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畝り

僕は君に成りたかった。
今でも考えたりしてる。

水面に映るあの日。
心が汚れても涙は、
透明なままだった。

重ねた夢の先、雨降る春の陽気。
向かい風に背中を押される海沿。
擦れ違う人は色んな笑顔だった。

辿り着いた江ノ島水族館、
意外と人が多くて少し怖かった。
壊れた傘を片手に階段を降りた。

何処にも居ない自分を久し振り見た。
心だけが暖かくなって、溶けていく。
あの時間の中なら眠られる気がした。
心だけが遠くを眺めて、泳いでいく。

音楽をやっていない自分が好きだ。
音楽をやっていない人も大好きだ。
そうだった、笑えたらそれでいい。

目の前には昨日の足跡。
歩幅はあの頃のままで、
大人にも成れなかった。

僕を逃してくれてありがとう。
どうかずっと笑っていてくれ。
どうかずっと息を続けてくれ。

夜を跨ぐ度に失うんじゃなくて欠けていく。
肌触りの悪い繋ぎ目ばかりが癒えないから、
落ちた視力で君の声をいつまでも探してた。
色違いの夏、茹だる三月の香りと相模大野。

誰にも言えない日々と壊れたままの心。
僕が死んだら部屋の花瓶を割ってくれ。
誰かに紡ぐには、頼りも不甲斐も無い、
紫色に染まった空を隠してある。

僕は君に成りたかった。
今でも考えたりしてる。

僕は君に成りたかった。
君と同じ煙草を吸いながら、
墓前で今日も昨日の話をする。

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