064 役割を知れば未来が変わる
改めて「役割」なんて言うと堅苦しく感じる
拒絶感すら覚える人すらいるかも知れないね
でも、思い切って役割を背負ってみれば、だんだん拒絶感は減るものだ
さらに役割を担うことで成長実感が得られれば、すすんで「役割」を負いたいとすら思うようになる
今回はそんな人の成長と役割意識の関係を紐解く
役割意識と発達段階の関係
実は、役割意識は人の発達と関係している
役割意識とは一般的に、自分の価値観や信念を持ち、社会や組織の一員として自立した生活を営むことや、法律やルールの意義を理解し主体的に果たそうとすることを言う
こう書くと、役割というものがどれだけ窮屈なのか改めて知らされる
自分のことより組織や社会のために生きよ、ってことだからね
役割を押し付けられて嫌な思いをした人が「役割なんて勘弁してくれ」って思うのも分かる
分かるけど、成長のためには役割は必要不可欠なんだよね
とりあえず下の図を見てもらいたい
各発達段階を簡単に説明する(キーガンの理論を筆者風に要約)
自己中心段階:役割意識が無く、生まれ持った気質(自分らしさ)が露骨に出ているワガママな段階
他者依存段階:相手の立場で物事を考えられるようになりワガママを抑えるようなるが、役割意識はほとんど無く、いわゆる「まじめ」な段階
自己主導段階:役割を持つことで自分の意見や価値観が確立されるが、封じ込めていた自分らしさが頭をもたげ出し、他人の意見より自分が正しいと思い込みがちな段階
自己変容段階:役割と自分らしさの相互作用を楽しみ、今の価値観に縛られることなく環境変化にあわせて柔軟に自分を変えられる。ただし、前段階の人から見て何を考えているのか分からず突飛・変わり者に見える段階
自分らしいと言えば、生まれ持った資質が露骨に現れている幼児期こそもっとも自分らしい状態と言える
組織や社会のルールや価値観の洗礼を受ける前だからね
でも、そのままじゃ親や教師から怒られるし、友人からもソッポ向かれるから、仕方なしにその自分らしさを封じ込めようとする(全員ではない。成人になっても自己中心段階の者は10%程いる※キーガンの調査)
その結果、多くの者は思春期辺りに他者依存段階に入る
他者依存段階とは、自分らしさも役割意識も少ない段階、ぶっちゃけ「波風を立てない人」である
キーガンによると成人の7割はこの段階だというから、ちょっと驚いた
ちなみに、発達度は高ければ高いほど良いわけじゃない
例えば、欲しいものが目の前に落ちていたとして、躊躇なくそれを取りに行けるのは自己中心段階の者である
粗野な未成年者がいとも簡単に金儲けできてしまうのはそういうことだ
もしかしたら、この段階の人が一番商売向きかも知れないね
同様に、他者依存段階にもメリットがある
自分らしさを封じ込めるという多大なストレスは難点だけと、それさえうまく発散できれば、悪くない生き方かも知れない
終身雇用の時代にもっとも適した生き方だったと言えそうだ
このように大人になってからの発達段階は、優劣の基準ではなく、生き方なのだと思ったら良い
ほとんどの人は無自覚だけど、どの段階の人も自らすすんでその段階にいるんだよね
ちなみに自由と責任という視点から発達段階を見た場合、下の表のとおりまとめることができる
なお、発達段階について一つ注意点がある
発達度は積み重ねになっており、例えば、他者依存段階の人でも、自己中心段階の記憶が残っており、状況に応じてどちらも使えることだ
だから、自分より低い発達度の人の気持ちは分かるけど、高い発達度の気持ちは未知のため理解が難しいと言われている
どうやったら発達度を高められるのか?
発達段階は自ら好んでその段階にいる面もあるのだから、無理に脱する必要もない
とは言うものの、全体の7割を占める他者依存段階の人が、みんながみんなその段階に留まっていたいわけでもないだろう
もし、他者依存段階から脱し自己主導段階に移りたいのであれば「チャレンジ」「自責」「自分軸」「試行錯誤学習」を心掛ければ良い
チャレンジ:昔から「役職は人を育てる」と言われているけど、まさにそのとおりで、自ら何らかの役割に飛び込むことで他者依存段階から脱却ができる
自責:せっかく役割を負っても、何かあるたびに人のせいにしていたら自己主導にはならない。すべて自分の責任ととらえることで批判的内省が進み、自分の理念・価値観・目標が磨かれる
自分軸:理念・価値観・目標は無自覚だと意味がない。自覚してこそ、それを基に試行錯誤学習ができるようになる
試行錯誤学習:自己主導段階に片足でも入った時、この試行錯誤学習が始まる。その名のとおり試行錯誤体験しながら自分を磨くことが、人としての成長になる
さらに自己主導段階から自己変容段階に入るには次のことをしたら良い
様々な知識を持つ:自己変容段階は様々な視点・観点からものごとを見る人なので、例えば、心理学・脳科学・哲学・文学・経済学など、広範な知識(形式知)が求められる
様々な体験をする:自己変容段階の人は本で学べるような知識だけじゃなく、多様な体験知(暗黙知)も豊富に持っている
様々な対話をする:上記形式知・暗黙知に磨きを掛けるための対話を様々な分野の人たちと行う
仮説と検証を繰り返す:磨きのかかった知識を基に仮説を立て、検証する生活を送る。そうやって環境変化に適応する
ビーイング(在り方)を確立する:上記の行動により在りたい姿がはっきりしてきたら、それを言語化し宣言し体現し続ける
自己変容段階に至るには、「知的好奇心(経験の開放性)」と「共感力」が高くないと難しいと思う
じゃないと「様々な知識」「様々な体験」「様々な対話」「仮説と検証の生活」「ミッション・ビジョン・バリューの言語化」が進まないからだ
ちなみに共感力は歳とともに鍛えられるので本人の努力次第だけど、知的好奇心に関しては20歳で固まってしまうと言うから、そこがネックである
その意味から自己変容段階に至るには、誰でも彼でもというわけにはいかない
でも、ここまで読んでくれた人は知的好奇心の高い人たちだろうから、きっと自己変容段階になれると思う