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053 鎌倉幕府を「組織のライフサイクルモデル」の視点で見る

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は、群像劇ということもあり、組織開発を仕事にしている私にとっては参考になった

さて、どういう風に参考になったのか?

それをnoteにしてみた

群像劇とは
主人公にスポットを当て、それを取り巻く人々という見方で脇役を描くスタイルの劇ではなく、登場人物一人一人にスポットを当てて集団が巻き起こすドラマを描くスタイルの劇のこと

webLio辞書

0→起業家段階(頼朝挙兵前後)

鎌倉政権は「頼朝の目的」と「坂東武者の思惑」が合致したことが発端だと思う

「生き残りのための選択」とは言え、平家の宿敵「頼朝」というブランドを頭に添えたことで、坂東武者の存在意義が一気に高まった

そして組織は急拡大した

現代の組織で言えば、勢いあるベンチャーみたいな感じかな

組織のライフサイクル仮説

起業家段階→共同体段階(打倒平家時代)

とりあえず組織化の始まった鎌倉集団

戦になれば兵士の数は何千・何万と集まったと言われているけど、会社で言うところの社員みたいな者は何十人もいなかったんじゃないかな

例えれば、大型の工事現場にたくさんの業者や人工が集まるけど、元請け企業の社員は数名しかいないのと同じだと思う

その程度の規模の時は、各々の創造性発揮が成果につながり、メンバー任せでも組織はなんとか回る

それが起業家段階の特徴だ

でも、平家との戦に勝つに従いだんだん人数も増えると、メンバー任せではうまく回らなくなる

創造性発揮と自分勝手な行動の区別ができなくなり、明確な方針で組織を統制しなければ組織はバラバラになってしまう

だんだんトップダウンの統制が強化され、共同体段階へと移行が始まった

共同体段階のジレンマ(頼朝・義時の専制時代)

ところで、なぜ共同体段階の組織(100人以上と言われている)は、明確な方針がなければバラバラになるのだろう?

想像してみれば分かると思うけど、組織の規模が大きくなると、トップの目が細部まで届かなくなる

そしてこの穴埋めとして実力者に裁断を仰ぐ者が集まるようになる

これがお山の大将を沢山生み出すことにつながり、だんだんと組織にほころびが生まれるんだよね

もちろん現代の組織なら、ルールや仕組みを整える、役割分担と権限委譲を行うなど、公式化段階への移行で組織内の混乱を防ぐだろう

でもこの時代、そんな民主的な運営はまだ無理だった

仮にそんなことをしたらいつ寝首を掻かれるか分からないしね

とにかく謀反の芽を摘み取ることで現状を保つしかなかった

要するにずっと共同体段階に留まるしかなかったのである

これが頼朝が征夷大将軍になってから、北条義時の専制が終了するまでの30年間だったと考える

共同体段階→公式化段階(政子の演説)

共同体段階のまま肥大化した鎌倉政権だったけど、謀反の芽をいくら摘んでも安定することはなかった

モグラたたき状態ってやつだ

後鳥羽上皇が承久の乱を起こしたのも、おそらく鎌倉政権が内部崩壊寸前と見込んだからじゃないかな

そんな時に政子は御家人に向けて演説をする

これが共同体段階から公式化段階への移行のきっかけになったと思う

政子の演説の効果
①武家政治を実現するというミッションを呼び戻した
②武士の生きざま(バリュー)を呼び戻した
③政子が立ったことで執権の地位が専制からひとつの役割へと下がった
④ラスボスとの戦との意味付けになり、御家人の貢献意欲を呼び覚ました

筆者作成

公式化段階(北条泰時時代)

政子の演説により、鎌倉政権はようやく公式化段階へと移る兆しがみえる

そんな矢先に義時と政子が相次いで亡くなり泰時の時代になり、泰時の時代になって明確に公式化段階に入ったと考えられる

おそらく泰時は、義時を反面教師としたのだろう

義時時代の専制政治から、集団指導制、合議政治などの仕組みによる政治へと変えていった

御成敗式目の制定のその一つだと思う

精巧化段階(江戸時代)

泰時時代になって、いったん公式化段階に移行した鎌倉政権だけど、それで安定したかと言ったら、そうでもない

その後何度か公式化段階の課題である官僚化が頭をもたげると、再び組織内闘争が始まり再び粛清をした

それでも粛清ができるうちはマシで、だんだん自浄作用が働かず、官僚化がどんどん進んでいったようだ

それが原因で滅亡したんだろうね

このパターンは、次の室町政権も同様であり、日本の中世権力はしばらく共同体段階と公式化段階を行ったり来たりしていたと思う

精巧化段階に至るのは江戸幕府になってからかな

各藩へ地域別の権限委譲、老中や奉行へ機能別の権限委譲など、分権化を進め、ときどき「改革」という名の活性化策を行った

こうやって見えれば、徳川幕府って意外と進んでいたんだね

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