枯れた融点
大騒ぐ程に久々でも無い故郷の排気ガスは
どんなに透き通った空気よりも美味かった。
大嫌いな喧騒も快速急行も更ける夜も
自分以外が生きている事に心強かった。
大好きなラーメン屋の店主は
相変わらず耳が遠くて安心した。
久し振りに会った人達に
久し振りって言われない事が嬉しかった。
まるで昨日の続きみたいに
最後の会話の続きみたいに
くだらない話で笑い合えた。
音楽から離れて 音楽に触れた話。
若さ故だろうけど鋭く尖ってたあのバンドは
ラブソングばっか出してから集客が増えてた。
SNSの使い方が下手な奴は
演奏も会話も何もかも下手。
やたらとレターボックスを付けて
明朝体でダサい歌詞を載せるMV
中途半端な美女風のブスが出るMV
酒とタバコとセックスの歌詞はもうええて。
色とか地名を曲名に添えるのはもうええて。
音楽で救いたいとか
音楽に生かされてるとか
思うのは勝手だけど押し付けられても。
音楽は不変不動でずっと其処にある物だろう。
都合の良い時だけ縋り付く癖に武器にするな。
其処に身を置いている事をステータスにするな。
思考を言葉に出来る人間で在る事を
伝える手段が言葉だけじゃない事を
それが出来る事を誇って欲しかった。
毎日ふと考える貴方の事
毎日のように夢に見る君の事。
そんな事を人の声と車の音が
「相変わらず此処はうるせえ」
って忘れさせてくれる故郷が大好きだ。
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