだのだ。

ものすごくやるせない物語だ。
もし、ヴィクトルが怪物を作る前に止めることができたら。
怪物が誰かに受け入れられていたら。
『愛情』ということばを、考えてしまう物語だった。

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