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創作

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#忘れられない恋物語

想いは溶けない/#炭酸刺繍

あの日泡に溶けて消えた観覧車 君が呟いた見えないことば ふわり浮いたからだ今も忘れずに やわらかくも強い力振り切って ありもしない嘘をついて逃げてきた 私のことは忘れて欲しいなんてね 何も言わず消えてしまえば良かった 私のせいで見えなくなった二人の未来 君はあの子の愛した人で友達 あの日飲んだ最後のメロンソーダ あの氷がゆっくり動いた音を 最後の合図として風に飛ばすよ ひとつ残る夢のかけら胸に詰め そして心にしまって生きる かつて泡に溶けて消えた観覧車 君のくれた

星を背負った猫(詩)

君が好きな歌の話を聞いた その夜は忘れられなくなった 一番輝く星が欲しかった きらきらといつまでも瞬いて 遠くに流れて行くのを見た 君が悲しい歌の話をした その夜は苦しくなった 切なく痛む胸を押さえた ぐらぐらとめまいが始まって 何かが軋む音が聞こえた 届かない想いでいいと思っていた 今までずっとそうやってやってきた 君が連絡をくれるたびに 孤独がすうっと消えていくんだ 心の乾きが満たされて 涙になって流れていくんだ こんな気持ちになったことがないと 君に告げたらなんて

色づいていく想いと朝焼けと(詩)

特別なんだって言ってみた 君はなんて反応するかな、なんて こっそり思っている深夜2時 不思議な夢を見たんだよ 広い道路二つに分かれてさ、 片方明るい道に繋がってて 君を選んだ、そのことで突然に 未来が開けたような気がしたんだよ 行き先決めた、そのことで偶然に 扉が開けたんだと気付いたんだよ いつだったかな、君に話した古い恋 あの人に言いたかった優しい言葉 取っておくのやめて新しいの作るよ これからはずっとみんな君のために この想いが届くように おはようよねちゃんさん

密やかな恋、第二章(詩)

ぱっと見れば答えがわかる 自分の才能に酔いしれて 得意げだった少年時代 今じゃもう見る影もなく 凡庸で愚直な一般市民 足をひきずって家を出る 満員電車に揺られながら 思い出すのは君の言葉 意味深な単語の羅列に 何かを見たような気がして 頭の隅で転がしていく 鈍った頭を呪いながら だけど気づいたよ、君の寂しさの理由 そうなるともう後戻りはできないと 階段を駆け上がって息せき切って ぱっと見れば答えがわかる かつての才能を呪うけど 今見てみれば立派な武器だ 君の孤独を

貸し出し中?いえいえ、予約中です。(小説)

中学の卒業式の日。進学をきっかけに好きな人と離れることになり、私は告白をしようとした。けど待ち伏せた場所に彼は来なかった。公園でベンチに座って俯いていると、ランドセルを背負った男の子が目の前に立った。 「みーちゃん大丈夫?お兄ちゃんが何かした?」 「ゆうくん」 思わず私は苦笑する。 「かなとに会えなかった」 「うちに来ればいいじゃん」 「それじゃ意味がないっていうか」 「何それ」 ゆうくんはかなとの弟だ。そして私がかなとのことを好きだということをいち早く見抜いた。バレ

春めいていく想いが溢れたら(詩)

冬色の風と君の冷たい言葉 どこか似ているなって思った その裏側に別の顔があって すぐに違う心境になること 春一番に吹き飛ばされた秘密 遠く運ばれて行ってしまった 暖かくなった外の様子の代わり どれも君の心境あてはまらない ひとつひとつ 数え上げて 拾い集めて また探して 壊してしまった 心の窓を 繋ぎ合わせて それを返して 君が怖がらなければ全部言ってしまいたかった いつだって爆弾のような想いを持て余してる 君が望むならばすぐに会いに行きたかった 今だって発散されない行

それだけの恋、幸せの裏側(詩)

「どうしたらいいかわかんないくらい嬉しい」 って君が言うからそっと肩を抱いて 「何してもいいよ、好きなようにして欲しい」 ってできる限りの余裕醸し出して そんな瞬間をまた夢に見たよ もう何度目だって自分に呆れるけど 君も同じように感じてくれる? ティーカップの柄をその手になじませて 今日も台所 立ってくれる その後ろ姿を横目で確認して きっと同じように感じてるかな 背伸びをしてから出かける用意をする 思えばここにくるまではお互い傷つけあって疑って 誤解したり嫉妬させたり

シャンパンくらいじゃ大して酔えないけど(小説)

今回は昨年の冬に開催された伝説の企画、「才の祭」にて小説部門に選んで頂いた作品「『もう好きじゃないよ』ってどういう意味?」のアフターとして書いた話です。 本当は昨年のクリスマスに投稿出来たら…と思っていたのですが、いろいろあって頓挫していました。 今年は何度か話題にして頂いたこともあり、思い切って公開しようと加筆修正してみました。少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 あの決死の告白をした日の翌朝。 「なあ、クリスマスどうする?」 「え?」 振り返った彼女は満面の笑みだ

ラストノート(詩)

いつでもあの音を聴いている 終わりがいつでも忍び寄ってくる 暗闇とともに訪れる感情 呼び起されるそれは三日月 君と同時に消え去っていく夢 すれ違いはそうだね、二か月前 初めて二人きりで出かけた日だった 距離が近くなるはずの日に 君は不満だったのか嫌味を言った ただそれだけ 終わらなかったやり取り 途切れ途切れ 初めて二人気持ち通じた日だった 今日を忘れてる この一年 君は機嫌よかったのか友達とランチ ただそれだけ 聞きたくない名前聞かされて 我慢しているのはお互い様 気

「夜の雫」+「夜に残る」(連作詩)

以前掲載した詩と関連しているので二つとも載せます。今回の「夜の雫」は編集前のオリジナル版です。新しく出す作品は下の「夜に残る」の方です。ちなみに「夜の雫」は女性視点で、「夜に残る」は男性視点となっています。よろしくお願いします。 編集版はこちらです。 「夜の雫」夕日が差し込む教室 またあなたはうつむくの 私の発した何のとりとめもない言葉から 驚くほど鮮やかな色を見せたりするの 青空を背景に快活に笑う君が好きだったと どうしてもう過去形の告白をしたりするの 私が見ていた景

移り変わっていく季節の中でその名前を呼べたのなら(小説)

何でも君のいうことを一つだけ叶えてあげるよ、 ある日気まぐれな彼はそう言った。 唐突なお願い事をするときには彼は大抵私を見ていない。窓の外で降り積もる落ち葉を見ながら、歌でも歌うように彼は呟いた。今は秋の終わり。それに呼応するかのように、付き合い始めてしばらく優しかった彼がなんとなく冷たくなってきたような気がしていた頃のことだった。 「この前のデートをドタキャンしたことへの償いのつもり?」 自然と語尾が強くなる。私は爪の先にきれいにトップコートを塗れてちょうど満足したと

ようやく出会えたあなたは(小説)#夏の香りに思いを馳せて

出会いは図書館の自習室への階段だった。受験勉強の帰りに毎回何かしらの本を借りていたのがみおりで、そのみおりを目で追っていたのが図書館で土日だけバイトをしている大学生のせなだった。 みおりはどうやら恋愛小説が好きらしく、作家の中でも恋愛ものを選んで借りていく。それはカウンター業務をしていればおのずとわかってくることだった。そしてせなは今日も目の前のみおりに無愛想に対応してしまう自分自身に嫌気がさしていた。 この図書館はカウンター業務があるものの、基本的には接客業とは違うため

青いヒミツの色(詩)/ひと色展

夜空の星を愛するように君のことを思おうか みんなの心を惹きつけて なお残っているきらめきを ときめきってなんだっけ 忘れていく感覚の中 ぼんやりと思い出した あの日の君の横顔の影 安心ってなんだっけ 流れていく景色の中 じんわりと湧き出した あの日の君の俯いた顏 全てを集めるように手を伸ばした 暗闇を照らすような色広がった それは永遠に残る あの感覚 夜空の星を愛するように君の心を思い出すよ 何にも変わってないだろうか 投げかける切なさを 幸せってなんだっけ 思い出せ