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霧深し小径の先に待つ人よ

皆さまごきげんよう。
本日は七十二候「蒙霧升降(ふかききりまとう)」ということで、少しばかり涼し気な文字の踊る時候となってまいりましたわね。
お盆休みも過ぎまして、明日から日常へ戻られる方も多いのではないかと存じますけれども、せめて暦通りに少しでも気温が下がると良いですわよね。

「霧」と申しましても今年はまだ記憶に無いのですけれども、数年前に朝玄関を出たら凄い霧だったことがありましたわ。
街中が白い靄に包まれておりまして、日常の場所ごと異なる世界に来てしまったようで、若干の怖さを覚えながら學校に向かった記憶がありますわ。

そんな体験がありますから、「霧」というのは秋の季語なのですけれども、わたくしにとりましては季節関係なく、どこか不気味な世界のような印象がありますわ。
いつも見ている景色が違って見えるというのは本能的に恐怖を呼び起こすのかもしれませんわね――。

ちなみに「霧(きり)」は秋の季語ですけれども、これが春になりますと「霞(かすみ)」になりますわね。現象としては同じものですけれども、春のほうがどこか牧歌的で柔らかい印象があるような気がいたしますわ。

「霧」はその中に少しの哀愁が付加されているように存じます――。

霧深し小径の先に待つ人よ
夕霧に夕餉の香も混ざりけり
烏には見えるものあり霧襖
白線のなき四辻かな霧の街
朝霧や行先のなき市電過ぐ


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芙蓉セツ子
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