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育成が得意」だからこそ陥る、「育成」の落とし穴

こんにちは。
㈱ヒューマンリソースマネジメント研究所
なつカウンセリングルーム 代表
土肥なつみです。

「人生を彩る居場所をつくる」を企業理念とし、
起業研修・カウンセリング・人材育成コンサルティング等を行っています。
私の自己紹介はこちらのマガジンをご覧ください。

さて、今日はあえて「育成が得意だ」と思っているベテランのマネジャー・管理職の方に向けて記事を書きたいと思います。
こういった方々は何百人単位での部下育成の経験値があり、それなりにたくさんのトラブルも乗り越えて来られたことと思います。

そんなベテランだからこそ、育成をする上で気を付けていただきたいことがあります。
育成経験豊富な方はもちろん、育成を任されたばかりの方にも是非読んでいただきたい内容です。
(この記事を読むのにかかる時間:約6分)


それ、本当に「見抜けて」ますか?

職場でのトラブルを共有するディスカッションの中でこんな場面に遭遇しました。

若手のマネジャーさんが職場で起こっているトラブルについて先輩社員に相談しています。
「Aさんに何度言ってもなかなか仕事を覚えてくれなくて…」
「Bさんの遅刻が相変わらずなくならなくて…」

それに対して先輩社員は
「Aさんはこういうタイプだからね~」
「Bさんにはこういう仕事は向かないタイプだよ」
「Cさんはこういうところあるから言っても無駄だよ」

アドバイスしていました。

先輩は出世街道に乗るベテラン社員。今まで多くの育成経験を持っているので、事例のストックもさぞかし溜まっているのだと思います。
皆さんも、後輩に対してこんな風にアドバイスすることはありませんか?

しかしここで気を付けていただきたいことがあるんです。
AさんもBさんもCさんも、本当にそうなのでしょうか?

「〇〇さんはこういう人だ」というように人をカテゴライズするという行為は
人間の普遍的な本質であると言われています。
(本当はどうか分かりませんが、日本人は特にその傾向が強いそうです)

その理由は簡単で、「不安」だから。
人は、全く理解できない相手に対して不安を感じるので、
「この人は〇〇な人だ」
「この人はこういうタイプだ」
カテゴライズすることで相手を理解した気になり、不安を抑えようとします。
そう、人をカテゴライズするというのは不安から来ているんですね。

私自身、飲食店の現場で800人以上の新人育成に携わってきましたので、
ある程度似た感じのタイプの人には出くわすことがあります。
ですがあくまでもそれは“似ている”と自分が判断しているだけで、その人の傾向や中身というのは実際に仕事ぶりをみたり、話を聞かなければ分からないことなんです。

人材の育成や組織づくりに慣れてきたからこそ、人間がもつ「人をカテゴリ分けしたい」という特性を理解し、まっさらな気持ちで目の前の相手を理解しようという無知の姿勢が求められます。

大事にしたい「無知の姿勢」

この「無知の姿勢」というのはカウンセリングにおいても必要な態度だと言われています。
カウンセラーと言うと、クライエントにアドバイスをする、というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実際はその逆です。

これは心理療法のひとつ、ナラティブセラピーによって提唱され、
カウンセラーは専門知識に基づいてクライエントの経験を解釈するのではなく、クライエントに対しては無知であり、学ぶ立場としてクライエントを理解していく姿勢が求められます。

具体的には、クライエントが
「最近親友と上手くいかなくて、ショックを受けているんです」
と相談してきた場合、

「このクライエントは終始礼儀正しいし、かしこまった言葉遣いをするから、きっと真面目でちょっとしたことでも思いつめてしまうんだろうな~」
と解釈することは、過去の経験などからカウンセラーが勝手に解釈したことになります。
先程のカテゴライズにも通ずるものがありますね。

しかし、この段階ではまだ何も聞けていません。

上手くいかないって、具体的にはどういうこと?
何か決定的な出来事があったのかな?
その時、親友とどんな会話を交わしたのかな?その時どこにいて、何をしている時?
ショック、ってどういうことなんだろう?

他にも色々視点があると思いますが、こういった視点を持ちながら話を丁寧に聞いていき、クライエントの感情や認知を理解していくことが求められます。

私は読書が好きなのですが、カウンセリングは読書に似ているなと感じることがあります。
その人の語るストーリーを聞き、登場人物の気持ちに思いを馳せたり、情景を思い浮かべたりすることは物語を読むのに似ています。

話を戻しますが、人材育成についても同じです。

先程の例でいくと
「Aさんに何度言っても仕事を覚えてくれない」
という話がありました。

・それは何を教えている時?
・どんな風に説明したの?
・その時の職場の状況は?
・Aさんはどんな表情をしていたの?

・こちらの説明が分かりにくいのか?
・物事を理解するのに元々時間がかかる人なのか?
・学校や家庭で何か辛い事があったのか?
・疲れているのか?
・信頼関係が取れていないのか?

…などなど、いくつも仮説を立ててアプローチしていくことが必要です。

誰一人として同じ人はいない

800人以上の新人育成に携わってきて思うのは、今まで、誰一人として全く同じ人はいなかったということです。
使い古された言葉のように思いますが、現場に立つとそれをひしひしと感じます。

先程申し上げたように、私たちは知らず知らずのうちに人をカテゴライズしてしまっています。
私も、スタッフのことは「こういうタイプなんじゃないか」と無意識にカテゴライズしてしまうこともあります。
ですが、じっくり関わっていくにつれて、実はそんなことはなかった、こんな素晴らしい一面があったという場面に幾度となく遭遇してきました。

何百人、何千人を育成しても、いつも新たに出会うスタッフとはまっさらな気持ちで関わる、それをこころがけたいものですね。


最後までお読みいただきありがとうございました。
弊社ではコミュニケーションを中心とした企業研修、人材育成コンサルティング、社内相談窓口代行を行っております。
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