011 人格とは何か?人格を成長させる方法はあるのか?
クロニンジャーの「パーソナリティ理論」によると、人格(パーソナリティ)は生まれつきの「気質」をベースに形作られる
「気質」は、生まれつきの脳内物質(ドーパミン・セロトニン・ノルアドレナリン)量のバランスで決まる
これをベースに、体格、服装、職業、経歴、特技、欠点、口癖など、キャラクターが上書きされて人の人格(パーソナリティ)になる
なお、キャラクターと言うと架空の人物を演じるイメージがあるけど、ここでは後天的に身についた性格のことにしておく
気質、キャラクター、パーソナリティの関係は下の図のとおり
よく「三つ子の魂百まで」と言われる
歳とともに表面的なキャラクターが濃くなり、生まれながらの気質は見えづらくなるけど、それでも本性は隠しきれないということだ
とは言われているものの、人格の変化はキャラクターの上書きだけかと言ったら、そうでもなくて気質も変化するらしい
例えば、歳とともに脳内のドーパミン分泌量が減少し「落ち着き」が現れるなどだ
年齢による気質の変化だけではない
クロニンジャーは、体験や学習により「自己志向性」「協調性」「自己超越性」が高まるとしている
自己志向性は、成熟とともに自己決定や意思の強さが増すこと
協調性は、成熟とともに他者の受け入れ能力が増すこと
自己超越性は、成熟とともに世の中の複雑な因果関係を俯瞰できること
このように人は成熟していく
環境が変われば行動も変わる
レヴィンという学者は、「同じ人物でも環境が変われば行動が変わる、同じ環境でも人物が変われば行動が変わる」と言っている
確かに、環境さえ変えてしまえば、否が応でも行動は変わる
行動が変われば、傍から見たら人格も変わったように見えるだろう
例えば、アメリカで単身生活したら、嫌でも英語を覚えるだろうし、生活全般アメリカナイズされるはず
それに伴い、人格変化もするだろう
そこまでいかなくても、多少の人格変化なら、進学や就職などに伴い、誰でも大なり小なりあったはずだ
人格の変化に必要な要素
クロニンジャーは人格は生涯を通じて少しづつしか変わらないと説いた
レヴィンは、人格は環境次第で変わると説いた
このことからクロニンジャーは長期説、レヴィンは中期説を主張していると言える
でも、我々はときどき短期間での人格変化に出くわすことがある
例えば、今までダラダラしていた若者が突然大人びたり、急にしっかり者になるなどだ
これら急激な性格変化はどうして起こるのか?
特別な体験があったのは分かる
でも、同じ体験をしても変化する人もいれば、変化しない人もいる
その違いはどこにあるのだろう?
ホールというキャリア学者がによると、人格変化のためには「変化したい」という動機(適応モチベーション)と、実際に変化させていく能力(適応コンピテンス)が必要だそうだ
式にすれば、アダプタビリティ(適応)=適応モチベーション✕適応コンピテンス、である
適応モチベーションは変化への動機
適応コンピタンスは変化する能力
上記の式が「掛け算」であることに注意してもらいたい
もともと適応力の高い者は、適応したいという気持ちの強さにより、かけ算的に性格変化を起こせることになる
人格はどうやったら変化できるのか?
さて、動機(適応モチベーション)と能力(適応コンピテンス)の高め方を説明する
まず適応モチベーションの高め方だけど、これは様々な学者が解き明かしているとおり、人生目的が重要な位置を占めている
例えば、オリンピック選手
彼らはオリンピックという人生目的を持つことで、モチベーションを高めている
次に適応コンピテンスだけど、ホールによると次の3つが必要だそうだ
1.反応学習(試行錯誤のこと)
外部環境からのサインを読み取り、それに反応したり、逆に環境に影響を及ぼす行動のことを言う
2.アイデンティティの探索(自己探求のこと)
アイデンティティの維持や修正を行うために、自分に関するできるだけ確かな情報を得ようと試みることを言う
3.統合力(上記の2つをバランスよく実行する能力のこと)
自分自身の成長を目的に、試行錯誤と自己探求をタイムリーかつ的確に行う能力である
私の結論
ここまでクロニンジャー、レヴィン、ホールの説を見てきたけど、私の結論は次の通り
人格は、先天的性格+後天的性格
先天的性格は老化と共に変わる
後天的性格は、体験+人生目的+試行錯誤+自己探求+これらを統合する力、で変わる