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065 現実を直視すれば未来が変わる


ダニング=クルーガー効果

今回は、コンサルタント、コーチ、カウンセラー、または営業マンなど、「支援者」が陥りやすい「認知バイアス」を説明する

人間にはたくさんの認知バイアスがあるけど、その中で「ダニング=クルーガー効果」は支援者にとって最も自覚すべき認知バイアスだと思っている

ダニング=クルーガー効果のイメージ

ダニング=クルーガー効果は次の4つの段階で説明される

  • バカの山:要するに「根拠の無い自信」段階。無知な人ほど自信があることが実験でも分かっている

  • 絶望の谷:少し知識を得ると、今まで自信満々に的外れなことを語っていたことに気づき、次第に自信を失う段階

  • 啓蒙の坂:学習が進むことにより、徐々に自信を取り戻す段階

  • 継続の大地:周囲から評価されるに従い、実力に見合った自信を持つ段階

先ほど「これを自覚できない支援者は致命的」と言ったけど、上の図と解説を見れば何となく分かるんじゃないかな

支援先にデタラメを教えて被害を与える可能性があるからね

だから支援者だったら「継続の大地」とまでは言わないけど「啓蒙の坂」には達してもらいたいと思っている

そうそう、注意点がある

誰でも4つの段階が分野ごとにいくつも含まれていることだ

例えば、物理学においては「継続の大地」だけど、文学においては「バカの山」みたいにね

すべての分野で「継続の大地」にいる人なんて地球上に存在しないってこと

従って、自分の専門分野だけでも自分がどの段階にいるのか自覚し、認知バイアスに囚われないようにするしかない

自己中心バイアス

自己中心バイアスは、その名のとおり自己チューな言動をしてしまう心理傾向のことで、それに囚われると次のような発言をしてしまう

  • 「覚えたての専門用語」や「根拠の怪しい聞きかじり」を、相手に伝わるかどうかか意識せず、場の空気も読まず、口にする

  • 相手に役に立つかどうか、相手のニーズに合っているかどうかを無視して、我田引水な提案をする

  • これらについて根拠を問われると、自分しか知らない体験談や事例を語りだす。その際、相手がどう思うかは頭にない

見ての通りバカの山段階で起こりがちな認知バイアスである

確証バイアス

確証バイアスとは、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集めてしまう傾向のことで、簡単に言えば「偏見」のことだ

皆さんも次のような言動をしたり、見たりしていることだろう

  • 性別、世代、国籍、血液型などを基に「あの人はこういう人」「あの集団はいつもこう」と決めつけ、それを後押しする根拠が見つかると「やっぱりね」と偏見を強化する。それを反証する事柄に出会っても目に入らない、または頭に残らない

  • 「偏見」を語っていることを自覚せず、自分の意見に同意する相手は理解力があり、同意しない相手は理解力に乏しいと評価してしまう

  • 対話の際、相手の意見に対して持論が浮かび、抑えきれず尋問や詰問をしてしまう

根本的な帰属の誤り

「根本的な帰属の誤り」とは、相手の置かれている状況を無視し、その者個人の資質のせいにする心理傾向のこと

ちょっと大げさだけど「クレーマー」は、その過激な現れじゃないかな

例えば、次のように帰属の誤りが考えられる

  • 性格に帰属:営業成績が上がらない担当に対して「あいつは内向的だから…」と結論づける

  • 努力に帰属:営業成績が上がらない担当に対して「努力が足りない」と結論づける

  • 能力に帰属:営業成績が上がらない担当に対して「能力不足だ」と結論づける

当たり前だけど、営業のような「相手のある話」は、こちらの性格・努力・能力だけでどうにかなるものではない

もちろんこれらは重要な要素だけど、会社の営業戦略が的外れな場合もあれば、その営業マンがプライベートな悩みを抱えており力を発揮できない場合だってあるだろう

相手の置かれた状況を無視してしまうのは認知バイアスだから意識して相手の背景を知るようにしなきゃね

正常性バイアス

正常性バイアスは、特定の状況や出来事を「普通」や「正常」なものとして見てしまう心理傾向のことだ

ちなみに、情勢変化を無視する点で似ている「惰性」と混同する人がいるけど、この二つは根っこが異なる

惰性は物事を変えることに対する抵抗であるのに対し、正常性バイアスは新しい情報を無視する心理傾向である

「新しい情報」や「異なる視点」を軽く扱い、結果、将来を過度に「楽観視」するっこと

次のような言動があるなら、このバイアスに囚われていると言える

  • 顧客が「ここ最近売り上げが厳しくて…」と言ったら「この業界はみな苦しいですよね」と「一般化」してしまう

  • 年々売上が落ちているのに、オールドビジネスのまま「景気が回復すれば…」「外国人観光客が来れば…」と「楽観的な予測」をする

  • 10年前の成功法則を今でも疑わず、新しいやり方を見ても、10年前のフレームで解釈する

認知的不協和

さて、五つの認知バイアスを紹介したけど、これらはどうやったら克服できるのだろう

まあ、本能みたいなものだから完全に克服することは無理だけど、専門分野だけでもダニング・クルーガー効果の「継続の大地」を目指すしかなさそうだ

継続の大地に達すれば、様々な認知バイアスを念頭に、日々生活することになるからね

その際、障害になるのが、今回紹介する最後の認知バイアス「認知不協和」である

認知的不協和の恐ろしさは、無意識のうちに情報を解釈し直してしまうことだ

例えば次のとおり

  • 自分の過ちや失敗を認めることより、他人の行動や意見の些細な間違いの方が大きな問題だと思い込む

  • 自分の意見とは矛盾する情報に対して歪んだ解釈をし、逆に自分の意見を後押しする情報だと思い込む

  • 自分のアイデンティティや自己イメージに合わない情報を悪しき情報であると解釈し、怒りや不安などの感情を持つ

ここから脱する方法をまとめてみた

認知バイアスの克服方法

ここまでの考察を基にすると、認知バイアスの克服方法は次のとおりだと考える

もちろん簡単にできることじゃないけど、参考にしてもらえたら幸いだね

  • 未来志向:ビジョンを持ち、変化し続けることを自分に課す

  • 無知の知:自分の専門分野を自覚し、それ以外のことは「自分は何も分かっていない」と思うようにする

  • 専門分野の探求:認知バイアスの影響をできるだけ減らすため、専門分野に関しては最新の情報を身に付けるようにする

  • ゼロベースの対話:自分自身の感情がどうあれ、その感情をいったん手放し、相手を受け入れる

  • メタ認知:自分の考えが「偏見かも知れない」と感じたら、「その偏見がどこかに飛んでいく」ようなイメージでもして偏見を手放す

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