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野良

2017年8月23日。 俺は、俺達はバンドマンだった。 あの日、 生まれて初めてバンドマンを名乗った。 なにかを成し遂げたわけでもなく、 音楽で飯を食べてるわけでもなく、 友達以外に評価されるわけでもない。 "バンドマン"をステータスにする事が、 "恥"だと感じている毎日に生きていた。 2015年の夏の事。 そんな毎日の終わりは突然で曖昧に訪れた。 病気には勝てなかった。全て失った。 心を取り合った人間も仲間も友人も。 それでも最後にもう一度だけ、 約束を果たす為に

    • だから私は答えを知らない

      私は、彼の日とあの人に囚われている。 それは目を伏せてしまう帰依のような、 とても綺麗で何よりも惨めな物である。 涙と膵液が言葉より先に滴下して 少しずつ、命を否定していくのだ。 何歩足りなかっただろうか。 指を折れば数え切れたのか。 都度考えては悔恨に溺れる。 祈り、芽生え、驕り、慈しみ、 晴れては流れ、紐解くは自殺。 だから私は、答えを知らない。

      • 枯れた融点

        大騒ぐ程に久々でも無い故郷の排気ガスは どんなに透き通った空気よりも美味かった。 大嫌いな喧騒も快速急行も更ける夜も 自分以外が生きている事に心強かった。 大好きなラーメン屋の店主は 相変わらず耳が遠くて安心した。 久し振りに会った人達に 久し振りって言われない事が嬉しかった。 まるで昨日の続きみたいに 最後の会話の続きみたいに くだらない話で笑い合えた。 音楽から離れて 音楽に触れた話。 若さ故だろうけど鋭く尖ってたあのバンドは ラブソングばっか出してから集客が

        • 祈りは届かない。

          才能は枯れる。 朝日とすれ違った子供の駆け足よりも早く。 携帯電話を頼りに言葉を伝える事が増えて、 文字を書く時に漢字を思い出せなくなった。 面倒が勝って心に名前を付ける事が減って、 手紙を書く時に感情を乗せられなくなった。 出来るだけ 出来るだけ暗い所へ歩いた。 傷の上に疵を塗って 疵の上に塩を塗って、 痛いだけなら 思ってたより簡単に慣れた。 自分の呼吸も上手に整えられない人間が、 誰かと歩幅を合わせて眠れるわけがない。 気付いたら死んでるはずの年齢に成った。 あの

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          優しさばかりが。

          どうやら、二日半ほど意識が無かったらしい。 最後の鮮明な記憶を辿っても正直曖昧なので、 ざっくり三日ほど意識が無かった事にしとく。 不明瞭な一ヶ月を過ごした様な気分。 窓辺の花を未来に託して、嗚咽感嘆。 半透明な一年間を振り返り、大泣き。 やっぱり、誰の為にも成れなかった。 「どうやらライブをしたみたいだ」 それくらい記憶が曖昧で体が痛い。 なにかを伝えたかったんだけどな。 忘れた内容も思い出せないくらい、 左手と脳味噌の痺れは加速してる。 楽しかった気がする。ものすご

          優しさばかりが。

          祈り

          この一週間、珍しくご飯を食べています。 否、毎日のように食べさせられています。 自分の事、家族の事、友達の事、命の事。 目に見えない自傷も全て気付かれていて、 誤魔化したくてやたらツイートをしたり、 寂しい感情を覚えてツイキャスをしたり。 結局誰にも頼れなくて涙の行き場も無い。 矢張りあれから毎日、心が消耗している。 少しずつ良くなったつもりで居た自分が とても恥ずかしい、早く死んじゃいなよ。 血は吐かなくなったし、 白い下痢も出なくなった。 9キロ痩せた体重は1キロ増

          帰依

          「どうにかなった」が 終着点じゃなくて中継点の時点で 人生はもう終わってんだって話。 あとは這い上がるだけとか、これからの事とか そんな能天気な事を言う精神じゃなくて、 もう終わってんの。わかる? 上とか下とかそういう次元に居ないわけ。 死ぬまでずっとその繰り返しなんだろうなって 25歳の時に気付きながら傷だらけの毎日を過ごして 目に見えないハッピーな未来を提示してくれる 周りの人間の言葉に話半分で耳を傾けて 自己暗示っていうか自分への信仰で生きてみたけど 目に見えない

          五月十五日。

          夏みたいな暑さと相模大野。 失くした物を数えていく程、 自分の指の少なさに呆れる。 覚えやすい名前をした建物。 どんなセンスしてんだって、 笑い合った日々は無かった。 鼻を突いたあの日の匂いを辿って、 見づらい角を曲がれば君が居た街。 轍は記憶と一緒に取り壊されてた。 五月十五日。 夜が眠りに着いた頃、喘鳴が響く。 何かの誰かに成りたかったのか? 誰かの明日に成りたかったのか? 見慣れた景色にも不安を抱えて、 成りたかった自分は居なかった。 君が眠りに着いた頃、嗚咽が

          五月十五日。

          目の裏側

          隠してる事はバレてないけど、 バレてないと思ってる事はバレてる。 君もそう、だから僕もそう。 「嘘をつけない」って、 嘘をつき続けて生きた。 「思った事を口にしてしまう」って、 思ってない事を口にし続けて生きた。 気付いたら人の嘘を知らん振りしてた。 気付いたら思ってない言葉を飲んでた。 右目であの日の夢を見て、 左手で日記を書いた夜も、 誰にも話せなかったから、 一人二脚で今日も転んだ。 愛しても、恨まれても、 誰にも愛されなかった。 誰かを憎めなかった。 言葉

          目の裏側

          忌憚

          「誰かに光を見出せたのなら、 自分の目の奥が光ってるかもしれない。」 今日も下手くそに生き延びた。 ずっと苦しくて、笑えなくて、 溜息だけが呼吸の助けだった。 耳の奥で雨が降っていた晴れの日。 夜行列車は心まで運んでくれない。 話せない事が年齢の数だけ増えて、 話したい事ばかりが涙に変わった。 誰と過ごしても夜の長さは変わらなくて、 明日もその先にも、これからの世界には、 貴方だけが何処にも居ない。いつまでも。 人を失う事、人を亡くす事。 過去に変わる事、思い出に成る

          畝り

          僕は君に成りたかった。 今でも考えたりしてる。 水面に映るあの日。 心が汚れても涙は、 透明なままだった。 重ねた夢の先、雨降る春の陽気。 向かい風に背中を押される海沿。 擦れ違う人は色んな笑顔だった。 辿り着いた江ノ島水族館、 意外と人が多くて少し怖かった。 壊れた傘を片手に階段を降りた。 何処にも居ない自分を久し振り見た。 心だけが暖かくなって、溶けていく。 あの時間の中なら眠られる気がした。 心だけが遠くを眺めて、泳いでいく。 音楽をやっていない自分が好きだ。

          大丈夫

          気付けば数ヶ月キッチンに立ってなかった。 独りで生きていると外食か空腹で夜を越す。 俺はチョコが食べられない。 甘ったるさが舌根にまで残る感覚が苦手だ。 けど凍らせたホワイトチョコは食べられる。 理由はわからないけど味覚が受け入れてる。 最近、お湯を飲む事を習慣付けている。 目的はカフェインを少しずつ抜く事と、 なんというか飲むと"ほっ"とするのだ。 適当な時間に飲むようなってしまった 大量の向精神薬、抗鬱剤、抗不安薬を、 段ボールで買い溜めているコーヒーで 流し込んで

          大丈夫

          折紙

          誰かの為に在る事が先ず間違いだと もっと意思を強く持って立てたなら 誰も悪くないよって笑えてたのかな。 全てを奪われた夜だった。 自棄になって酒も飲んだ。 電話越しに大泣きをした。 「そんな自分は捨てよう 忘れなくていいから」 慈しみの中に籠る暖気にまた涙を流した。 潰れた喉から漏れる嗚咽に無様を覚えて、 藪の薬で君と一緒に偽物の眠りに就いた。 見えない物ばかりを信じて 怪我をし続けたのは誰だ? 撒いた種を不幸と名付けて 摘まずに溺れたのは誰だ? 明日の事なんて考え

          真白

          不眠、不安障害、パニックを繰り返している毎日。 自分の心だけがあの夜に生きている。 自分の体だけが思い通りに動かない。 全てを疲弊して全てが磨耗している。 長くは無いと思う。 何が?今あなたが考えたそれが。 もう出来る限り約束は控えよう。 守れる分だけ、果たせる分だけ。 目を瞑って深く息を吸う。 見えた風景を映しているのは 映った景色を見せているのは 頭の中なのかな、目の裏側なのかな。

          佳処

          「佳処」 「なにしてた」って聞かれたら なにもしてないし 「愛してた?」って聞かれたら 人よりも愛してた あれから、この部屋の変わった所と言えば 叶わなかった夢の数だけガラクタが増えて 踏み潰された心の数だけ時計の針が進んだ 窓辺、暖かい悲しみを吐いて 片目が潰れた野良猫と頰を寄せ合った 何処に居たって聞かれたら ずっと此処に居たし 信じてた?って聞かれたら "明日"より信じてた ハサミで切ったのに粉々に砕けて 「もういいや」って全部 口に入れた 窓辺、暖かい悲し

          仮令

          身重な野良猫が踞るように、 毎回、同じ所で手が止まる。 愚かな行為だと解りながら、 解ってる、と口にするだけ。 一番嫌悪を抱いている人種に似てきた。 "窓辺にて 温い露霜 宙を舞う" 孤独に勝てるなら本当は貴方なんて要らない。 孤独に慣れる夜を本当は探してた。気がする。 涙も日常もいつまでも流れてくれ。 止まるのはあの日の僕だけでいい。 夕焼の中で笑っていた貴方の鼻歌。 遠鳴は耳鳴に変わり、 耳鳴は幻聴へ変わる。 醜い僕だから存在の確認なんて、 水溜りに映る形で構