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078 なぜコミュニケーションしない組織があるのか? どうやったらコミュニケーション文化はつくれるのか?


養老孟司によると、学習と行動はほぼ同義だそうだ

自ら行動することで五感体験し、それを再現しようと再び同じ行動をする

これは人に限らず犬や猫もやっている生命現象である

例えば、赤ん坊がハイハイするのは自らの視覚・聴覚・嗅覚・触覚を楽しむため

ハイハイすることで目に映る風景が変化し、音が変わり、手触りも変わる

それが楽しいから色んな場所で試そうとし、徐々に進化し、やがてつかまり立ちになり、歩き出す

これが学習の原理である

学習の原理は実体験にとどまらず、疑似体験にもおよぶ

誰かがやっていることを見たり聞いたりするのも学習になる

その代表者は「言葉」だ

言葉の取得過程
生後2~4ヶ月頃:喃語(「ばばば」など)
10ヶ月~1歳半ごろ:一語文(「バイバイ」など)
1歳6ヶ月〜2歳頃:二語文
2歳〜2歳6ヶ月頃頃:三語文
2歳6ヶ月〜3歳頃:模倣
3歳〜4歳頃:複文
4歳〜5歳頃:コミュニケーション
5歳〜6歳頃:物語

筆者

言葉の取得は「試す」がポイントである

使い慣れない言葉を発し、相手の反応や変化を楽しむ

それを繰り返しながら人は言葉を覚えていく

ポイントは「試す」だ

これは言葉の取得に限らず、全ての学習の基本である

コミュニケーションは体験知である

さて、なぜコミュニケーションする人とそうでない人がいるのか?

今日の文脈で言えば「学習の原理」が関係している

皆さんも覚えがあるんじゃない?

子どもの頃、引っ込み思案だったのに、大人になったら別人のようにコミュニケーションできるようになった人

生まれつきの資質で決まるのなら、引っ込み思案の人は一生引っ込み思案のはずだけど、必ずしもそうじゃない

コミュニケーションを自由に試せる環境にいれば、誰でもコミュニケーションできるようになる、ってことだろう

学習の原理を踏まえればそうなる

じゃあ、コミュニケーションを自由に試せる環境とはどんな環境なのか?

お笑い芸人のようなしゃべり上手が多い環境?

それとも他人の話をしっかり聞いてくれる環境?

実はどちらでもない

コミュニケーションにおいて「喋りが上手い」や「しっかり聞く」もあまり重要じゃない

意外かも知れないけれど、一番大切なことは「反応」なんだよね

カウンセリングやコーチングを習ったことある人なら分かると思うけど、対人関係の基本は「相槌・うなずき・伝え返し」

つまり、相手の語りに対して適切な「反応」することが大事

情景を思い浮かべてもらいたい

こちらが反応しなきゃ相手はしゃべる気にならないし、反応しなきゃしゃべり続けてくれない

当たり前の話じゃないかな

それは逆もしかり

相手が反応してくれるから、こちらも安心してしゃべることができる

これがコミュニケーションの基本

それを意識して守っている組織にいれば、誰でもコミュニケーションできるようになる

なぜコミュニケーションしない組織があるのか?

コミュニケーションできるかどうかは、適切な「反応」する風土があるかどうかである

と簡単に言ってしまったけど、「反応したくない」って気分の人にとっては高いハードルである

反応するには、ある程度共感や納得がなきゃならないからだ

・自分たちが何のためにこの組織にいるのか
・一人一人何に貢献しているのか
・これをやることでどんな未来が実現するのか

これら「共通目的」が無い組織では、上司の命令は意味のない押し付けにしか感じられない

また、同僚同士も共通目的がなければ、とくにコミュニケーションする理由がない

これがコミュニケーションの無い組織の事情だろう

って言うと「じゃあ、すぐに共通目的を持とう!」と言いだす経営者がいるけど、それは短絡的

なぜなら共通目的自体コミュニケーションの産物だからね

社長ひとりが作った目的は「共通目的」とは言わない

まあ、「訓示」を文章化しただけ、ってとこかな

それじゃあ誰もついてこないよね

じゃあどうしたらいいのか?

推奨するやり方は次のとおり

  1. まずトップが「共通目的を創りたい」と宣言する

  2. トップと幹部の話し合いに「反応」を取り入れる

  3. 幹部と社員の話し合いに「反応」を取り入れる

  4. 社員同士が「反応」し合える場を設ける

このようにコミュニケーションしながら、だんだんメンバーの目的意識を高めていく

早ければ半年、長ければ数年かかるけど、次第に共通目的が出来上がり、いつの間にかコミュニケーション文化もできていると思う

コミュニケーションとメンバーの質の関係

あまり言う人はいないけど、実はコミュニケーションの無い組織は「メンバーの質」に偏りがあることが多い

メンバーの質と言っても、頭がいいとか悪いととかそういう話じゃなくて、成人発達理論で言うところの「環境順応型」の者ばかりだとコミュニケーションは少なくなりやすい

成人発達理論の図(キーガンの仮説を基に筆者作成)

「環境順応型」の人は、目的志向が薄く、あえてコミュニケーションしない傾向がある

だからと言って彼らはコミュニケーションが嫌いなわけじゃない

例えば小学生時代を思い出してもらいたい

同じ学年(発達度)同士だったら屈託なくコミュニケーションできていたはずだ

内向・外向に関わらず、みんなそうだったんじゃない?

でも、そこに大人が混ざったらどうなった?

子どもの目線まで降りてくれる大人は別として、普通はトーンダウンすると思う

自分の拙さが見透かされているようで、くだらない会話がしづらくなる感じだったかな

これと同じことが会社組織の中でも起こっている

例えば「環境順応型」ばかりの中に、1人「自己主導型」が混ざったらどうなるか?

コミュニケーションの仕組みが無い限り、「環境順応型」の人はしゃべらなくなるだろう

どうやったらコミュニケーションある職場を作れるのか?

さて、ここまでいろいろとコミュニケーションについて書いてきた

次の4点がコミュニケーション文化づくりのポイントである

  1. 「反応」のやり方をトレーニングする

  2. 発達度の高い者ほど「反応」を心がける

  3. 共通目的(ミッション・ビジョン・方針など)づくりに社員を巻き込む

  4. コミュニケーション文化が出来上がるまで1年以上かかることを、最初から覚悟する

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