午後の月 こたつの中

 ほんの少し肌寒い風に肩をすくませる。午前中の、日を背後に歩いた時には汗をかいたというのに、午後になると木々に日が遮られ、すっと空気が冷たくなっている。
 寒暖差にか、花粉にか、すこしむずむずとする鼻を抑えながら空を仰ぎ見る。そこには昼の月。銀色の、満月になろうとしている半月があった。
 夜に見るのとは随分と雰囲気が違う。夜に見る月の、こちらを照らす月の冷たい、だけど優しさを持った暖色は、日中に見ると随分と冷たさだけをこちらに露わにする。

 なんとなしに思うのは、月を抱えて、こたつにいれてやりたい。

 こたつの中で、じわじわと暖めて、あの冷たさを、寂しさをなくしてやりたい。手をかざすだけでは足りない。抱きしめても足りない。こたつのなかで、離れないように、くっついて。
 そうしたら月も暖かくなってくれるだろうか。

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