無題


タバコの煙が好きだ。別に、タバコ自体うまいとは思わない。ニコチンは体に悪いだの、依存性があるだの、義務教育で耳にタコができるほど聞いてきた。でも、22歳の今、私はタバコを吸っている。10年前の私が聞いたら怒るだろうか。学校で得た知識を駆使して、辞めさせようとするだろうか。でも、体に悪いから、吸っているのだ。これは、緩やかな自殺だ。

湿気たタバコに火をつける。1日に何本も吸うわけではないから、カバンの中でぐちゃぐちゃになって入っている。ジッポに憧れたこともあるが、どうせすぐ無くすから、コンビニで1番安く売られてるライターを使う。安いから、すぐ無くすのかもしれない。一口吸って、まずいな、と思う。こんなまずいものを吸いたくてたまらなくなる気持ちがしれない。わざわざ600円も払って買うやつの気もしれない。辞めようと思えばいつだって辞められる。辞める気もないが。ゆっくり肺に溜めて、ゆっくり吐き出す。風のない宙に、ゆらゆらと煙が揺れる。踊るように、曇天に溶けていく。煙を見るのが好きだ。どこまでも行くようで、気がついたら見えなくなってしまう。何にも縛られず、自由の象徴のように感じた。けれど、少し風が吹くだけで進路を変え、私のため息で力無くなびくところを見て、自由とは真反対の存在のようにも思える。

息を吐く。煙を吐く。煙を見ているのか、煙の先の何かを見ているのかは、私にも分からない。

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