シフォンなケーキ
シフォンケーキを初めて食べたときのことを覚えているだろうか。
あのふんわりとしたスポンジの柔らかなケーキ。
卵白をふんだんに(大体6個くらい)使った天才的なケーキ。
私には特に好きなシフォンケーキがある。
子供の頃、母がよく仕事帰りに買ってきてくれていた「紅茶のシフォンケーキ」。
それはふわっふわなのに、どこかしっとりしていて、まさにひんやりサラサラとした手触りのシフォン生地のようだった。
私は数年ぶりにそのシフォンケーキにありついた。
一口食べた瞬間に「あぁ、これこれ」と思い出す。
ふわふわとしたスポンジはもちろん、一番上の少しだけねっとりしていて味の濃い部分はもっとスペシャル。
おこげの端のカリカリみたいなもの。
メロンの一番上みたいなもの。
ちょっとしかないけれど、特別おいしい部分。
ワンホール買ったのに、鼻に広がる紅茶の香りやしゅわんと口の中で消えていく感覚を楽しんでいたら、あっという間に半分なくなった。
やっぱり私は、これが好きなんだ。
ホールから手掴みでまた一口分をちぎる。
「プツプツプツ」と小さな泡が消えるような音を立てながら切れていくスポンジ。
小気味いい、しあわせの音。
なんだって好きなものがあるのは、こんなにしあわせ。