006 新人育成の基本は「仕事言葉」を覚えてもらうこと
ビジネスの世界では、使う言葉、行動、すべてに意味がある。
そのことをいち早く理解できた者は、仕事の持つ本質的な意味をどんどんつなぎ合わせながら何かを創造していく。
それを理解できない人は引退するまでずっと「形式知だけの世界」で「仕事のフリ」をすることになる。
言葉を覚えられない新人は辞める
新人にとって最もつらいことって「言葉が分からないこと」かな。
たぶん皆さんだってそうだったんじゃない?
新人時代、言葉が分からなかった時の心細さってなかったよね。
1日が長くてさあ。
そこで「まず言葉を覚えよう!」と決意するんだけど、これが意外と難しい。
用語集みたいなものを見ながら覚えようとするけど、なかなか頭に入らない。
そんな人でも先輩たちに揉まれているうち、いつの間にか言葉を覚えていた。
そしていつの間にかその会社に溶け込んでいた。
でも、それが難しい人もいる。
言葉が分からないからコミュニティに入れない。
コミュニティに入れないから言葉を覚えられない。
この負の連鎖にハマってしまう人だ。
私も記憶があるけど、言葉が分からない時のストレスは相当なもの。
入社から1年経たずに辞めてしまう人の多くは、このストレスに耐えられなかった人だと思っている。
仕事言葉の覚え方は英語学習と同じ
さて、うまく「言葉を覚えるループ」に入るにはどうしたらいいのか?
けっきょく仕事言葉の覚え方は英語学習と一緒。
たとえ言葉はたどたどしくても、勇気を振り絞ってコミュニティに飛び込む。
そこで何とかコミュニケーションし続ける。
これしか上達の道はない。
そのチャレンジを後押しするのが上司や先輩の役目だと思っている。
やるべきことは、次の通り。
普段よく使う仕事言葉の意味をしっかりレクチャーする
仕事のコミュニティに放り込む
最初の何週間は毎日でも振り返りの時間(1on1)を取る
学生言葉と仕事言葉の違い
さて、「普段よく使う仕事言葉の意味をしっかりレクチャーする」と言っても、何をどうレクチャーしたらいいのか迷うと思う。
これは業種ごとに違うので、細かく伝えることはできないけれど、大まかな考え方だけ伝えたい。
実は学生言葉と仕事言葉では大きな違いがある。
学生言葉は、言葉の意味も単純で、辞書のまま覚えれば済んだ。
ところが仕事言葉の場合は辞書に書いてあることを丸暗記してもまるで役にたたない。
例えば「挨拶」ひとつ取っても、関係構築、信頼構築、きっかけづくりなど様々な意味合いがある。
要するに、ひとつひとつの言葉に、辞書には書かれていない「時間的、空間的な広がりある意味」が含まれている。
時間的含みのある言葉を覚える
さて、新人はとりあえず「時間的含みのある言葉」を理解する必要がある。
「時間的含みのある言葉」とは、「〇〇の次に✕✕をする」「最終的には△△にする」という行程の含みがある言葉だ。
多くの新人は、上司から「これやっといて」と言われても、この含みを感じ取っていない。
「これ」という「点の作業」をやれば良いと思い込んでいる。
ところが会社には、経済的、社会的な目的があり、「これさえやっていれば給料がもらえる」なんて作業などない。
あるとしても、最低賃金以上のものにはならないだろう。
「これ」の次には「あれ」があり、そして最終的には「儲け」や「社会的意義」などがある。
この含みを理解することが、仕事言葉をマスターする第一歩である。
空間的含みのある言葉を覚える
新人は「時間的含みのある言葉」と同時に「空間的含みのある言葉」も覚えなきゃならない。
「空間的含みのある言葉」とは、組織行動に関わる言葉だと思ってもらいたい。
たとえば経営理念である。
もし、新人研修で「当社の経営理念」と教えられたとする。
多くの新人は、単に「きれいごと」「能書き」を教え込まされたとしか思わないだろう。
学生時代の丸暗記学習そのままに「点」として覚えるとそうなる。
これはこれで新人のうちは仕方ないと思うけど、3年経ってもそのままだとちょっと問題がある。
経営理念とは社員全員が共有する「経営の方向性」。
ひとりひとりが、現場において自分の判断で物事を進めるために経営理念があるとも言える。
まあ実際、仕事のできる人ほど会社の経営理念もしっかり理解しているよね。
逆に、いつまで経っても指示待ちな人は、たいがい経営理念にまったく無頓着である。
なぜそうなるかって、経営理念の持つ空間的含みを理解していないからだ。
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