組織で揉め事が起こった時に考えるべき3つの視点
こんにちは。
㈱ヒューマンリソースマネジメント研究所
なつカウンセリングルーム 代表
土肥なつみです。
「人生を彩る居場所をつくる」を企業理念とし、
起業研修・カウンセリング・人材育成コンサルティング等を行っています。
私の自己紹介はこちらのマガジンをご覧ください。
皆さんは、自分の職場で揉め事が起こったとき、どんな風に対処していますか?
同僚同士だと仲裁に入ってお互いの話を聴こうとするかもしれないし、
もしあなたがマネジャーの立場だったら、チームの生産性が低下するリスクもありますから放ってはおけませんよね。
今日は職場の中で揉め事が起こった時、解決に当たって持つべき視点とその対処法について記事にしていきたいと思います。
チームを束ねるのに苦戦しているマネジャーの方にも、上司や同僚との関係に悩んでいる方にも是非読んでいただきたい内容です。
(この記事を読み終えるまでの時間:約12分)
揉め事がなくならない職場の共通点
人間が一つの場所に集まっている以上、多少のトラブルは起こって当たり前です。
ですが、色んな職場を見ていて思うのは
いつも何かと揉め事が起こっている職場もあれば、多少の揉め事はあってもすぐに立ち直る職場もあるということです。
この二者の違いは何だと思いますか?
それは「解決スピードの違い」です。
一つの揉め事(トラブル)の処理に時間がかかっていると、新たなトラブルが起こった時に対処がより複雑になってきます。
小さな不満から大きなトラブルまで、溜まった不満は時に新たな揉め事を生み、“常に誰かが揉めている”職場環境になりがちです。
過去の記事でも書いたかもしれませんが、“常に誰かが揉めている”状況が当たり前になってくると、当事者が退職などでいなくなっても、メンバーは自然と「次の当事者」を探し始めます。
これは、人間に備わっている「恒常性(ホメオスタシス)」という心理が関係してるのではないかと思っています。
恒常性とは、もう少し簡単な言い方をすると「今の状況(状態)を維持しようとする心の働き」のことで、これがあることで“常に誰かが揉めている状況”を維持しようとするのです。
少し話が逸れましたが、解決スピードが遅いことでこのような状況に陥ってしまうことがあるのです。
ですから職場の中で揉め事が起こったら、なるべく早いスピードで解決することが求められます。
次の章では、そのために必要な視点と対処法について解説していきます。
揉め事が起こった時に考えるべき3つの視点とその対処法
①システム
まずひとつめは「これはシステムの問題ではないか」という視点です。
例えばオフィスの中で
「アイツはいつも共有ロッカーの中をぐちゃぐちゃにしていく!」
という不満があったとしたら、それは整理整頓しないアイツが悪いのではなく、
・何をどこに置くかが決まっていないこと
・使用した共有備品はいつ、どのタイミングで返却するか決まっていないこと
などが問題である可能性があります。
私が過去に携わったとあるプロジェクトの中で、こんな出来事がありました。
そのプロジェクトは3つのチームに分かれて活動していて、月に一度、リーダーだけが集まって進捗状況を共有していました。
メンバーはみな、他に仕事を持ちながらプロジェクトに関わっています。
そのチームリーダーのひとり、Aさんはいつもチーム内の不満を漏らしていました。
「メンバーが6人もいるのに動いているのは実質私とBさんだけよ!!」
「私だけに負担がかかりすぎてしんどい!!」
「もっとメンバーを増やして欲しい!ちゃんと活動してくれる人を呼んできて!」
チームメンバーの編成が変わっても、Aさんの不満は収まりません。
数年にわたって、「みんな動いてくれない」と嘆いていました。
Aさんの話をよくよく聞いてみると、本当に必要なのか分からないファイルを大量に作成していることが分かりました。
会議で内容を共有するためだけに存在している資料、
その資料を作るための会議、さらにその会議で投影するための資料...
書いていても何が何だかわからなくなりそうですが、とにかく
「仕事のための仕事」「会議のための会議」「資料を作るための資料」
が大量に存在し、その作成に毎日朝から晩まで追われているというのです。
もちろんですが、メンバーは疲弊し毎年大量の入れ替わりが発生していました。
繰り返しになりますが、プロジェクトメンバーはみな“他に仕事を持っています”。
ここでAさんがすべきことは、メンバーの士気を上げさせることでもなく、時間のあるメンバーを投入することでもなくシステムを変えることです。
仕事をしながらプロジェクトに関わっているメンバーが、どうやったら楽に仕事をこなせるか。
(楽というのは手を抜く、ということではなく、仕組化・ルーティン化・簡素化できるものはどんどんしていく、という意味です)
先程の共有ロッカーの例なら
・それぞれの置き場にテプラを貼り付ける
・ロッカーのレイアウトを図や写真などで示す
・使用ルールを明確にする
などがあるでしょう。
今ある従業員同士のもめ事に「システム上の不備」がないかという目線で一度確認してみて下さい。
②とらえ方
2つ目は「これはとらえ方の問題なのではないか?」という視点です。
同僚の仕事のやり方が自分とは違う、
新しい上司の考え方・やり方が気に入らない、
〇〇は△△であるべきだ!というもめ事です。
特に3つ目の「~べき」というのはアンガーマネジメントの中で「コアビリーフ」と言われる考え方で、みんなそれぞれ色々なコアビリーフを持っています。
・上司はメンバーの誰よりも身体を張って仕事をするべきだ!
・出勤時間ギリギリに来るなんてありえない!
・折返し対応は〇時間以内にするべきだ!
一生懸命に仕事を頑張っているからこそ、こだわりが出てくるんですね。
そのこだわりを持つこと自体は悪いことではありません。
私の好きな言葉に、こんなものがあります。
大局さえ見失わなければ大いに妥協してよい。
徳富 蘇峰(とくとみ そほう)
会社・組織が存在する目的は
より良い商品やサービスを提供することで利益をあげることです。
法令違反や就業規則違反、ハラスメントは言語道断ですが、上記の目的のためならどんな道を通ったって良いわけです。
捉え方が違うことであまりにも業務に支障が出ているというのであれば、それは①システムの問題です。
組織の中でルール化してしまえば良いのです。
今やっている仕事の目的に一度立ち返ってみてください。
③特性
3つ目は少し難しい問題ですが、
「その人の持っている特性の問題なのではなか?」という視点です。
キレやすい人、
明らかに余計な一言を言ってしまって部下や同僚を傷つけてしまう人、
仕事の飲み込みがあまりにも遅くて周囲から疎まれている人、
それらは本人の持つ「特性」の可能性もあります。
特性についてはこちらの記事が参考になります。
大切なことは、相手を型にはめたり診断することではなく、
その人がどうやったら働きやすくなるように環境を整えることです。
私はすごく目が悪くて、コンタクトを外したら0.1以下になり本当に何も見えなくなります。
自分の力で視力を上げることはどう頑張ってもできません。
もし、眼鏡やコンタクトがない世界なら私は障がい者だったかもしれません。
でも、眼鏡やコンタクトを付ければ、例えば車を運転したりテレビを観ることが出来るわけです。
それと同じように、相手が持つ特性を理解して、その人たちが働きやすい環境を整えるのです。
いくつか事例をあげてみます。
飲食店時代に一緒に働いていた先輩で「全くやる気のないヤバいヤツ」と周囲から散々言われていたCさんという方がいました。
飲食店は計画通りに営業が進まないことがほとんどですので、責任者は常に状況に応じてスタッフたちに指示を出していかなければなりません。
ピークタイムの終わり際にスタッフたちから「Cさん、これからどうしますか?」「Cさん、今から何したらいいですか?」と言われても
「うーーーーーん…」
と唸るだけで一向に指示が飛んできません。スタッフたちもカンカンです。
見かねたマネジャーが巡回にやってきて、同じように
「おい!これからどうすんだ!」
とハッパをかけても同じです。
「えーーーーーと…うーーーんと…」
と言うだけで一向に指示が出ません。
Cさんは同僚から次第に馬鹿にされるようになっていきました。
そんなCさんですが、私がCさんに
「Cさん、これから〇〇をやるか、△△をやるか悩んでるんですけど、どちらをやればいいですか?」
と尋ねると
「△△をやってください」
と答えてくれました。
この違いはなんだと思いますか?
刻一刻と変化する環境の中で、
「どうするんだ!」
「何すればいいですか?」
というオープンな質問を投げるとCさんはパニックになったり、頭が真っ白になってしまう特性を持っていたのです。
私たちだって、そういう時ありますよね?
それを
「〇〇か、△△か、どちらですか?」
というクローズな質問にすることで答えやすくなったということです。
ちなみにCさんにこの手法で質問をし続けると
「いや、その2択よりもこっちだな」
と自分の意見も言ってくれるようになりました。
もう一人、
こちらも飲食店時代に一緒に働いていた方で、こちらの作業指示通りになかなか動いてくれないパートさんが居ました。
反抗している訳ではなく、こちらの指示を覚えきれていないようでした。
3手先の作業指示を出すと、全て忘れてしまいます。
この方の場合もCさんと同じで、状況が目まぐるしく変化する中で一気に指示を出すとパニックになってしまいます。
なので、指示は1手先だけにしました。
その作業が終わったら、また1つ。それが終わるころにまた1つ。という感じです。
可能であれば完了報告をお願いすると良いでしょう。
(それも難しければこちらから「終わりましたか?」と声をかけます)
視力が悪いことは障害ではなく、怠けているわけでもなく「特性」です。
それと同じように、仕事やコミュニケーションにおいても一定の特性を持つ人はいます。
その人たちが働きやすくするよう配慮することは「差別」でも「優遇」でもなく「環境調整」です。
メガネをかけて車を運転していて「ずるい」と言う人はいませんよね?
まとめ
いかがでしたでしょうか?
もめ事、と言うとつい相手の人間性にフォーカスされがちですが、そのほとんどがシステムやとらえ方、特性の問題であることが多いです。
是非、一歩“引いて”考えてみてください。解決策が見つかるかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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