「あつめて、まとめて、綴じる一冊」で選んだ紙を紹介する 紙博 in 東京 vol.8 JAM レトロ印刷・SURIMACCA
2024年3月15日(金)~ 2024年3月17日(日)に浅草で開催された紙博東京2024で「あつめて、まとめて、綴じる一冊」というワークショップに参加しました。
「あつめて、まとめて、綴じる一冊」というワークショップは孔版印刷に特化した大阪の印刷会社であるJAMによる企画です。
JAMは版ズレ・かすれ・色ムラなどを活かしたレトロ印刷の楽しさを発信したり、シルクスクリーンを自宅で手軽に楽しめるキット「SURIMACCA」の開発をしたりと「『遊ぶ』って、おもしろい。」をコンセプトに幅広い活動をしています。
「あつめて、まとめて、綴じる一冊」では厚紙製の表紙に挟めるだけ紙を挟み自分だけの一冊を作ることができました。表紙の厚さは約2.5cmです。 紙の大きさはハガキサイズ(10cm×14.8cm)でした。
こちらのワークショップはカスタマイズ性がとても高かったです。
表紙だけでも種類が多くシルクスクリーンで絵柄が印刷がされている表紙やゴムバンド付きの表紙などがあり、好きなものを選べました。
参加費の他にオプション料金は必要となりますがその場で無線綴じのメモノートにできたり紙製のお道具箱に詰められたりと自分の好きを詰め込むことができます。
今回は「あつめて、まとめて、綴じる一冊」で選んだ紙をご紹介します。
今回用意した見本の紙には染料インク・顔料インク・古典インクを入れた万年筆で試し書きをしています。
染料インクは平山萬年堂限定インクの御衣黄桜、顔料インクは銀座蔦屋書店オリジナルインクの鳳凰、古典インクはプラチナ万年筆のクラシックインクマイカラーで自作した狐色です。
万年筆は全てプラチナ万年筆のプレジールを使用しました。
スマートパピエ ベリーミックス
スマートパピエは一度役目を果たした「素材」を紙の原料として再利用したエコロジーペーパーです。
「ベリーミックス」にはサプリメントを製造する際に生じるブルーベリーの搾りかすが紙の原料として配合されています。
ブースの方とお話しした際には「セサミックス」というゴマ製品を製造する際に生じる「ゴマの表皮」が配合された紙だと伺っていました。
しかしスマートパピエの公式サイトの紙の色合いが「ベリーミックス」のように見えたため「ベリーミックス」として紹介しています。
間違えていたら申し訳ありません。
青みのある灰色の紙です。
書き心地はザラザラとしています。ギッチリと押し固められた紙のようです。ガリっとすることがあるため不快に感じる人もいるかもしれません。インクは少しにじみます。裏にもうっすら抜けました。
全体的に文字が滲むのではなく部分的に字幅が太くなるため筆跡が面白いです。 味のある文字に仕上がりました。
スマートパピエ パームヤシックス
こちらも一度役目を果たした「素材」を紙の原料として再利用したエコロジーペーパーであるスマートパピエです。
「パームヤシックス」にはパーム油を製造する際に生じるヤシカサが紙の原料として配合されています。
細長い繊維が見える薄い茶色の紙です。
書き心地は意外と滑らかでした。スルスルと書くことができます。古典インクだと少しひっかかりを感じましたが染料インクや顔料インクだと快適に書けました。
こちらの紙はなぜか筆記音が大きいです。カリカリと大きな音が鳴るので図書館などで使用するのは避けた方がいいかもしれません。
スマートパピエ カカオミックス
こちらもエコロジーペーパーであるスマートパピエです。
「カカオミックス」にはチョコレートを製造する際に生じるカカオ豆の皮(カカオハスク)が原料として配合されています。
黒っぽい粒々が混じったオレンジみのある明るい茶色の紙です。
書いた感触はサラサラとザラザラの中間でした。時折ゴリッとした手応えがあります。
書き心地がいいような少し不快なような何とも言えない感じです。自分の中で結論を出そうとこの紙にたくさん書いている内に独特の感触が癖になってしまいました。
「書き心地がいい!」と多くの人にオススメできる感じではないのですがハマった紙です。
スマートパピエ ベニックス
こちらもエコロジーペーパーであるスマートパピエです。
「ベニックス」には食用色素を製造する際に生じる紅花の花びらが原料として配合されています。
赤い斑点やオレンジ色の細長い繊維が見えるピンク色の紙です。
スルリと快適にペン先が滑るのですが手応えがゴリゴリしています。ペン先が滑り過ぎてコントロールし辛いことがあるほどですが独特の書き応えがありました。
不思議な感触です。
この紙も使えば使うほど癖になるタイプの質感だと思います。ハマる人にはハマるはずです。
スマートパピエ ササックスグリーン
こちらもエコロジーペーパーであるスマートパピエです。
「ササックスグリーン」には医薬品を製造する際に生じる「笹の葉繊維」が原料として配合されています。
かすかに緑の粒が見える淡いくすみグリーンの紙です。
かなりガリガリとした書き心地をしています。顔料インクだと程よいザリッと感でしたが染料インクと古典インクではかなり書き辛いと感じました。
粘度の高いインクを合わせると書きやすいのかもしれません。
PELP! 100g/㎡
「PELP!」はオフィスや企業で不要になったコピー用紙を使用して100%古紙再生で作られた環境用紙です。
表面が平滑で裏面が少しゴワゴワとした紙質をしています。両面に書くことができるようですが裏面は書き辛そうだったため表面のみ使用しました。
黒っぽい粒々が混ざった淡い灰色の紙です。
ガリガリとした書き心地でした。指でなぞるとスベスベしているので予想外の書き味です。
今回選んだ紙の中で最も字幅が細くなりました。古典インクに至っては字が少しかすれています。
使うインクを選ばないと使いこなせない紙だと感じました。
おりひめ 85 g/㎡
「おりひめ」は広島平和記念公園の折り鶴を使用した折り鶴再生紙です。
折り紙特有の色味をあえて残すことで偶然の生み出す美しい色合いを持つ紙に仕上げられています。
赤や青などカラフルな斑点が散りばめられた白い紙です。
書き心地はザリザリとしていました。どの色のインクにも合わせやすそうなのでこちらの紙でお手紙を書くと可愛らしく仕上がる気がします。
ただ顔料インクだと裏抜けしてしまったので使うインクには注意が必要だと感じました。
スクレ 102.7 g/㎡
「スクレ」は軽くて柔らかい書籍用紙です。
製本の本文用紙や読み物などテキストの多い印刷に適しています。
ほんのわずかに黄みを感じる白い紙です。
ザラザラとゴリゴリの中間のような書き心地でした。かなり手応えが強いです。今回選んだ紙の中では一番書き応えがありました。
インクの乗りはとてもいいと思います。どのインクで書いた文字もにじまずパキッと美しい発色です。
じゃこ 116.3 g/㎡
「じゃこ」は表が白く裏が灰色の紙です。
JAMの公式サイトで販売されている、表が白く裏が灰色のボール紙「しらす」の兄弟分として作られた数量限定の紙だそうです。
両面ともに筆記可能でしたが今回は灰色の面に書いてみました。
裏面は少し黄みのある灰色です。
ゴリゴリとした書き心地でした。手応えは強めだと思います。
染料インクだと文字がややかすれてしまいました。顔料インクや古典インクだと問題ありません。
こちらも使うインクを選ぶ紙のようです。
まとめ
私は「パームヤシックス」と「カカオミックス」が気に入りました。
「カカオミックス」は癖が強すぎるため多くの方にオススメはできません。ぬるぬる書ける紙よりもザラザラとした適度な手応えのある紙が好みの方には適していると思います。私は時折感じるゴリッとした手応えにハマりました。
「パームヤシックス」は滑らかで書き心地がいいので多くの方にオススメできます。見た目は紙質が粗そうですが実際にはサラサラと書ける紙です。環境に配慮しながら書き心地もよい紙なのでぜひ積極的に使っていきたいと思っています。
かなり長くなりましたが最後まで読んでくださりありがとうございました。