【辰】龍尽くしカレンダー12月・龍の国ニッポン
今日から12月、今年も残すところ1カ月です。
私事ながら個展もラスト2日となりました。
おかげさまで想像していました以上に、
楽しく充実した時間を過ごしております(*’∀’)!
そして、
本日はいつもどおり、龍を語ります。
3000字、どうぞゆるゆるお付き合いください。
これまでの龍はこちらよりご覧いただけます
12月のテーマ「龍の国ニッポン」
日本を囲む龍。
チャームポイントは両の目玉が太陽と月!
日月眼と言われるものですね(*’∀’)
この日本を囲む龍、
「日本地図」として描かれたものが下敷きとなっています。
その名も『大日本国地震之図』。
寛永元年五月吉日の記載ある、1624年版行の日本地図です。
もう名前を見ただけで私が震えます(’∀’)!
そしてその図像のもつ浪漫の威力たるや!
元の図はこちらより▽▽
初めてこの図を見た時、撃ち抜かれました。
ウロボロス的円環、そしてこの地図というワクワクドキドキのデザイン。
これこそ龍カレンダーを締めくくるにふさわしい図像であると確信し、
ご登場いただきました次第です。
日本という国を描き表す時、なぜ龍がそのまわりを囲むのか。
今月も浪漫の香りがふんぷんです(*’∀’)!
『龍の棲む日本』
末尾でも紹介していますが、今回の参考文献はこちら。
黒田日出男『龍の棲む日本』㈱岩波書店、2003年。
こちらの本で先の『大日本国地震之図』に出会いました。
書かれている内容をうまく呑み込めていないところもありますので、
ご興味のある方はぜひ原著をお読みください。
以下、私なりの解釈を交えて国土と龍の関係性をお話します。
日本の形が龍に似ている、ということも勿論ありますが、今回はオイトイテ。
「意味合い」の方にしぼってお話して参ります。
畏敬のシンボル・龍
龍がなぜ国土とつながるのか。
その鍵は「畏敬=龍」にあると思います。
例えば1月のカレンダーでご紹介しました弥生時代。
龍は自然という「コントロールのできない大きな力」の具体化でもありました。
それは1つの自然崇拝にもなっていきます。
また、3月紹介のムシュフシュでは
文明が生まれ、その仕組みの中で必要とされた「神話を成立させる装置」としての役割も持っていました。
それらは中国に代表されるように権力のシンボルとして確立され、
暦や墳墓のデザインとして活用されていきます。
それと並行して説話・宗教美術とも縁の深いものとなっていきます。
自然・政治・信仰・宗教・権力、
これらの中で龍がもつ意味合いは「おそれ」と「うやまい」。
恵みでもあり頑然と立ちはだかる威力でもあるものとして
龍は「畏敬」のシンボルでありました。
そしてその「権力」の中には「国土防衛」、あるいは「国外侵略」というエネルギーも含まれています。
国土を維持する力、国土を拡げる力。
平安時代の入寇、鎌倉時代の元寇では龍神が悪風・神風によって「日本」を守護し
神功皇后の三韓征伐では「導き手」となって龍が描かれます。
権力=国土の構図の中で、「龍が囲む日本地図」という図像はできあがっていきました。
龍穴と地中の世界
もう1つ、国土と龍を結び付けるものは「龍穴」です。
どうもたくさんあるみたいですね。
龍の棲む洞穴。
私は出不精と怖がりで実際に訪れたことはありませんが、
日本三大龍穴など画像で見ますと、ふむ、なにか、いそう(’∀’)
いわゆるパワースポットでもあり、なにかスゴイみたいです。
が、もっとスゴイのは、
全国無数にあるこの洞穴が地中で繋がっていて
龍がその中を行き来しているという思想(’∀’)!
『渓嵐拾葉集』では弁財天が龍蛇となって吉野の天川・安芸の厳島・近江の竹生島を行き来し、
熱田神宮の御伽草子『熱田の神秘』では富士・琵琶湖・伊勢神宮・神泉苑・諏訪湖・浅間山、はては天竺に至る広大な道として記載されているようです。
日本全国、ノンストップで蠢きながら地を這う龍(’∀’)!
ドキドキがとまりません。
地中の世界
畏敬の象徴が足元に潜んでいるなんて、本当おっかなびっくり生活しそうなものです。
観念的にもドキドキするのですが、
現実問題として、このおっかなびっくりの足元への意識。
私も身に覚えがあります。
そう、地震です。
地が震えるあのどうしようもない感じ。
それが畏敬のシンボルであり、
地中世界の主である龍の実存イメージを高めたのは、想像にかたくありません。
翻って件の図は『大日本国地震之図』。
カレンダーの図は背ビレに〇をたくさん打ちましたが、
元の図では1月~12月、の12枚の背びれ。
それぞれの月に起こるであろう出来事、ずばり地震が占われています。
「ゆるげどもよもや抜けじの要石 鹿島の神のあらん限りは」という呪い歌を添え、
ただの日本地図ではなく、地震占いの図、として発行されたものなんですね(’∀’)
昔から地震は日本に棲む人々の関心事。
そのメカニズムの分析を試みたのは当然のこと。
また、その地震を起こすのが人外のものであるならば、
そこにどんなメッセージが込められているのかを解き明かすことは、非常に重要なことでした。
そうして描かれた1年間の占い図に
国土を囲む龍が描かれたことは、まさにうってつけのデザインであると思います。
山に湖に海に池に滝に、龍の気配を感じ
なおかつその足元に龍の棲む地中世界を見る。
それを感じながら日々暮らす人々。
自然・政治・信仰・宗教・権力、という大きな仕組みの反映として
その姿を国土・地図にも刻む龍の
何より人々の心に棲みついたその深さ。
そしてそれに惹かれてやまず、ついつい考えてしまうこの根深さ。
見渡せばあちらこちらに蠢く龍。
ゆるぎようのないほど刻み込まれているその深さに、
ドキドキが止まりません。
1年間お付き合い下さいまして、ありがとうございます。
先日、空を見上げていたら
すーっと横長の雲がダンダンダンと遠く向こうまで連なっており
あー、龍のおなかってこんな大きさなのかなぁと感じ入ってしまいました。
今月のこの龍の地中世界を思うと
側溝の穴の暗がりすら「なにか底知れぬな…」とおののいてしまいました。
「見上げても見下ろしても龍」(自由律俳句風)
まさか毎月龍を語る年が訪れようとは夢にも思いませんでした。
当初は我ながら「なんて酔狂な!(そして暇な)」と、不安を感じたものですが意外や意外、
この龍語りのおかげでいただいたご縁がたくさんありました。
noteでお知合いになれた方はもちろん、
龍の絵を依頼された方に資料とウンチクを提供できたり、
その依頼主さまとお話する機会もありましたり。
面白いなぁと思っているのは
誰一人「龍を知らない」人はいない、というところ。
誰も見たことのないはずのものなのに
「龍ってなんですか」は誰も言わないところ。
そこに私がこの霊獣を愛するいわれもあるのだろうなぁと感じています。
偏った熱量で長々と書いた文章。
それを読んでくださった方・コメントくださった方あってこそ、
どんどんヒートアップできたと感じております。
結果、楽しい取り組みになりました。
また後日、すこしあとじめの記事を投稿します。
今年も残り1か月。
辰の最後のしっぽの先まで、どうぞ皆さま楽しく過ごされますように。
龍カレンダー12月の参考
・大日本国地震之図(個人蔵)
参考文献
・黒田日出男.龍の棲む日本.㈱岩波書店.2003年
・杉浦康平.かたち誕生―図像のコスモロジー.日本放送出版協会,1997年