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創作

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2022年7月の記事一覧

夜の雫(詩)

夕日が差し込む教室 またあなたはうつむくの 私の発した何のとりとめもない言葉から 驚くほど鮮やかな色を見せたりするの 青空を背景に快活に笑う君が好きだったと どうしてもう過去形の告白をしたりするの 私が見ていた景色が間違いだというように 重なる視線 今日も結局そらされる真実 ペットボトルのミネラルウォーター 全部飲み下してもう帰ろうと言うの そんなあなたの聡明な眼差しなら 私が持っている邪な思いなんて きっと見透かされているんだろうと 掠れた声でバッグを肩にかけて 下

ようやく出会えたあなたは(小説)#夏の香りに思いを馳せて

出会いは図書館の自習室への階段だった。受験勉強の帰りに毎回何かしらの本を借りていたのがみおりで、そのみおりを目で追っていたのが図書館で土日だけバイトをしている大学生のせなだった。 みおりはどうやら恋愛小説が好きらしく、作家の中でも恋愛ものを選んで借りていく。それはカウンター業務をしていればおのずとわかってくることだった。そしてせなは今日も目の前のみおりに無愛想に対応してしまう自分自身に嫌気がさしていた。 この図書館はカウンター業務があるものの、基本的には接客業とは違うため