映画『正体』を鑑賞して思ったこと。
はじめて記事的なものを書きはじめ、緊張しております。
それはさておき、本日2024/12/01、映画の日。
日曜でしたがお安く鑑賞できると言うことで、観て参りました。
横浜流星さん主演、『正体』。
亀梨和也さんが主役でドラマも作成され、筆者はそちらも視聴済み。
端的に最初、言ってしまうと、どちらも引き込まれる作品でした。
(同じ内容ですが別の作品と捉えてこういう言い方しています)
ネタバレは嫌だよ、と思う方もいらっしゃると思うので、私が個人的に要所要所かいつまんで、ネタバレにならない程度で感想を書きたいと思っています。
まずPG12作品ですが、そこまで残虐的なシーンなく、出血シーンこそあれど大きく身構える必要はないと思います。とは言えこれは、どうしても個人の感じ方によります。その点はご了承下さい。
では内容に入りますと、冤罪をテーマにした作品で、決してライトな内容ではありません。重いテーマです。
東村山一家殺人事件の犯人に仕立て上げられた青年、横浜流星演じる鏑木慶一は、自分の無実を証明すべく脱走し、その最中様々な人と出会います。救い救われ、彼と関わった人は彼の本質を見抜き、「鏑木は犯人ではない」と確信し信じます。
この映画の中でもう一つ重要なテーマが、「信じることの大切さ」だと思っています。
現代日本に置いて、今タイムリーなテーマだと思います。
SNSで選挙がおかしなことになっています。顔も本名も分からない人の言うことを信じ、または数多いと言うだけの意見に、思考する間もなく引っ張られる。
今回鏑木と密に親交を持った3人は、彼を信じる上では少数派です。けれど、彼と実際に関わり、自分の目で見た鏑木慶一を信じます。
長いものに巻かれるのに抗うことは、結構大変です。
だからこそこの3人の「抗い」は光ったし、物語を動かした。もちろんそれは、鏑木の優しく誠実な人間性があってこそなのですが。
あまり詳しく内容を書きませんが、鏑木の逃走にはもちろん目的があります。自分の無罪を証明してくれるかも知れない人物に、会いに行くためです。殺人された一家の中、唯一生き残った初老の女性です。(恐らく夫婦どちらかの母親)
彼女は事件のショックで混乱し、その状態で鏑木を犯人と証言してしまいます。
そして正しい証言を得られるか得られないかーーと言う緊迫状態で、警察に突入され……といった展開で一気にラストに向かいます。
鏑木の無実は証明されたのか?
これは是非劇場で観て頂けたらと思います。
ただ、一つ言えるのは、希望のある映画だったということです。
私が今回藤井監督を賞賛したいのは、重いテーマを救いあるラストで締めくくった点。
最近、とも分からないですが、社会問題や弱い立場の方を描く映画はたくさんあり、ラストがそのまま真っ暗で終わるものも少なくないです。それもきっと正しいのでしょう。問題提起し、思考を促し、観た人なりの答えを出させる。あまりに残酷な事実や描写は、無関心を大きく揺さぶります。
けれど、何事にも導入が必要です。
社会問題や、まあとにかく何か難しい分野に目を向けようとするとき、悪とは何か、正義とは何か……それがはっきり提示され、救いとは何なのかが分かりやすいことも、芸術には必要ピースだと筆者は思っています。
なので今回、深刻なテーマにも関わらず、やや爽やかさが残ったのは、藤井監督や演者の力量だったと思います。
演者と言えば横浜さん。
少しだけ話を逸らさせてください。
あるネットニュースで、「役者は秘密めいているべき、作品に影響しないようにするため」、と言う旨の発言をされていて、私的には非常に感銘を受けたというか、有り難かったんですよね。常々思うんですが、作品やそのキャラクターに魅了されても、役者の私生活が見えると何か冷めてしまう……。(そういう部分が見られて嬉しい場合もある、勝手ですが)
だけどあれ? 番宣でにのさんとか出てる。やっぱり仕方ないの? とか思って少しモヤモヤしたのですが、その番宣番組での彼の笑顔が、絶妙に作り物っぽかった。
寧ろ映画の中の横浜さんの方が本当に見えて、本来の姿に見えて、不思議な感覚だったけど、きっとそうなんだろうなって。
横浜さんはきっと嘘は言ってなくて、ひたすら素晴らしい「正体」と言う名の演技を見せてくださった。私なりの解釈です。お疲れ様でした。感謝です。
長くなってきたので、最後に。
松重豊さん珍しく悪役で出演されていましたが、悪役だとなぜか目立たず、やっぱり松重さんは明るくて優しくてほっこりした役が似合うな、などと勝手に思いました。おわり。
※2時間と少しの映画とドラマでは、各エピソードの濃密さに多少差が出ます。それでも、それぞれの良さが出ていたのではないかと感じています。