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掌編小説 |みよちゃんとサクマ式ドロップス
お兄ちゃんは団地のリーダー。友達も多い。
まだ小学校に行ってないみよちゃんは、いつもお兄ちゃんにくっついて遊んでいた。
野球の練習をしてるお兄ちゃんは特にカッコイイ。大好きなドロップを口に含みベンチから眺めていた。斜めがけにかけているポシェットはお母さんお手製のドロップ缶が入るピッタリサイズ。
秋も深まり夕暮れ時はあっという間にやってくる。
同じ団地の蓮くんが「日が沈む前に帰らんとオカンに怒られる」と、今日はこれまで。もう少し見ていたい みよちゃんはガッカリ。
「喉かわいたな、お腹も空いた…」
「みよ、ドロップみんなにくれへんか」「ええよ」
軽いカンカンを上下に振ると音が跳ね返る。
「4つあるかな……。手を出して」
お兄ちゃんが一人づつ手のひらに置いていく。何の味がでるか、それもドロップ缶の楽しみのひとつだ。
1個目は白 。2つ目 白。3つ目4つ目も白、白。
「なんや、ハッカばっかりやないか」
みよちゃんは ハッカが苦手。出てくる度に缶へ戻し を繰り返していた。ペロリと苦笑い。仕方なしに 皆と一緒にハッカを食べた。
「ハッカは大人になった感じするやろ」お兄ちゃんは頭を撫でてくれた。
オレンジ色の空の下 土手沿いを並んで歩く
「ほんまや、背が伸びてる!少し大人になったみたい。お兄ちゃんもほっそりや」
みよちゃんは笑みを浮かべ伸びた影を指した。
「みよは お兄ちゃんとドロップが大好き お兄ちゃんもみよのこと好き?」
「男は簡単に好きとか言わんのや」
そういって 指ハートをして見せた。
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~ おわり~
◈最後まで見て下さりありがとうございました◈
〈追記〉
赤い缶のサクマ式ドロップスの製造元が2023年1月に廃業になるらしいとニュースで見ました。私はフルーツ味もですが ハッカが好きでいくつ入っているのか一旦全部出してみたことがあります。その時は2つぐらいかな、少ない(笑) 缶から何が出てくるのかわからない そんなハッカは当たり玉のようなものでした。