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創作

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#ショートショート

白い悪魔(ショートショート)

私の頭にはいま中身がない。まさに空っぽだ。ぼうっとして思考が働かない。胃の中に穴が空いて食べたものがみんなそこからさらさらと流れ出してしまうかのように、受け取った情報が吸収されない。覚えようとしてもたちどころに消えて行ってしまうのだから。いつからこうなってしまったのだろう。そう思うと何だか肝が冷えるかのような心地になる。まるで自分の芯というものが凍り付いてしまったことに気付いた気になるのだ。私は結局何がいけなかったのかを知りたくなくて、最初からその中には何もなかったのだと自分

ようやく出会えたあなたは(小説)#夏の香りに思いを馳せて

出会いは図書館の自習室への階段だった。受験勉強の帰りに毎回何かしらの本を借りていたのがみおりで、そのみおりを目で追っていたのが図書館で土日だけバイトをしている大学生のせなだった。 みおりはどうやら恋愛小説が好きらしく、作家の中でも恋愛ものを選んで借りていく。それはカウンター業務をしていればおのずとわかってくることだった。そしてせなは今日も目の前のみおりに無愛想に対応してしまう自分自身に嫌気がさしていた。 この図書館はカウンター業務があるものの、基本的には接客業とは違うため

微睡みの中で君に預けた時間(小説)/ひと色展

その水滴はただそこにありました。太陽の雫、七色の宿る場所。そんな風に呼ばれながらも微睡んでいました。それは他の誰かからすればひたすらに意味のない時間、一方でとても透明感のある時間でした。 いつか戻ってくるのではと、希望を抱いていたのです。 ほんわかとした春の陽気の中で芽吹いていく双葉を見ながら考えました。こんな風になりたい。うまく心を開けなかった自分を悔やんでいました。 本当は言いたいことがたくさんありました。それなのに全部見ないふりをしてしまいました。どう受け取ったら